第5話 ネコと水族館 1
日がな一日軟禁状態だった部屋から、久し振りに外の世界へと連れ出されたティアは舞い上がっていた。
バイト代が入金されて、ようやく少しだけ好転しようとした矢先であったが、約束通り遊びに連れて行ってもらえるのだ。ティアが暇を持て余していたのを知っている貴紀も、無駄遣いしない範囲で外へ連れて行くことを決意していたのである。
「水族館♪ おーさかな! 食べたいな♪」
「食べんな」
もう少しお金があれば、遊園地くらいには連れて行きたいと考えていた貴紀だったが、流石に今回はそうはいかない。
なので近場で、入場料程度しか掛からない施設は水族館くらいしかなかった。なかったのだが──。
「どんなお魚が……じゅる……」
(心配だ……。ティアじゃなくて、水族館の生き物たちが……)
終始こんな調子のネコを、エサがうようよ泳いでいる
「ティア、お腹空いてきたー」
「頼むから、水族館の魚を食べようとするのはやめてくれな?」
「にゃ……?」
水族館の魚はガラスの向こうとはいえ、腹を空かせたネコが暴走したら……。
(いやいや……。いくらティアでも、その辺は分かってるよな? 分かってるよね?)
「おーさかな♪ たーべーたい♪」
(分かってますよねティアさん!?)
先行きが不安になる貴紀さんだった……。
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