悪党

 既存の権力に従わない強者を、中世日本語では悪党と呼んだ。現代社会では単なる犯罪者だが、世界は常に秩序と混沌を繰り返す。
 運命なり宿命なりに逆らう存在は常に魅力を持つ。それは、我々の大半が従わざるを得ない恐るべき力を無力化してくれそうな期待を刺激するからだろう。
 本作で描かれるのはそうした『悪党』どもである。仲間内でじゃれ合い、現代的な意味での悪党を憎み、愛のなんたるかを知っている。たった一つ違うのは彼らの大半が人間ではないことだ。
 具体的にどう違うかは実際に読んで頂くとして、作中での人間社会は作者が述べる通りに堕落していた。読者に不快感のある刺激を与えぬよう配慮した書き方にはなっているが、通俗ファンタジー版ソドムとゴモラである。
 複雑なのは、基本的には善良で親切なはずの人々が、ある種の愚かさから平気で残虐な振る舞いをすることもあったことだろう。まことに、地獄への道は善意で舗装されており、人は業火で焼かれるまで天国に至ると確信してやまない種族といえよう。
 そんな陳腐さ、馬鹿馬鹿しさに命がけで逆らった主人公達の軌跡を大いに味わえた。ゆめゆめ、なんたらソードだのどうたらの魔法だので俺様最強ストーリーを展開するお話とは一緒にするまい(そうしたお話それ自体を否定したり非難したりしているのでは一切ないので念のため)。
 作者入魂の世界観を楽しもう。

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