第6話
「んー幸せ!」
「そう、良かったね……」
正直僕は胸やけがしそうだった。
なぜなら、「ヤケ食いしてやる!」と高らかに宣言したストロベリーがバナナチョコパフェにチーズケーキ、苺とラズベリーのタルトを目の前で一気食いしたからだ。
しかも、夕食でいっぱいになった筈の胃袋で「別腹よ!」なんて言いながら全て平らげ切り、今はロリポップキャンディーを舐めている。
正直、恐ろしい光景だった。
僕の食が細いのか、それとも姉さんの胃袋が特別なのか僕にはわからないが、とりあえず、食べてもないのに胃が苦しい。
「ねえ、レイヴン。開会式が明日だってのは分かったけど実際に戦うのはいつなの?」
「開会式終了後に先ず、第一予選。ここで、半分がふるいに掛けられるらしいよ」
「ふぅーん、予選とか有るんだ」
「ジャック曰く、予想以上に人数が集まったらしい」
「ジャック?」
「情報屋のジャックだよ」
「あぁ、あの女たらしね。テレビ中継でも見てるの?」
「いや、現地で情報収集しているみたいだよ」
僕はスマホのメッセージアプリの画面をスクロールしながら時々返事を打ち込む。
ジャックが言うにはソロの参加者だけでなく僕達みたいにペアを組んで参戦した者も多いらしい。
騎士団はどうしてる?と僕が質問を打ち込むと、すぐさまポーンと返事が返って来る。
どうやら、彼らは団長以外ペアで参戦しているらしい。
ローゼンはソロか、この事はストロベリーには黙って置こう。
先ずは、ソロ参加者同士の予選が有りその次に、ペアの参加者同士の予選が有る。
会場も開会式も別々だがどっちも国王が観戦に来るらしい。
全く、権力の豚が、暢気なものだ。
僕達は命を懸ける戦いになるかもしれないのに。
試合のルールは基本的にこうだ。
先ず、コイントスをして勝った方が勝負の内容を決める。
勝ち抜けした方が次の試合に挑めるが、敗者はその場で脱落だ。
僕達は一戦も負けることが出来ない。
なぜなら、予選試合は敗者復活戦が無いのだから。
「どうしたのレイヴン?」
「いや、サロメの二の舞にならないと良いなって思っただけ」
「さろめ?あぁ、王様の娯楽になって欲しい物を手に入れたはいいけど死んじゃうって事ね」
「そういう事。それ舐め終わったら先にお風呂入って」
「はーい」
僕は、ボスの預けていた鞄から一丁の銃と一双のガントレットを取り出した。
銃はモーゼルC96M712カービンカスタム、一見デザートイーグルの様にも見えるがトリガーの前に着脱式の20発弾倉が付いている所がモーゼルであることを物語っている。
銘はバスカヴィル
そして、ガントレットは右手には長い鉤爪が、右手には短いが毒をセットできるギミック付きの鋭い爪がついている。
銘はエルム&ヴェノム
どちらも、ボスが抗争が起きた時のために分散して保管しておいた武器だ。
質屋はご丁寧に弾丸と毒のカプセルもセットで取って置いてくれた。
念のため二つの武器をチェックするがやはりあの質屋は腕がいい。
どちらも丁寧に手入れされていた。
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