〔掟破りの逆サソリ〕
「ガチャッ」
特子「オッハヨウごさいマウス!ネズミ年にちなんで!なんてね。」
カチョー「おい…特子?」
私の名前は「志賀内 特子(しがないとくこ)」アニメと刑事ドラマが大好きな29才、独身。
今年の4月に、その実力を買われ、新しく警視庁内部に設置された、この『特別課捜査班』通称『特課』に勤務する事になった。
それから半年、慌ただしい毎日を送っていた。
ちなみに、この班の人は私以外、すべて『課長』の役職を持つエリート集団なのだ。
カチョー「お~い!特子、この資料をコピーしてくれ~!」
彼は『敬志 壮寛(けいし そうかん)』この班の課長だ。
56才、通称『カチョー』少し頭が薄くなってきてるが、なかなかダンディーなおじ様だ。なんと、元捜査1課の課長をしていた事もあるらしい。
ジミー「今日も、空が泣いてるな…」
彼の名前は『次見 大須樹(じけん だいすき)』通称『ジミー』35才、
いつも窓際で、わざわざ折り曲げた電子煙草を吸ってるハードボイルド。課長代理の肩書きを持つ。
黒の上下スーツ、黒のネクタイに黒のハットは彼のトレードマークだ。
たぶん『あの人』を意識してるのだろうが、本人は一貫して否定している。
コウ「特さ~ん、この間の事件の資料を持ってきて~。」
望樹 太陽(のぞき たいよう)25才、この班の中で1番若い、ネット犯罪のスペシャリスト、通称『コウ』、課長補佐だ。
黄色い縁のメガネをかけ、長くもないのに髪を後ろに束ねている。
マイ「特ちゃん~、一緒にお茶しよ~。」
彼女?彼は『進舞入夏(しんまい いるか)』一見女性に見えるが、実はおネエだ。
警視庁初の女性課長誕生かと思われたが、カミングアウトによって、その快挙は失われた。
課長兼係長、39才。通称『マイ』私より綺麗なのがなんだかシャクだ。
ミル「特ちゃん~、トイレの電球が切れそうだったよ~。」
私以外では紅一点、本物の女性。彼女は『杏仁目 美留(あんにんめ みる)』さん、35才、正真正銘の警視庁初の女性課長になった人だ。どこの課なのかは知らないが…
この班では、『課長監査役』をしている。愛称は『ミル』さん。コスプレが趣味で、ジミーさんとは同期らしい。私の短髪癖っ毛とは違い、黒のロングストレートヘアーは私の憧れだ。
特子「カチョー!ちょっと聞いて下さいよ~、私の知らない間に『年』が変わっているんですよ!
楽しみにしていた『ハロウィーン』や、女の子の一大イベント『クリスマス』も知らないうちに終わっているんです~!!
ど~して~!!?」
カチョー「…おいこら特子、『ど~して~!?』じゃねえよ。
お前はいったい何をやっているんだ?」
特子「やだな~、カチョー。いつもの登場人物紹介からの本編突入じゃないですか~。」
コウ「わざわざ一度部屋を出て、入り直しても、前回の『話』が無かった事にはなりませんよ。
しかも、さっきの自己紹介、第1話のコピペでしょ?『今年の4月』って…まだ1月ですよ…」
マイ「居ないはずのジミーさんが返事してるし…」
特子「や…やだな~、みんな、今は昨日の朝ですよ。」
コウ「『昨日』と言ってる時点でアウトです。」
特子「だ、だってだって、茶目さんのラーメン屋で人が頭から血を流して死んでいるんだよ?
あの店で、人を殴り殺せる物なんて『極太1本麺チャーシューリキ』しかないじゃない!」
コウ「他には思い付かないんですか…」
特子「だ、だって『チャーシューリキ』は殺人にピッタリの麺だし…」
カチョー「何?どういう事だ?特子。」
特子「説明しよう!!『極太1本麺チャーシューリキ』は、ちょうど持ちやすい四角い棒で重さも軽いから振り回すのにちょうどいい!強度もバツグン!しかも、先をかじって鋭くすれば、刺殺も簡単!さらに汁に浸けっぱなしにしてれば少し柔らかくなって、首に巻き付ければ絞殺もバッチリ!
あ!そのまま口に突っ込んでも、窒息は間違いなし!!
ね!完ぺきでしょ?」
カチョー「お前はなんちゅう物を茶目に作らせたんだ…」
特子「わた…私じゃないですよ~。私はただ『太麺』にすれば?って言っただけですから~」
カチョー「まあいい、とにかく行くぞみんな!」
ミル「でもカチョー、応援要請も無いのに行ってもいいんですか?」
カチョー「いいんだよ、第1発見者はジミーだし、茶目は俺達の仲間だ。
それにこのままだと、本当に『極太1本麺』が凶器にされかねないからな。一課には俺から言っておく。責任は全部俺が被る!」
マイ「たしかに、『チャーシューリキ』が凶器と断定されれば、茶目さんの店は営業停止は間違いないでしょうね。さらに調べが進むと特ちゃんの名前も…」
特子「カチョ~!あたいはどうすれば~!!!」
カチョー「フッ!安心しろ特子!茶目の店もお前も、俺が守ってやるよ!」(親指立てて、歯がキラリ!)
特子「カチョ~~…」
カチョー「コウ!店に着いたら調べてもらいたい事がある。」
コウ「何を調べるんです?」
カチョー「あわてるな。店に着いてからのお楽しみだ。
特子!お前も来い!」
特子「え!?私もですか?行ってもいいんですか?」
カチョー「ああ、確認したいことがあるからな。黙って俺についてこい!」(人差指をクイクイ)
ミル「なんだか今日のカチョー…めんどくさいわね…」
マイ「うん…というよりウザい…」
コウ「たしかに…でも1人だけ目が輝いていますけどね。」
カチョー「お前ら…陰口は本人に聞こえないように言えよな…
とにかく行くぞ!特別課捜査班出動だ!」
全員「はい!」
30分後…茶目の店
カチョー「ジミー!状況は?」
ゆう「あ!こら!勝手に入って来るんじゃない!なんでここに特課が?応援要請は出していないはずだが?」
カチョー「固いこと言いっこなしだぜ、ゆうさん。元同僚の店、しかも第1発見者がうちのジミーだ。で?状況は?」
ゆう「しかたねえな…被害者は『妹野 兄(せの けい) 』30才、会社員だ。加害者はそこにいる被害者の友人『私我 星夜(しが せいや)』同じく30才だ。」
カチョー「何!?友人が殴り殺したのか?」
ゆう「は?殺された?まだ死んでねえよ。確かに重症で予断はゆるさねえ状況だがな。さっき救急車で運ばれたよ。」
カチョー「いや、だってジミーが殺人事件て…
こらジミー!人が倒れているからって、殺人事件とは限らねえって、いつも言ってるだろうが。」
そう!次見大須樹(ジミー)は、とにかく殺人事件が大好きなのだ。
コウ「でも、犯人がわかっているなら、事件は解決ですね。
僕らの出番は無しってことで。さあ、帰りましょう。」
ゆう「まあな、それにこれは『事件』じゃなく『事故』らしいんだ。」
マイ「『事故』?」
カチョー「どういう事だ?ゆうさん。」
ゆう「ほら、お前も覚えているだろ?3年前の『女子大生強盗殺人事件』」
カチョー「ああ、覚えているとも、たしか1人暮らしの女子大生がアパートで襲われたって事件だよな。まだ犯人は捕まってなかったな…」
ゆう「捜査はしてるんだが物的証拠が乏しくてな、アパートのセキュリティーは甘く、目撃者も無し…今だに容疑者も浮かんで来ない…
被害者はその女子大生の兄なんだ。」
特子「ほほ~なるほど…それでなかなか犯人を捕まえられない警察に代わって、直接犯人を妹に教えて貰おうと、この店に来たわけか…」
ゆう「あ!コラ!お前!どこから湧いて出た!」
特子「いや~ん…、人を温泉みたいに…」
カチョー「まあまあ、ゆうさん。今回の事件はコイツも関わっているかもしれないから、ちょっと連れて来た。」
ゆう「『ちょっと』って…いいか?くれぐれも邪魔だけはするなよ?」
特子「はい…今回ばかりは返す言葉も御座いません…」
ゆう「ん?なんだ?いつもと違っておとなしいな…」
カチョー「まあ、コイツの事は気にしなくていい。詳しい経緯を教えてくれるか?凶器はやっぱり…」
ゆう「ああ、あのラーメン丼に入っている角材みたいな麺だ…誰があんなふざけた麺を考えたんだ…まったく…ん?やっぱり?」
カチョー「いやいや…で?」
ゆう「なんでも、ここのラーメンを食べると死んだ者達に会えるという噂があってな、直接妹に犯人の特徴を聞こうとしたみたいなんだ。友人と一緒にな。」
カチョー「なるほど…コウ!ちょっと来い。」
コウ「なんです?カチョー。」
カチョー「ゴニョゴニョ…」
コウ「わかりました。調べてみます。」
ゆう「何を調べさせたんだ?」
カチョー「まあ、後でわかる。それで、どうして『兄』は殴られたんだ?」
ゆう「『星夜』の話によると、麺があまりにも固くて両手で持ってかじり切ろうとしたみたいなんだ。
その時、口が滑り勢い余って隣にいた『兄』の頭をぶっ叩いたって訳だ。
『麺がもう少し柔らかければ、こんな事にはならなかった。兄に申し訳ない』と言っている。」
カチョー「なるほどな、『麺』のせいか…で?その裏付けは?」
ゆう「それが居ねえんだ…」
マイ「え?居るでしょ?こんなにたくさん。」
ゆう「たしかに店は満席で人もたくさん居た。その時居た全員から話を聞いた。
ただみんな口を揃えて『覚えていない』だとさ。」
ミル「まあ、それがこの店の『売り』だからね。
でも、『茶目』さんと『ジミー』さんは正気を保っていたんじゃないの?」
ゆう「茶目は厨房の奥にいて何も見てないそうなんだ。
ジミーは麺をかじるのに夢中で、殴ったところは見てないそうなんだ。
まったく、茶目のヤツもとんでもない麺を作ったもんだ。営業停止は免れないだろうな。もしかしたら『調理師免許』も剥奪か…」
特子「そ…そんな…カ…カチョー、私…どう茶目さんに謝れば…」
カチョー「大丈夫だ、特子。まあ、安心して見てろ。
それよりその凶器に使われた『チャーシューリキ』は何かおかしな所、違和感は無いか?」
特子「おかしな所?違和感?う~ん、色や形は『チャーシューリキ』よね…それでは失礼して、ガブリッ!」
ゆう「あ!こら!何、凶器をかじってやがる!」
カチョー「まあまあ、ゆうさん、落ち着いて。」
特子「固っ!!固った!」
ゆう「そりゃ固いだろ?それが、このラーメンの『売り』なんだろ?」
特子「違うんです!他のドンブリを見て下さい!」
ゆう「あ?他のドンブリだ?ん?あ?あれ?全員完食だと!?
汁は残っているが、麺がない!?コイツらいつの間に!俺達が到着してから、誰も食べていないはずなのに?」
特子「それはそうですよ、いくら『極太1本麺チャーシューリキ』が固いと言っても所詮はラーメン。時間が経てばふやけて無くなりますよ。特に『チャーシューリキ』は、その固さゆえの反動で、ふやけてしまえば、汁と同化し無くなったように見えるんです。
しかもですよ、さらにそのまま時間が経てば汁は固まり、そのまま固形物として『燃えるゴミ』に出せるんです。
残った汁を下水に流さないから、とってもエコなんですよ~。」
カチョー「よく考えてみろよ、ゆうさん。両手で持ってかじり切らなきゃならないようなラーメンを、わざわざ予約までして食べたいと思うか?しかも凶器に使われた麺を見てみろ、1時間以上汁に浸けっぱなしになってるのに固いままだ。
それがどういう事か解るか?」
ゆう「つまり…」
カチョー「そう!あの凶器に使われた麺は『ニセ物』なんだよ!『偽のサソリ固め』なんだ!」
マイ「『偽のサソリ固め』!?」
ゆう「一体、何がどうなって…」
コウ「カチョー!わかりました!
やっぱり『星夜』は正統派ラーメン屋『スクリュードラゴン』の店主でした!
しかも『全国不味い物ランキング』第2位。茶目さんが店をオープンするまで1位でした。」
カチョー「やっぱりな!」
コウ「『やっぱり』って?」
カチョー「ゆうさん、これは『事故』じゃねえ!立派な『殺人未遂』事件だ!」
ゆう「な!なんだと!?」
カチョー「ゆうさんなら、この言葉の意味が解るよな。『掟破りの逆サソリ』」
ゆう「それは確か…」
カチョー「そう!そして今回の『タイトル』だ!このタイトルが全てを物語っていたんだよ!」
ゆう「タイトルだと?」
カチョー「ゆうさん、ラーメンの『タブー』って何か知ってるか?つまり『掟破り』だよ。」
ゆう「ラーメン屋の『タブー』って言ったら、やっぱりあれだろ、『人気店と同じラーメンを真似て作る』だろ?」
カチョー「そう!この店の『最強極太1本麺チャーシューリキ、サソリ固め』
星夜はこれを真似して作って店に持ち込んだんだ。」
ミル「でもどうして?1位も2位も変わらないと思うんだけど…?」
カチョー「それは『星夜』に聞いた方が早いな。
おい!星夜!そのカバンから垂れている汁は何だ?説明して貰おうか!」
ミル「あ!星夜のリュックから白い液体が!」
ジミー「リュックの中を見せて貰うぞ!なんだこりゃ?!
カチョー!リュックの中に、ドロドロに溶けた何かが…」
カチョー「それは何かな星夜君?お前はこの店の麺を真似て固くしたんだろうが、固さにこだわり過ぎたようだな。
茶目は固くしようとして固くなったんじゃない!
客の為に作ったら太く、固くなったんだ!」
コウ「それもどうかと思いますけどね…」
カチョー「お前は、この店の麺で人が死ねば、この店は潰れる、そうなるとお前の店が『不味い物ランキング』の1位に返り咲く事が出来る!
そう思って麺をすり替え事件を起こしたんだな!」
星夜「…く…くそ!なんでこんな店が1位なんだよ!俺の店の方が不味いじゃないか…」
マイ「いや…それを自慢されてもね…」
カチョー「茶目はな、不味くしようとして不味くなってるんじゃない。
美味しくしようとして不味くなってるだ!その証拠に、実際『美味しい』と言ってるヤツが居るんだよ!」
星夜「ま、まさか!?この店のラーメンが美味いいだと?
そ、そんなヤツが何処に…!?」
カチョー「お前の目の前だ!」
星夜「あ、あんたが…」
ジミー「茶目のラーメンが不味いなんて、お前は不幸だな。フッ!…」
星夜「ま、まさか美味く作ろうとしてこんなに不味くなるなんて…そ、そんなヤツが居るなんて…
で、でも信じてくれ!俺は確かに店が潰れればいいと思った。
『兄』を殴り殺そうなんて考えは、これっぽっちも無かったんだ。ただ少しケガをさせようと思っただけなんだ。」
カチョー「そこなんだよな~、なぜ友達を殴った。他にも人は居ただろ?」
星夜「そ…それは…ケ…ケガをしても、友達なら許してくれるかも…って…」
ゆう「他人なら『傷害事件』になるってか?」
コウ「カチョー!もう1つわかった事が…」
カチョー「なんだ?コウ。」
コウ「その星夜って男、兄の妹が好きだったみたいなんですね。元同僚に調べてもらったんですが、パソコンのフォルダーの中に妹さんの写真がたくさんあったようです。中には盗撮写真も。」
ゆう「なんだと?」
カチョー「ふ~ん…なるほどな。ゆうさん、コイツと例の女子大生の事を洗い直した方がいいかもな。」
ゆう「何!コイツが『女子大生強盗殺人事件』の容疑者だっていうのか?」
カチョー「まだ確証は無いがな、コイツは兄の親友だ。妹と面識があってもおかしくない。何か理由をつけて部屋に上がり込む事も出来る。
何よりこの店で『兄』を殴り殺そうしたのがその証拠だ。
夢に出てきた妹から自分の名前が出るのを恐れてな。」
ゆう「そうか!『兄』が死ねば、犯人の名前は妹から語られる事も無い、しかもこの店も潰れる。
まさに一石二鳥って訳だ!」
特子「と、言うことだ、星夜君。詳しい話は署で聞かせて貰おうか。」
カチョー「お前は麺をかじっただけだろうが…」
星夜「くそ!!」
「ガシッ!」
特子「キャッ!!」
コウ「あ!星夜が角材…じゃなかった『ニセ極太1本麺チャーシューリキサソリ固め』を持って徳さんを人質に!」
星夜「それ以上近付いてみろ!コイツの出汁が麺に絡むぞ!」
コウ「さすがラーメン店の店主…」
ミル「あ!星夜の正面に立っているカチョーが右腕を回し始めたわ?」
マイ「それに答えるかのように、星夜の後ろに立っているゆうさんも腕を回し始めた。」
星夜「な、何をする気だ!」
カチョー「特子!しゃがめ!!
うおおおおおお~~~!!!」
ゆう「おおおおお~~~!!!!」
特子「はい!!」
「ドッガッ~~~~ン!!」
星夜「ぐガッ!……」
マイ「あ!あれは?『板挟みダブルラリアット!!!…からの~」
カチョー、ゆう「オリャアアアアアアア~~!!」
マイ「ダブルブレーンバスター!!」
「ド~~~ン!!!」
ゆう「おら!立て!!」
コウ「ゆうさんが、星夜を後ろから羽交い締めにした!!」
ゆう「壮寛!決めろ!!」
カチョー「くらえ!21文ロケット砲!!!」
マイ「普通のドロップキックだわ!!」
コウ「あ!星夜がキックを避けた!!」
「どが~~~ん!!!」
ゆう「ぐわあぁ~~~!!!」
カチョー「すまない!ゆうさん!!」
ゆう「このやろ!壮寛!何しやがる!!!」
「ドンッ!」
カチョー「なんだと!てめえがちゃんと捕まえてねえからだろうが!!!」
「ドンッ!」
ゆう「なにをコノヤロー!!!」
「ポカポカポカポカ……!!」
ミル「あ~あ…ケンカが始まっちゃった…」
マイ「これも、プロレスタッグのお約束ね…」
星夜「い、今のうちに…」
コウ「あ!マイさん!危ない!!」
星夜「どけ~!!ブス~!!!」
マイ「あ~?!誰がブスだって?」
「ガシッ!」
マイ「うおりゃぁぁぁぁぁ~~~!!!」
「ドッガッ~~~~ン!!!!!!!!! 」
カチョー、ゆう「ジャーマンスープレックスホールド!!!」
特子「ワ~ン、ツー…スリー!!!!」
コウ「マイさん…パンツ見えてますよ…」
マイ「イヤ~ン…」
次の日…
コウ「星夜が、やっと自供し始めたようですね。」
カチョー「まあ、あれだけヤツの部屋から彼女の私物や盗撮写真が出てきたら言い逃れは出来ないだろうな。
いわゆる『ストーカー』ってやつだ。兄妹の前では『いい友人』を演じてたみたいだからな。
よく3人でも遊んでいたらしいし、彼女の部屋に星夜の指紋があっても、なんら不思議はない。」
ミル「そんなに好きなら、普通に告白したらよかったのに。」
カチョー「いや、彼女にはもう好きなヤツが居たみたいなんだ。こともあろうに、その事を星夜に相談しちまったんだな…
どうしたら恋人になれるかって。」
マイ「あちゃ~、結末が見えたわ…」
カチョー「ショックを受けた星夜は『そのことで話がある』って彼女のアパートを訪れた。まあ、後は想像通りだ。逆上した星夜が彼女の首を絞めて殺害、強盗に襲われたように部屋を荒し、金目の物を奪う。部屋に指紋があっても疑われる事も無い。」
コウ「これで、また一課の株が上がりましたね。『女子大生強盗殺人事件』と『ラーメン店殺人未遂事件』の犯人を逮捕したんだから。」
ミル「兄君はどうなったの?」
カチョー「命に別状は無いらしい。ただ、茶目のラーメンを食べていたせいか、その時の記憶がまったく無いそうなんだ。」
マイ「当分の間は気持ちの整理がつかないでしょうね。妹さんを殺した犯人が自分の親友だったんだから。」
コウ「ところで特さんは?まだ来てませんよね。もうすぐお昼ですよ。」
「ガチャ!」
特子「オッハヨウ!ございマスメディア!凄い報道陣の数ですね~。
せっかく気合いを入れてお洒落してきたのにスルーされちゃいました。」
カチョー「お前、正面玄関から入って来たのか?」
コウ「特さん…その縦じまのシャツ、どうみてもコンビニの店員ですよ。」
特子「え~!そんな~!せっかく『メリカル』で買ったのに。」
カチョー「こら!特子!今まで何をしてたんだ!もう昼だぞ!」
特子「あ~!!カチョー!昨日私に言ったこと忘れてる~!」
カチョー「え?昨日?」
特子「そうですよ!茶目さんの店が誰かさんが大暴れしたせいで、メチャクチャになったから、片付けるのを手伝えって、言ったじゃないですか!!」
カチョー「え?あ…そうだったっけ?
星夜を取り押さえる辺りから何も覚えて無いんだよな…」
マイ「実は私もなのよね…後で聞いたら、私が星夜を取り押さえたって。」
特子「マイさん、綺麗なブリッジでしたよ。」
コウ「まあ、あの辺りから店中にラーメンの汁が飛び散りましたからね。
僕は隅にいて助かりましたけど。たぶん付着した皮膚から成分を吸収したのかと。」
カチョー「恐るべし『茶目汁』…」
ミル「そういえば、カチョーは最初から『チャーシューリキ』がニセ物って知ってたみたいだけどなんで?」
コウ「あ!僕もそれが知りたいです。確か『タイトル』がどうとか…」
カチョー「フフフ、聞いちゃう?それ聞いちゃう?」
コウ「あ…やっぱりいいです…」
カチョー「まあ聞け。昔2人のプロレスラーにな、『名勝負数え唄』ってのがあってな、それまでタブーとされていた相手の必殺技を逆にかけるという……」
マイ「あ!そうだ!私、部長に呼ばれていたんだ!それじゃ!」
カチョー「でな、2人には元々因縁があってだな……」
ミル「私は副総監と約束があったんだ。じゃあね特ちゃん、コウちゃん。」
カチョー「それから1人が「噛ませ犬じゃね~!!」ってな……」
コウ「そうだ、僕も新しいドローンの事で開発部に呼ばれていたんだ。
じゃあ、特さん、カチョーの相手よろしく!」
特子「あ!こら!コウ!待て!!!」
カチョー「でな、特子。その時の解説者が、よく叫んでいたんだ。「お~っと!これは『掟破りの…』ってな。
そこでピーンと来たわけよ…」
特子「カチョー!わかりました!」
カチョー「お!わかってくれたか!流石だな!おい!」
特子「はい!カチョーが「めんどくさいおじさん」って事は、よ~くわりました。
でも………
茶目さんの店と、私の『チャーシューリキ』を守ってくれてありがとう…
パパ…大~好き!!!」
カチョー「特子~!!!」
「ガシッ…」
ジミー「フフフ、今日も空は『がっぷり四つ』だな…フフ…」
おしまい
コウ「ジミーさん居たんだ…」
特子「窓と同化してやがった…」
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