第3話 お留守番のネコ

「ぅぅ……ご主人、遅い……」


 新井家では一人の……ではなく、一匹のネコが唸りながら主人の帰りを待っていた。

 アパートの一室に部屋を借りている貴紀は、生活費を稼ぐために毎日午後八時過ぎまでバイトしている。それも二ヶ月前、衝動的に拾ったネコを養うというイレギュラーが発生したため、今月は超貧乏生活の真っ只中。


「暇だよー。ご主人早く帰って来てよー」


 そんな苦労を知ってか知らずか、ネコのティアは今日も今日とて、退屈な時間に飽き飽きしていたのだった……。


「にゃ……にゃうぅぅ……」


 貴紀が買ってくれたピンポン球を転がし遊ぶが、やはり一人ではあまり楽しくない。

 二ヶ月前ならともかく、今は立派な大人ネコのティアにとっては、一人の時間の方が辛く切ないのであった。


「うぅぅぅぅ……まだ、一時間もあるよぉ」


 貴紀の帰宅時刻は午後八時半くらい。只でさえお金が足りない貴紀は、寄り道なんて絶対にしないの心に決めている。

 そのせいで付き合いが悪いと、同級生に認定されてしまったが……。


「暇だにゃーっ!」


 貴紀の帰りが遅いのはいつもの事だが、それを割り切れるほど大人じゃないティアは、寂しさが苛立ちに変わり、白い尻尾を忙しなく左右にふりふりする。

 そして──。


「ただいま……」

「シャアァァァァッッ!!」

「なんで!?」


 何も知らずに帰宅した貴紀を待っていたのは、鋭い眼光と爪の出迎えだった……。

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