第4話

「全く、僕が言った事覚えてなかったの!?」

「だって……」

あれから少しして目的の駅に着いて直ぐ、僕はストロベリーの手を引いて改札を抜け、人けのない路地に隠れた。

ストロベリーはふくれっ面で僕が言うであろう言葉に拗ねていた。


「ストロベリー。仮にも僕たちは逃亡中の指名手配犯なんだよ、あまり目立つ行動をとらないでよ。第一君は何でそんなに短気なんだ、少しは堪えることが出来ないのかい?」

「だって、アイツら私を侮辱したのよ!下賤な半グレ風情に、私は侮辱されたのよ!」

「だからって、あんなに暴れる事は無かったんじゃないのかい?」

「でも、私、すごく嫌だった。可愛いって褒めてもらった格好をあんな風に言われるなんて……」

「ストロベリー」

「何よ、理解できないって言いたいの?」

「ううん、薔薇の花はどんなに貶されたとしても、美しく咲き誇っている限り美しい。って言いたいんだよ」

「レイヴン……」

「さ、早く行こう。警察なんかに見つかったら僕たちの賭けや掛けてきた歳月は無駄になる」

「うん、そうね!」


やっと笑顔になった姉弟に「可愛いよ」と言うと、頬を染めてなぜか照れ臭そうにしてた。

さてと、早く中央の役所に行かないと。

タイムリミットは今日の午後五時、時間に余裕はあるけど僕たちには時間よりも危険なものが迫っているかもしれない。

早めに手続きを済ませないと……。


そのまま、出来るだけ人気のない道を選んで僕たちは中央の役所に向かった。

役所の前には係員が居て拡声器片手に人々を誘導している。

「わぁ!こんなにたくさん参加者が居るのね」

「あぁ、人の欲には際限がないし、何でもいいから勝ち進みさえすれば良いって規則だからね」

「殺してはいけないのかしら?」

「さぁ?その辺も受付で聞けば教えてもらえるんじゃないかな?」

すると、人混みが急にざわめき始めた。


「見ろよアレ、王立騎士団だぜ」

「マジかよ、って事は王の親衛隊も居るのか?」

僕達の低い背では人混みの奥の王立騎士団とやらは見えないが高く掲げられた剣と獅子の紋章に僕は見覚えがあった。


3年前、組織の中枢であるファミリーのパーティー会場に警官隊が突入してきたときに、王立騎士団も何名か警察の手助けに駆り出されていたからだ。

彼らは王直属の剣であり盾だ。その強さは僕も苦い程に知っている。

チラリと隣を見るとストロベリーがギュッと手を握りしめ怒りに震えていた。

「ストロベリー、早く行こう」

「……そうね」

彼らの中にボスに武器を向け縄に着かせたであろう奴らが居ると思うと僕も静かに復讐心が湧いた。

だが、今はその時じゃない。

僕は自分の平静を保つためにストロベリーの手を取り先に進んだ。


受付は比較的簡単だった。偽造屋に頼んでおいた僕達の身分証明書を提示し書類に同意しサインをするだけだった。

エントリーを済ませた僕たちは、その場を立ち去ろうとしたが、隣にいたはずのストロベリーが居なかった。

「姉さん?」

と、辺りを見回した時だった。


いきなり鋭い金属同士がぶつかり合う耳障りな音が辺りに響いた。

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