世に「私」を主語にして生きていける人が何人いるか?

 まずレビューに相応しくないかも知れませんが、私は物語に入れ込み巣が手、主人公のことを「彼」とか「こいつ」とか、二人称でしか呼べなくなりました。

 それだけ、強烈に生き方をしている主人公だと思います。

 彼は、本当に自分自身が原因で、何もかもが起きている事を理解して生きています。私も含めろ、多くの人が、いや、大抵の人が何かの原因を語る際、主語を曖昧に、あるいは複数にして語ってしまう中、彼は徹頭徹尾、「私」を主語にして話せる人です。

 強さを感じます。狂気や凶暴さ、また幼稚さを含んでいようと、彼の心根には強いものが住んでいます。

 彼の孤独は、それら彼自身の責任で起こっていきます。碁会での事、彼女を始めとする人付き合いにせよ。

 それだけ主人公への内面が描かれているが故に、終盤、希望半分、成り行き半分で入った塗装会社での社長との出会い、終盤、社長に誘われて出場した囲碁の大会で描かれる展開が、読者にとっても救いになると思います。

 少なくとも、私は救われました。