壁と鉄条網

 読んでいて、何枚かの写真を思い出した。百年ほど前のアメリカ合衆国で、ルイス・ハインが撮影したものだ。
 同国で児童労働が禁止されたのは1938年である。ハインが撮影したのはその数十年前だ。虚ろな顔をした、十代にもならぬ子供達が胸を打つ。
 翻って、本作で描かれる紡績工場も子供(や、社会的弱者)を文字通りに搾取している。本作には事実を暴露するジャーナリストなど存在しない。主人公達が全てを解決せねばならぬ。
 彼等が理不尽さの権化をどう乗り越えていくのか。詳細本作。