第17話 ネコの手作り 2
貴紀の弁当箱を手に取り、アルミカップを詰めておく。
「ご主人、いつもここに具材入れてた」
食費の節約のため、貴紀は自分で料理をすることを決めている。学食なんて贅沢は出来ないため、基本手作り弁当を持って行く。
ティアは何度もその光景を見ている。
「卵を割って……ああッ! 殻が……ッ」
時に卵を割るのに失敗して。
「あ、黒くなった……?」
折角の卵を焦がして。
「あむ……。うん、ウインナー美味しいー」
つまみ食いがやめられず……。
「……お米が水に沈んで」
挙げ句、炊かれていないご飯に戸惑う。
そして──。
「これ、なんか違う……」
完成したのは、おかず少なめで米粒がぎっしりと詰まったナニかである。
いくらネコでもすぐに分かる。
「失敗した……」
しょんぼりと尻尾は垂れ下がり、その声にも覇気がない。
「ご主人……」
「ティア?」
「──ッッ」
いつの間にか貴紀は目を覚まし、瞼を擦りながら起き上がる。
「うぅ……珍しいな。お前が先に起きるなんて……って、何してんの?」
「あう……お、お弁当……」
「弁当?」
ティア特製のお弁当を見た貴紀は、盛大に溜息を吐いて、ティアの頭をぐりぐりと撫で回した。
「にゃふ……」
「全く……昨日から変だぞ。お米は炊かなきゃダメなんだぞ」
「にゃぅ……」
「ありゃりゃ……卵焦げてるし。しかも殻まみれじゃないか……」
「あう……」
ダメ出しばかりで、流石に心が折れそうなティアだった。自分でも分かっているからこそ、余計にダメージがでかい。
「……でも、ありがと」
「にゃうん?」
しかし貴紀は、怒るというよりは呆れたような苦笑いを浮かべた。
「怒って……ないの?」
「食材を無駄にしたのは、ちょっとオコだ」
「にゃふん……そ、れは……」
「けど、挑戦した事を怒ってはいないよ。ていうか、分からないんだったら訊け。初めから一人でやろうとするな」
「あいた……。うん、ごめんなさい」
軽く小突かれて、対して痛くないのに頭を押さえるティア。貴紀はそんなティアの頭を撫でて、後片付けを始めた。
「ティア。片付けるの手伝って」
「……っ! うん!!」
そう声を掛けると、ティアは嬉しそうに貴紀の横に立つのだった。
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