第6話 ネコと水族館 2

 そしてやって来た水族館。

 遊園地もそうだが、こういった施設をひとりで訪れるのは案外勇気がいる。けれど今回は、飼いネコを連れての入場である。


(うわぁ……綺麗だなぁ)


 滅多に来ることもなく、たまにテレビ画面を見て通して見るしかなかった貴紀は、自分の目で見ている光景に感動していた。

 貴紀が歩む道には、上と左右がガラス張りになっており、その中では、すいすいと泳ぐ魚たちが、幻想的な光景を作り上げていた。

 テレビで見るのとは比較にならないほど、美しく迫力ある光景である。


「これは来て正解だったな……」

「うん! お魚美味しそう!」

「…………」


 感動ぶち壊しであった……。

 ティアは目をキラキラさせながら、空を泳ぐエサを、涎を垂らしながら見つめている。


「ティア……もっと、言う事はないのか?」

「にゃ? うーん……ご飯?」

「食う事以外でだ!」

「…………良い匂い?」


 ネコのティアには、ここの生き物は捕食対象でしかないようである。


(ここに連れてくるのは間違ってた……)


 呆れて物も言えなくなった貴紀を置いて、ティアは水槽に釘付けである。

 元気に泳ぐ魚たちは、命の危機を前に身震いしていたように見えたのは、多分気のせいではないだろう。


「にゃあ……美味しそう……」


((((ビクッ……))))

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