第7話

ストロベリーがあんなに不満を露にするなんて、このブレスレット何かありそうだな。

僕はジャックに暗号化したメールでこのブレスレットの解析を依頼した。

OKの返事が返って来ると僕はスマホをベッドにポイと投げて、次回の試合の日程と内容を確認した。


「サーチ&ハント?」

次回の試合のお知らせにはそう、競技が記されていた。

・一人ずつランダムの場所に案内されて試合開始の合図が鳴ったら自分のペアを探しに行く。

・ペア同士でブレスレットを認証させてそこから他の参加者のハントが始まる。

・単独でのハントに挑んでもいいが一時間以内に自分のペアを見つけないと失格となる。

「ふーん」

成程、一人で他の参加者を潰しても良いけどそれは最初の一時間だけ。

後はペアを組んだ者同士のバトルになるって事かな。

まぁ、大抵最初になるべく早くに自分のペアを探しに行くよな。

何てったって、一人より二人の方が有利だ。


「何を読んでるの?」

お風呂上がりのストロベリーがフワフワの寝間着で僕の読んでいた次回試合のお知らせを横から覗き込んだ。

「サーチ&ハント、開催時間は夜で朝までの持久戦、ねぇ……。夜更かしはお肌に悪いから嫌いなんだけど」

ストロベリーは不満げに唇を尖らせるとベッドにダイブした。

「そんな事言って、月光浴好きなくせに」

と僕が口を零すと

「それとこれは別よ。私は闇夜に浮かぶ満月の死と狂乱の光を浴びるのが好きなの」

と、僕にはよくわからない返事が帰って来た。

「じゃあ、丁度いいじゃないか」

「何がよ」

「次の試合の開催日は満月の晩だよ。ま、暗殺者にとってはやりにくい環境ともいえるけどね」

「そうね、フィールドが分からないっていうのもやり辛いわね」

「確かに」


そうだな、確かに下手に迷路みたいなところにランダムに連れて行かれたら分が悪い。

どうしたものかと考えていると、ストロベリーが「また、難しいこと考えてるでしょ?」と言ってきた。

「考えたくもなるよ。少しでも勝率を上げるにはある程度思考しておくことも必要さ」

「でも、勝負は一回。ぶっつけ本番よ?余計な考え方が足枷になる可能性もあるわ」

「その根拠は?」

「バーゲンセール戦争」

「ふっ、あははっ!」

僕がこらえきれずに笑うと、ストロベリーはふくれっ面でこっちを睨んできた。

「あぁ、ごめんごめん。確かに、バーゲンセールの時は欲しい物の計画も吹き飛んじゃうよね」

「でしょ?」

ストロベリーがケタケタと笑うと僕は、やっと心の底からつかの間の安堵を得た。

取り合えず、一次予選は通過したし今のところ僕の考えは順調に進んでいる。


二次予選が終われば、本戦だ。

勝って兜の緒を締めよと先人は言うが、僕らとしては常に張り詰めていては絹糸みたいに消耗して切れてしまうと思っている。

「もう寝ましょう?」

「そうだね」

そうして、僕らはセミダブルのベッドに一緒になって横になった。

別にベッドが一つしかない訳では無いが、何となく二人一緒に眠りたいのだ。

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