どうしようもない両親へ。あなた達の愛は分かりにくい。

Askew(あすきゅー)

愛と憎

本編

お父さんにそっくり






「ほんとにお父さんそっくり!!」






 何度も繰り返し聞いた常套句。この言葉が頭の中から離れず、聞くといつでも動けなくなってしまう。あなたはいつも大声で彼の悪い部分を指摘し、批判し、罵っていた。彼は物言わず受け流していて、たまに怒鳴り返すか、ドアを勢いよく閉めて出ていくかだ。たまにお皿が割れる。


 子供ながらに言われる方も言われる方だ、と思っていた。

 そして、言う方も言う方だと。


 それでも、二人とも大切な存在だった。

 離れて欲しくなかった。

 仲良くとはいかなくても、そばにいるだけでいいのに。

 

 あなたは僕を叱る時、いつもこう言った。

「ほんとにお父さんそっくり」


 心の中で反論しながら、どうしようもなく途方に暮れた。

 ――そんなの当たり前じゃないか。

 それでも、言われる方も言われる方だと思うので、耳が痛い。


 分かっている。

 父のダメな所に毎日怒っていることも、僕の性格がそれに似ていることも。

   

 僕たちに話しかける時には優しいトーンになるその口で、いつも口汚くけなしている相手に似ていると言う。僕にはどちらも同じように家族なのに、父親のようになって欲しくない、という思いを前に何も言えなくなってしまう。母は汗を流して、僕たちの為にすべてを尽くしている。それはただ、子供ぼくらのためだと気づいている。


 だから、動けなくなってしまう。


 言葉って残酷だ。

 その人が何を思っているか、ちゃんと分かってしまう時があるから。

 

 ○

 

 僕は両親を見て、人が誰かに対して抱く憎しみを知った。

 

 そして、後にどうしようもなく気付いていく。

 その裏にあったものについても。

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