春ばかりがいい季節ではない。夏ばかりが熱い季節ではない

 ひとこと紹介の言葉が浮かんだのは、この物語の起伏が実に心地よかったからです。

 web小説というと、特書くジェットコースターのような勢いと、起伏に富んだ、展開の激しさで引っ張るものが多い中、まるで緑溢れる丘の稜線を散歩しているような、優しさと癒やしの雰囲気が感じられる物語です。

 悪くいえば淡々としているけれど、物語を紡いでいるサンダルウッドさんの文章が、主人公の燻り方や、また主人公の性格に起因する短所と長所を表しているように思いました。

 物語のスタート地点では、過去に恋人と別れた事が明かされ、仕事についても、向いていない職種であるように思わされます、

 即ち、春はもう過ぎ、夏のような熱い時期でもなくなっている。

 しかし新しい気付きから集束するエンディングは、秋には実りがある事、また冬に咲く花すらもある…そんな、私としては、という注釈が必要ですが、詩的な言葉が浮かんでくるくらい刺激を受ける物語でした。

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