愛と憎


 深夜、僕はベッドの上で深く息を吐いて脱力した。

 ついに、終わっちゃった――と。


 今迄の記憶を並べ直す。


 父のあとを追うようにいなくなるって、不思議なこともあるもんだ。


 お互い死んだことは知らないくせに。

 それは、呆れた世話焼きからか、憎しみからか。


 あの二人は面倒くさかったから。

 どちらもごちゃまぜになったものだろうか。


 毎日喧嘩する両親の嫌な思い出。

 両親が僕の為に何かをしてくれた嬉しさ。

 ろくでもない親だったという失意。

 もう会えないという寂しさ。




 憎しみと呼ぶには、明るすぎて。

 愛と呼ぶには、暗すぎる。


 僕の中にあるこの感情は、一体何なのだろう。


 結局、最後は放り投げた。

 ――愛とか憎とか、良く分からないよ。



 そして、思い直す。

 ――それでも、僕らの間には、確かに何かがあった。



 僕らは家族だった。



 明日も続く慌ただしい日々に備えて、僕はゆっくりと目を閉じた。

 

 


 



 

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