第6話

「ヴィクシー!ガブル君とアイゼン君は?」

「そんな団員、もう存在しませんよ。そこに居るのは只の負け犬です」

「わお!なんだ、負けたのかー!!」


制服の少年はオーバーに驚いた風にリアクションするとポケットからガムを取り出し、つまらなそうに噛み始めた。

「ジェノバ、まだおやつの時間ではありませんよ」

「知ってるー!」

「やれやれ」

そんなやり取りをしている騎士団員二人にストロベリーはにこやかに話しかけた。


「ねぇ、レディーの前で自己紹介もせずに話をするのやめて下さるかしら?不愉快なの」

「おや、これは失礼。ボクはヴィクシー・タンロット。王立騎士団の副団長です。そして、彼は、王立騎士団参謀のジェノバ・ユーリエフ」

「ジェノで良いよー!君すっごく可愛いねー!僕様ちゃん達が優勝したら愛人になってよ!」

そう言ってストロベリーに触れようとするジェノバの手を叩き落とすと僕達とあまり歳の変わらなそうな少年は頬を膨れさせて「ひっどいなー!もう!」と僕に向かって露骨に殺気を向ける。

「うふふ、ごめんなさいね。弟は心配性なの」

「姉さん。こんな、脳みそ炭酸に関わらない方が良いよ。汚れるから」

「あー、ひっどいなー!!ルシフェロってこんな無礼な奴だらけなのー?痛っ!何するんだよー、ヴィクシー!?」

「あまり喋らないで下さい。それから殺気は仕舞って置くように。行きますよ」

「はーい!じゃーねー!リトルレディー・ロリィタちゃん!」

そう言って二人の騎士は人込みの中へと去っていった。


やがて、担架が運ばれてくると地面に転がっていた元騎士たちも回収されていった。

「予選通過者達よ!よくぞ勝ち残った!二次予選は後日となる、それまで英気を養うといい!」

国王の声が響くと、ワァワァと歓声が響く。


そして、係員がやってきて僕達に軽く一礼をするとブレスレットを二つと次回の試合についての紙を渡してくれた。

「ブレスレットを嵌め終わったら、あちらの出口よりお部屋にお戻りください。それと、このブレスレットは入浴の際以外は外さず必ず身に着けていてください」

僕達はカチャンとブレスレットを付けると部屋へと戻った。


「むぅー」

「どうしたのストロベリー?あのジェノバとかいう奴でも気に障ったの?」

「んー、それも有るのだけれども、このブレスレット気に入らないのよね」

確かにこの武骨で機械的なアクセサリーはどこか枷の様であまり好きにはなれそうに無かった。

「ホント、このブレスレット、全然可愛くないわ!これじゃ、可愛いお洋服にミスマッチだわ!」

それを聞いて僕は椅子からずり落ちそうになった。


「気にするところはそこなの!?」

「当たり前よ、私は常に可愛く居たいの!!」

そう言って、ストロベリーは枕をボフボフと叩きながら不満を丸出しに拗ね始めた。

「仕方ないよ、そういう規定なんだから」

「あら、レイヴン。忘れたの?私たちはアウトローよ」

「外したいならお風呂の横の解除機でどうぞ。ただし、半日以上外しっぱなしだったらその時点でリタイア扱いだよ」

「あーもう!ムカつくわ!お風呂入ってくる!!」

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