第2話〔犯人逮捕は、ランチのついでに…〕
第2話〔犯人逮捕は、ランチのついでに…〕
特子「おっはよ~ごっざいま~す。」
ここは警視庁内部にある〔特別課捜査班〕
私は警視総監を大惨事がら救った事で、念願だった警察でアルバイトとして働く事になった。
早く警察学校の試験に合格して、立派な刑事になって、優しい彼の腕の中で殉職する。その夢を叶える為、今日も頑張るぞ!
カチョー「お!特子、早いな。」
彼はこの班の……以下略……
特子「おはようございます、カチョー。
カチョーも早いですね。」
カチョー「ハハハ、まあな、課長ともなればこれくらいはな。」
ミル「違うのよ、特ちゃん。」
特子「あれ?ミルさんも来てたんですか?それにその格好…」
ミル「近くで仲間とイベントやってたの。盛り上がっちゃって、終電逃しちゃったから、仕方なくここに来たってわけ…
着替えも家に置いてきてるし、そしたらカチョーがいるんだもん、ビックリしたわ。」
特子「え?!カチョー昨日から、ずっとここに居たんですか?」
カチョー「え?!ま、まあな、資料を見直してたらな、徹夜になっちまった。」
マイ「ウソよ、ウソ。特ちゃん、騙されないで。」
特子「え?あれ?マイさん、いつの間に?」
マイ「私は、たまにここで寝泊まりしてるのよ。ほら、あたし帰っても1人でしょ、寂しいんだもん。
ほら、あそこがあたしの部屋よ。
特子「あそこって、取調室じゃないんですか?」
カチョー「俺達が何を取り調べるんだよ。ただのお手伝いさんだぜ。」
特子「え?で、でも『取調室1』って…
カチョー「まあ、一応な、まさか『マイルーム』なんて書くわけにはいかないだろ?」
特子「じ、じゃあ隣の『取調室2』は?」
カチョー「ん?あれはジミーの部屋だ。あいつはここに住んでんだよ。」
特子「え?住んでるって…あの中に居るんですか?」
マイ「ん?ジミーさんならそこに居るわよ。」
特子「え?何処に?」
マイ「ほら、いつもの窓際。」
特子「え!あ!観葉植物かと思ったら、ジミーさんじゃないですか!しかも立ったまま寝てるし…」
カチョー「アイツは星空を見ながら寝て、太陽の光で起きるんだ。」
特子「あ~、なるほど、今日は曇ってるからまだ起きてないんだ。
って、違うでしょ!いいんですかカチョー、警視庁を寝床にしちゃって!」
カチョー「まあ、これといってお
マイ「だって~冷暖房完備だし。」
ミル「セキュリティも完璧だし。」
マイ「シャワールームやコインランドリーもあるのよ。」
カチョー「それに一課の連中も、よく泊まってるじゃないか。」
特子「あれは、捜査が忙しくて仕方なくでしょ!」
ミル「カチョーも奥さんに閉め出しを食らったら、いつもここですもんね。」
特子「カチョー…そんなに頻繁に閉め出されるんですか…」
カチョー「違うぞ特子、カギを持ってないだけだ。」
特子「エラソーに言わないで下さい、カギを持たせて貰えないだけでしょ。
それじゃ、まさか、あの資料室も…」
ミル「ピンポーン!資料室は私の部屋。といっても衣装部屋になってるけどね。」
特子「どの部屋も『keepout』って書いてあるから、入っちゃいけないのかと思ってましたよ。
でも、この流れだと…
コウさん!何処に居るんですか?居るのはわかっているんですよ。
チャッチャと出てきて下さい。」
「ガチャ…」
コウ「おはようございます。あれ?みんな早いですね。」
特子「コウさん!『おはようございます』じゃないですよ!なんで泊まってないんですか!」
コウ「なんで僕がこんなむさ苦しい所に泊まらないといけないんですか。」
特子「なんでって?話の流れからすると、結局全員泊まってて、「私だけが泊まってな~い!」アハハハハハハハ…チャンチャン。
で終わるはずでしょ!」
コウ「なにを朝っぱらから、訳のわからない事を言ってるんですか。それより、昨日頼んでおいた資料は捜してくれました?」
特子「いや~、はっはっはっ…、 それが、資料を入れておいた段ボール箱が見当たらなくて…」
コウ「は~…もういいです…だいたい予想はついていますから。
マイさん、部屋に入りますよ。」
マイ「え~、やだ~。」
コウ「「え~、やだ~」じゃないです。」
「ガチャ」
コウ「やっぱり…マイさん、段ボールを鏡台代わりにしないで下さいって、あれほど言ったのに。備え付けの机があるじゃないですか。」
マイ「だって~、机に座って鏡を見てると、自分で自分を取り調べてるみたいで嫌なんだもん。
ね~、カチョ~、備品で何とかならない~?」
カチョー「いや~、鏡台はムリだろ?ただでさえ、ここは予算が下りないんだから…」
特子「え~、そうなんですか?でもここって特別な『課』なんでしょ?」
ミル「まあ、特別なといえば特別なんだけどね。」
特子「え?何か他にあるんですか?」
カチョー「ここのみんなは、全員『課長』の肩書きを持っているのは知ってるな?」
特子「はい、みなさんいろんな課の課長さんなんですよね?」
カチョー「まあ、『元 』が付くがな。
たとえば、俺は『一課』ジミーは『二課』マイは『生活安全課』ミルは『総務課』コウは『セキュリティ強課』てな。」
特子「ん?ちょっと待ってください。最後だけダシャレ的な『課』があったんですけど…」
カチョー「まあ、それはいいとして…」
特子「え!?スルー?」
カチョー「特子、お前は『課長』と聞いてどう思う?」
特子「え?「どう思う」って?」
カチョー「『イメージ』だよ『イメージ』。」
特子「そうですね~、『課』の長なんだから、偉いですよね。でも、ドラマなんかだと、部下の責任を被ったり、上からの命令に逆らえなかったり、いつも胃薬を飲んでいるイメージですかね。」
カチョー「だろ?上には気を遣いながら、部下を育てなきゃならない、最近の若者の事も知らなきゃいけない。育てたら育てたで、そいつらに『課長』の座を奪われる。結構ハードなポジションなんだよ。」
特子「まさに、『中間管理職』の鏡ですね。」
カチョー「で、新しい『課長候補』がどんどん出てくる訳だ。すると今居る俺達はどうなる?」
特子「え?昇進するんじゃないですか?『部長』とか、『署長』とか?」
カチョー「俺達が、部長や署長になったら、そこに居る部長や署長はどうなる?」
特子「それは、また昇進して…そのまた上が昇進して…あ、そうなると、何年後かは『警視総監』が何十人にもなりますね。」
コウ「なりません!『警視総監』は1人だけです。」
特子「じゃあ、どうするんですか?古い課長は?」
カチョー「『古い』って言うな!まあ、だいたいのヤツが『依願退職』するな。っていうより、事実上の『リストラ』だ。
ただ、課長職ともなれば、少なからず内部の秘密を知っているから、退職金は、かなり多めみたいだ。口止め料込みって事だ。」
特子「シークレットブーツ」ってやつですね?」
コウ「トップシークレットです。」
カチョー「なんで警察のお偉いさんが、身長を誤魔化さないといけないんだ。「シークレット」がついてればいいってもんじゃないぞ…」
特子「だって…他に思い付かなかったんですもん…
じゃあ、ここにいるみなさんって…」
カチョー「ああ、退職を拒んだから、ここに集められて監視されてるって訳だ。
特に、ここにいる連中は、才能のあるやつばかりだからな。ただな~、『課長』としての才能は、まったくなかったみたいだがな。」
特子「カチョーは、なんで警察を辞めなかったんですか?『一課』の課長なら退職金もたんまり貰えたんでしょ?」
ミル「カチョーはお金じゃないのよね~。ね~カチョー。」
特子「え?そうすると、お金より、正義を貫いたって事ですか?「警察に残って、悪を滅ぼす!」みたいな。」
マイ「違う違う、そんなに格好いいものじゃないわよね~カチョー~。」
ミル「カチョーは『課長』の肩書きを捨てられなかったのよ。警察をリストラされたら、奥さんになんて言われることやら…ね~カチョー?」」
マイ「まあ、私も似たようなものなんだけどね。『警視庁で課長』をしてるって言えば、大抵の男はひれ伏すわよ。」
特子「確かに『警視庁』っていうだけで、距離を置かれますよね。私も親に「警視庁でアルバイトすることになったよ。」って言ったら、それっきり連絡が来なくなりましたもん。」
カチョー「「もん。」ってお前…大丈夫か?お前の親?」
特子「前までは、たまに電話がかかって来て、「私、私、お母さんよ。お父さんがね、入院したの。お金を少し送ってくれないかしら?」とか、
「私、私、お母さんよ。お父さんがね、財布を落としちゃって、少しお金を貸してくれないかしら?」とか、
「私、私、お母さんよ、お金貸して。」とか。
アルバイトを始めてから、まったくかかってきて来なくなったわ。きっとお父さんも元気になったのね。」
コウ「特さ~ん、それって絶対詐欺ですよ。」
特子「え~、うそ~!ちゃんと「お母さん」って言ってたし。」
マイ「まさか娘の方をターゲットにするなんて…私でも聞いたことないわ…」
特子「そういえば、マイさんは、『生活安全課』だったんですよね?やっぱり後輩が育って来たから、ここに来たんですか?」
カチョー「いやいや、こいつは例外だ。新人が配属されるたびに、同僚をぶん殴っていたからな。」
特子「ぶん殴るって…、そんなに狂暴そうには見えないんですけど…」
マイ「だって、あいつらったら、新人が配属されるたびに、課長の私を呼び捨てにするんだもん。「おーい、新米!」「新米居るかー!」って。
いい加減腹が立って、ぶん殴ってやったわ。「課長を呼び捨てにするんじゃね~!!」って。そしたら、紛らわしいからって、ここに配属されたの。」
コウ「確かに紛らわしいですよ。まさか新人に先輩が『さん』づけしたり、敬語で話すわけにもいかないでしょうし。」
特子「ミルさんは『総務課』でしたっけ?」
カチョー「あ~、コイツも例外だ。いろんな上司と付き合いがあるからな、しかも知り合いのレベルが尋常じゃなく広いし、太い。ミルが本気を出せば、国なんて軽くひっくり返るかもしれん。て事で、ここで大人しくしといてね。って事だ。」
特子「コウさんは…何となくわかりますよ…ど~せ覗きでしょ?」
カチョー「まあな、新しく設置した『セキュリティ強課』にコウを置いたのが間違いだよな~。
警視庁どころか、『京東都』すべてのセキュリティをコイツに一任しちゃったからな。」
コウ「だから、悪いことには使いませんって。
たとえ、裏帳簿や、裏取引を見つけても、僕の中だけで留めておきますよ。でも、僕に何かあったら、全部流出するようにはしてますけどね。」
カチョー「な、上の連中も、何も言えんし何も出来ん。」
特子「ジミーさんは…まあ何となくわかります…。」
カチョー「まあな、アイツは事件が好きすぎて、二課のくせに、一課に入り浸ってからな、二課の仕事が、まったく進まない…」
ジミー「コウ、何の資料を見てるんだ?」
コウ「あ、ジミーさん。」
特子「あ。ジミーさんが起きた。しかもマトモバージョン。」
コウ「これですか?2年前の郊外のアパートで起きた『強盗殺人事件』です。」
カチョー「あ~、あの『おんぼろアパート』の殺人事件か。確かまだ犯人は捕まっていないよな?」
マイ「なになに、何か見つけたの?」
コウ「ええ、最近になって気が付いたんですけど、このアパートって、特さんのアパートですよね?」
特子「ん?どれどれ?あ!私のアパートだ!2階の1番奥がマイスイートルームなの。」
カチョー「おい!特子!」
特子「なんですか?カチョー。急に大声なんか出して?」
カチョー「お前、確か都内のタワーマンションに住んでるって言わなかったっけ?」
特子「…あ…あ~…あれ~…あれは…いつか住むぞ!っていう願望でして…」
カチョー「は~…もう誤魔化してる事はないだろうな?」
特子「たぶん…」
カチョー「『たぶん』てなんだ?『たぶん』て?」
マイ「まあまあ、カチョーも履歴書をちゃんと確認しなかったのがいけないんだから。」
カチョー「警視総監じきじきの推薦だぞ!確認するわけないじゃないか。」
ジミー「で、それがどうかしたのか?」
コウ「その時、唯一の犯人の目撃者であろう人物が居たでしょ?」
カチョー「あ~、確か『パン女』!」
特子「『パン女』?」
マイ「そうそう、毎朝『食パン』をくわえて走ってるの。」
特子「アッハハハハハハ、なにそれ~、アニメのヒロインじゃないんだから、そんな人が現実に居るなんて、アッハハハ…、あ~お腹痛い…」
コウ「で、これがその映像です。」
特子「うわ!マジで?本当にくわえ…て…る?!」
コウ「この映像を巻き戻してみると…」
カチョー「お、あのおんぼろアパート。」
マイ「階段を上ったわ。」
ジミー「1番奥の部屋だな。」
コウ「ちなみに画像を拡大してみると。」
ミル「特ちゃんだね。」
ジミー「特子だな。」
マイ「特ちゃんだわね。」
コウ「特さんですね。」
カチョー「お~ま~え~か~!」
特子「ほ、ほら、あれですよ。みなさんもやったことあるでしょ?
ヒロインが朝寝坊して、朝食を食べる暇が無くて、食パンを食べながら走っていると、十字路で走ってきた男性と、運命のぶつかり転倒。そしてその男性に「大丈夫?」って優しく抱き起こされ、2人は恋に落ちるの。やったことあるでしょ?」
カチョー「ね~よ。」
マイ「あたしもな~い。」
ミル「ちゃんと朝食は食べないといけないわよ。」
コウ「無いですね。」
特子「ジミーさ~ん…」
ジミー「俺は…『ご飯派』だからな…」
コウ「でも特さん?寝坊して、急いでいる割には、いつもしっかりパンに焦げ目がついてるし、十字路を過ぎるとゆっくり歩いてますよね?」
特子「ドジッ子キャラよ。設定よ設定。それに食パンって、なにもしないと走ってるとき『フニャ~』ってなって、顔に張り付いちゃうんだもん。」
マイ「あ~あ、設定って言っちゃった…」
カチョー「っていうか、目撃者ってお前だったのか?!」
特子「はあ、まあ、一応…」
カチョー「なんだ?その気の抜けた返事は?」
特子「だって、いろいろ聞かれたけど、私、死んだふりしてたから、何も見てないんですよね。」
カチョー「『死んだふり』ってなんだ?『死んだふり』って…」
特子「いや~、あの日はいつもより気合いを入れて、全力で猛ダッシュしたんですよ。
そしたら十字路で走ってきた男性と、運命のぶつかり転倒、ラッキーって思って、「キャア~ン」って可愛く転んで、抱き起こされるのを待っていたんですよ。
そしたら、その男性が、私を無視してそのまま走り去ろうとしたんです。
だから私は、運命の人を逃がしてなるものか!と足にしがみついたんです。そしたら足蹴りにされて、ぶっ飛びました。気付いたら誰もいなかったんですよ。
で、後で聞いたら、殺人事件がアパートで起こったって言うからビックリしちゃって。」
カチョー「ん?ちょっと待て?コウ、その特子が男にぶつかった時の画像の時間は何時だ?」
コウ「え~っと、午前4時22時ですね。」
カチョー「特子、お前…いつもこんな時間にパンをくわえて走ってるのか?」
特子「やだな~、違いますよ~、最初は通勤時間や登校時間に合わせて走ってたんですけど、誰にもぶつからないから、だんだん時間を早くしたら、この時間になっちゃって…」
コウ「普通は時間を遅くするもんなんですけどね。」
特子「だって、遅くすると人が多くなって、全速力で走れなくなるじゃないですか。
それに、けっこう恥ずかしいし…一応…女のコですから。」
コウ「何が『恥ずかしい』ですか…ネットでは『都市伝説』レベルですよ。「捕まったら最後、二度と離れない」とか、「捕まったら最後、パンに挟んで食べられる」とか。」
特子「ブ~、それじゃまるで、私が怪物みたいじゃないですか!」
カチョー「あのなぁ、薄暗い道を、パンをくわえた女が全力で走って来るんだ。誰だって恐怖におののくぞ…」
ジミー「で、その時、何か気が付いた事は無かったのか?」
特子「暗かったし、死んだふりしてたから、何も見てないんですよね。
ただ…」
カチョー「ん!『ただ、』なんだ?」
特子「ただ、足にしがみついて、足蹴りにされた時、男の人の靴が脱げたみたいなんですよ。ちょうど私の目の前を、私と同じ方向に飛んでましたから。」
カチョー「それは警察にも言ったのか?」
特子「もちろん、覚えていることは全部言いましたよ。」
カチョー「おかしいな…遺留物の中に『靴』は無かったがな。」
コウ「資料の中にも『靴』なんて事は書いてませんね。」
ジミー「十字路が映っている映像は無いのか?」
コウ「ダメですね、あることはあるんですが、画質がよくありません。顔は特定出来ませんよ。」
カチョー「犯人が拾って持っていったんじゃないか?」
コウ「それはないですね、映像を見る限り、そのまま走り去っていますから。」
ミル「本当だ、かなり慌てているみたいね。」
コウ「警察はこの画像を頼りに、この男の行方を追ってるみたいですよ。」
特子「ん~…?何か大事な事を忘れているような気が…」
カチョー「どうした?特子、何か思い出したのか?」
特子「いや~…、何か『蹴り飛ばされた』時、声がしたような…」
カチョー「『声』だと!その男の声か!?」
特子「ん~、ちょっと違うかな、もっとこう『優しそうなおじさま』の感じで…」
コウ「でも、カチョー…ちょっとおかしいんですよね。」
カチョー「ん?何か不自然な点でもあるのか?」
コウ「特さんは、アパートの表側の道を走ってます。犯人はアパートの裏側から出て、わざわざ表側の道と交差する方向に走ってますよね。
しかもその先には『駅』や『繁華街』があるんです。
僕なら人気の少ない、反対側に逃げると思うんですよ。」
ジミー「確かに不自然だな?」
マイ「道を知らなかっただけなんじゃない?」
コウ「そうでしょうか…」
ミル「まあまあ、この話は一旦終了して、お茶にしましょう。」
カチョー「ああ、そうだな。特子、みんなにコーヒーでも入れてくれ…ん?どうした?特子?」
特子「終了?…終了…試合終了……あ!思い出した!!」
カチョー「どうした!?何か思い出したのか!?」
特子「終了ですよ!試合終了!」
カチョー「試合?何の試合だ!?」
特子「違いますよ。声ですよ!声!私が蹴り飛ばされた時、薄れ行く意識の中に、『安東先生』が現れたんです。」
カチョー「『安東先生』?お前の恩師か?」
ミル「違いますよ、カチョー、マンガの『スリムタンク』に出て来る先生で、いい先生なんです。『名言』もあるんですよ。」
マイ「あ!あたし知ってる。『試合が終われば、試合終了ですよ。』ってやつよね。」
特子「そうなんですよ。あの時、安東先生が私に『試合が終われば、試合終了ですよ。』って言ってくれたんです。
だから私、「まだ私の試合は終わってない!」って言い聞かせて、思いきり腕を伸ばして、一緒に飛んでいた『靴』を掴んで、自分の鞄にぶち込んでやったんです。
そして、そのまま気を失い、今に至るというわけです。」
カチョー「な、なに~!?じ、じゃあ、お前は、犯人を特定出来るかもしれないという遺留品を持ち帰って、今まで黙ってたっていうのか?」
特子「『黙ってた』なんて人聞きの悪い、『忘れてた』だけです。」
カチョー「『忘れてた』って…」
コウ「どうします?カチョー?立派な『遺留品横領』ですよ…」
ジミー「いや、特子は一般人だから、『窃盗』だな。しかも『犯人隠蔽』のオマケ付きだ。」
カチョー「とは言ってもな~…今さら、『犯人の手がかりを持ってました~。』って言えねえだろ…」
ミル「どうする?私達で犯人を特定して、一課に匿名で教える?」
ジミー「まあ、そうだな、俺達が犯人を捕まえたら、どうやって犯人を特定したか聞かれるだろうからな。」
カチョー「特子、その『靴』はまだ持ってるのか?」
特子「もちろんですよ。なんたって、逆シンデレラですからね、あの『靴』の持ち主が私の運命の人かもしれないし…」
カチョー「『運命の人』じゃなくて、『犯人の人』な、じゃあ、まだあの『おんボロアパート』にあるんだな?」
特子「も~!そんなに『おんボロ、おんボロ』言わないでくださいよ~。ちゃんと『メゾンハイアットプリンスホテル』って名前があるんですから。」
カチョー「え?!そんなに高級そうな名前がついているのか?ハイアット系列のアパートか何かなのか?」
コウ「違いますよ、カチョー。特子さんも間違えてますよ。
正確には『メゾンハイヤットプリンヌホラノレ』です。」
カチョー「プリンヌホラノレ?なんだ?そのふざけた名前は…」
特子「え?プリンスホテルじゃないの?」
コウ「表札も崩して書いてありますから、パッと見、『プリンスホテル』と読めなくはないです。」
マイ「でもこれって、商標登録とか、クレームが来てるんじゃないの?」
コウ「それは無いみたいですよ。外見がこれだし、部屋も満室で、ここ何年も住人が替わってないみたいだし、本家からしてみれば、『眼中に無い』ってやつですね。」
カチョー「あ!特子!お前、もしかして警察学校の入学願書に『メゾンハイアットプリンスホテル』って書いてないだろうな!」
特子「…だって、ずっと『ハイアットプリンスホテル』って思ってたんですもん。」
カチョー「あのなぁ、違うアパートの名前書いて受かる訳がないだろうが!」
コウ「まあ、特さんの場合、志望理由で落とされますけどね。」
カチョー「しかし、誰だ?こんなふざけた名前を考えたヤツは?」
コウ「アパートのオーナーは『原色真黒(はらいろまぐろ)』32才、7年前に、このアパートを買い取って、この名前にしたみたいですね。
それまでは、住人もほとんど居なくて、前のオーナーが売りに出したのを、買い取ったみたいです。
他にも何棟か、アパートを所有してますね。全部満室で埋まってますよ。
あと『白原不動産(しろはら)』ていう、不動産もやってます。」
カチョー「かなりのやり手みたいだな、おんぼろアパートを買い取って、すぐに満室とはな。」
コウ「そりゃあ、満室にもなりますよ。他の物件に比べたら、かなり格安ですからね。半額以下ですよ。」
特子「そうそう、私もその『白原不動産』に「安っいアパートを探して!」って言ったら、『プリンスホテル』を紹介してくれたんだもん。」
マイ「『プリンヌホラノレ』ね。
コウ「この『原色真黒』は、ただの不動産屋だけじゃないんですよ。
詐欺被害者の救済もしてます。詐欺でお金を騙し取られた人達に、アパートを格安で提供して、さらに仕事の無い人には、アルバイトの斡旋までしてるみたいなんですよ。貧乏学生にも人気の物件ですね。」
ミル「へ~、立派な人じゃない。」
カチョー「特子は、この『原色真黒』には会った事あるのか?」
特子「ううん、管理人さんが、全部やってくれたから。」
コウ「この人が管理人です。101号室の『上部武夫(うわべたけお)』26才、大学院生ですね。」
マイ「あらイケメンじゃない。」
特子「そうなんですよ。イケメンで優しくて、アパートのみんなからも信頼されてるんですから。」
コウ「みたいですね。真面目で人当たりも良い、近所の集まりにも、ちゃんと顔を出す。近所の評判もいいみたいです。
事件の時も、捜査に協力的みたいでしたよ。」
カチョー「なんか匂うな。」
ジミー「俺もだ、カチョー」
マイ「私も何となく匂っちゃうな。」
ミル「私も。」
特子「そうですよね、何か匂いますよね。」
カチョー「おい!特子!お前はちゃんとボケろよ~!
「え~!?ちゃんと毎日お風呂に入ってますよ~!」とか、「下着も毎日変えてます!」とか。」
特子「も~!めんどくさいな~…
でも、カチョー、『匂う』って、何がですか?」
カチョー「この、管理人のイケメン野郎だよ。刑事の勘が何かあるってな。イケメンで頭が良くて、真面目で人付き合いもいい、何か裏があるに違いねえ!」
ミル「それって、ただの『やっかみ』じゃないの?カチョー。」
カチョー「特子、他にはどんな人が住んでいるんだ?」
特子「私の隣は『岡 三代(おかみつよ)』さん、中国人なの。日本語がまだよくわからないみたいで、自分の名前も『みつよ』じゃなく『さんよ』って読んじゃうの。
その隣が『詞書 巧(ことばたくみ)』大学生、そのまた隣が『塚井 走(つかいそう』この人も大学生。管理人さんの後輩って言ってた。
私の下の部屋が、おじいさん夫婦で『碇 益三(いかりますぞう)と満寿代(ますよ)』さん。
その隣が、亡くなった『宇良切 真下(うらぎりました)さん。
その隣が、102号室の『市野丸仁井(いちのまるにい)』さん。40才くらいかな?
そして、その隣が管理人の『上部武夫(うわべたけお)』さん。
みんな仲良しなのよ。よくみんなでバーベキューしたりしてるの。」
コウ「特さんは、呼ばれた事、無いでしょ。ちゃんと見てるんですから。」
カチョー「なんだ、特子だけ仲間外れか?」
特子「ち、違いますよ、カチョー。たまたま私の居ない時にするだけです。」
マイ「それって、わざとじゃないの~。特ちゃん、よく食べるから。」
特子「そんなことないですよ~、ここでアルバイトを始める前までは、一緒にバーベキューをしてたんですから。和気あいあいなんですよ。」
カチョー「年齢もバラバラで話が合うのか?」
特子「みんな、真黒さんの紹介の仕事をしてたから、共通の話題はあったんじゃないかな?
私も「アルバイトしないか?」って誘われたんですけど、ほら、私『勉強』が忙しかったから…」
コウ「どうせ、アニメとドラマでしょ?」
特子「ち、違うわよ!勉強の合間に見ていただけよ。」
ミル「どっちが合間だったんだか…」
特子「ミルさんまで~…」
カチョー「特子がここでアルバイトを始めてから、仲間外れにされたって訳か、ちょっと気になるな…コウ、住人達を調べられるか?」
コウ「任せてくださいよ。今、調べますね。」
ミル「私も不動産関係の人に聞いてみるわ。」
30分後……特子、買い出し中…
コウ「カチョー、妙ですね、この人達、どこで働いているのか、まったくわかりませんよ。
でも、毎月口座にはお金が振り込まれています。
それから、他のアパートも調べてみたんですが、管理人が、みんな20代で若いんですよ。そして、その管理人だけは、多額の給料を貰ってます。多い時は百万単位ですよ?」
カチョー「おいおいおい、アパートのオーナーってそんなに儲かるのか?いくら不動産やってるからって、バブルじゃ無いんだから…」
コウ「毎月1回、真黒のマンションに管理人達が集まって、ミーティングをしてるみたいです。
ちょうど『事件』のあった日も『上部』は真黒のマンションに泊まっていることになってますね。」
ジミー「ウラは取れているのか?」
コウ「マンションの管理人が「数十人の若者が真黒の部屋に来た」と証言してるみたいなんですが、その中に『上部』が居たかどうかまではわかりません。」
カチョー「事件当日の他の住人は?」
コウ「死亡推定時刻が、午前2時から4時ですからね。全員『寝てた』って言ってます。
まあ、特さんだけは起きてたみたいですけど…」
ミル「カチョー、カチョー。」
カチョー「お、ミル。そっちはどうだった?」
ミル「どうもこうも、あの真黒って男、とんでもないヤツみたいよ。
ほら、あの全国的な詐欺グループがあったでしょ?」
ジミー「ああ、なかなか尻尾を出さないから『モルモット団』って呼ばれてたよな。」
カチョー「その詐欺グループと、何か関係があるのか?」
ミル「関係もなにも、あの真黒がボスじゃないか?って噂なの。」
カチョー「何!それじゃ何か?各アパートが、まるまるアジトになってるわけか?」
ジミー「考えられない事もないな…管理人をリーダーにして、住人にそれぞれの役割りを分担させればいいんだからな。近所の評判も良ければ、怪しまれる事も無い。」
カチョー「もし、そうなら、強盗に殺された『宇良切』も仲間だったって事になる。」
マイ「もしかして、仲間割れ?」
ミル「一課も真黒のマンションに踏み込む考えみたいなんだけど、管理人達が今度いつ集まるかわからないみたい。毎月1回なのは確実なんだけど、日にちがバラバラでね。あと、決定的な証拠も掴めていないみたいよ。」
カチョー「そうか…とりあえず、この事は『特子』には内緒な。アイツの事だから、住人につい話してしまうかもしれない。
しかし、特子のアパートが、詐欺グループのアジトだったとはな…」
特子「どうしたんですか?みなさん集まって?
アジトがどうかしたんですか?」
カチョー「と、特子?!お前、いつからそこに居た!?」
特子「たった今、帰って来たんですよ。はい、みんなのお弁当。
で、アジトが何か?」
カチョー「い、いやな、アジとサバならどちらが美味しいかなって、言ってたんだ。」
特子「アジかあ!南蛮漬けが美味しいんですよね~、小さい頃、豆アジを南蛮漬けにしてたのを、頭から丸かじりしてました~。フライもいいなあ。」
マイ「あたしはサバかな?」
特子「サバもいいんですよね~。シンプルに塩焼きとか…煮付けもいいですね~。あ~、お弁当『焼き魚弁当』にすればよかった~…」
カチョー「ま、まあ、とりあえず、昼メシにするか。特子、お茶入れてくれ。」
特子「は~い。」
カチョー「特子、ついでに、管理人の『上部』が毎月1回、真黒のマンションに泊まってるのは本当か?」
特子「うん、本当ですよ。先月は15日だったかな?」
ミル「特ちゃ~ん、私にもお茶くれない?ついでに、その管理人が居ない日って、他の住人は何してるの?」
特子「管理人さんが居ない日は、みんなも仕事が休みみたい。部屋からは出て来ないなぁ…」
コウ「特さん、僕にもお茶をお願いします。ついでに、今月、管理人さんが真黒のマンションに行く日は?」
特子「え~っとね、確か今週の木曜日、18日。」
マイ「特ちゃんの入れたお茶ってめちゃくちゃ美味しいのよね。
ついでに、なんで知ってるの?」
特子「隣の『岡』さんが、仕事休みだから、一緒に晩ご飯食べに行かないか?って誘われたの。」
コウ「特さんの今日の下着は、最高に似合ってますよ。ついでに、特さんが、お母さんにお金を送るとき、どうやって送ってました?」
特子「お母さん、隣の『岡』さんと、友達みたいで、「隣の岡さんに渡してくれ。」って。」
ジミー「ついでに、お前が運命の人とぶつかったあの日、上部はアパートに居たのか?」
特子「はい、居ましたよ。電気がついてましたから。」
コウ「特さんは、プロポーションが良いから、どんな下着でも似合いますよね。ついでに、携帯を貸してくれます?」
特子「エヘヘ、もう、しょうがないな~。ちょっとだけだぞ。」
マイ「あたしも、前々から思ってたんだ~、特ちゃんて、肌ツヤがキレイだなって。
ついでに、コウちゃんは何してるの?」
コウ「特さんみたいな、綺麗な女性を放っておくなんて、世の中の男性もどうかしてますよ。ついでに、特さんは、お母さんとの会話を録音してるんですよ。」
カチョー「俺がもう20年才若かったら、特子にアタックしまくりなんたがな。
ついでに、録音してどうするんだ?」
特子「もう、カチョーったら、奥さんが居るでしょ、ウフフ。
落ち込んだ時に聞いてるの。お母さんの声を聞くと、元気になるから。」
コウ「『平成最後の美少女』って特さんの事だったんですね。
ついでに、これが、その音声です。
『ワタシ、ワタシ、オカサンヨ、おカネ送て。」
カチョー「ついでに、『カタコト』だな。」
ジミー「ついでついでに、たぶん隣の『岡』って女だな。」
コウ「特さんついでに、この音声で引っ張りますか?」
カチョー「特子の素敵な笑顔が毎日見れて、俺達は幸せ者だな。
ついでに仕事を始めるか。
ミル、ついでに今の話を一課の『ゆう』に伝えてくれ。くれぐれもそれとなく、ついでにな。」
ミル「私も特ちゃんの若さが羨ましいわぁ。わかったわカチョー、ついでに伝えておくわ。」
数日後……
「ガチャ」
コウ「おはようございます、カチョー。
あれ?また泊まったんですか?ジミーさんも、おはようございます。」
カチョー「あ、ああ。まあな…」
ジミー「フフフ…もう、すっかり秋だな…」
コウ「カチョー、新聞見ました?『全国的詐欺グループ「モルモット団」ついに摘発!!殺人容疑で、さらに1人を再逮捕!』
やっぱり仲間割れだったんですね。」
カチョー「ああ、『宇良切』がグループを抜けると言い出して、さらに口止め料を取ろうとしたらしいな。
そして上部が、真黒に相談したら、「始末して死体も見つからないようにしろ」と言われたらしい。でも、ちょうど特子が騒ぎを起こしたから、仕方なく『強盗』にみせかけたんだとさ。
うまい具合に、特子がぶつかった男が犯人として捜索されたからな。」
コウ「『詐欺グループ』に『殺人犯』また一課の株が上がりましたね。」
カチョー「まあ、いいんじゃないの、俺達は『話のついで』だったんだし。」
マイ「特ちゃんのアパートにも家宅捜索が入ったんでしょ?」
コウ「あ、マイさん。おはようございます。
全員、逮捕されましたからね、特さんだけは、玄関前で「まだ試合は終わってな~い!」とか叫んで抵抗してましたけど、排除されてました。」
ミル「詐欺グループのアジトだったんだから、もう住めないわよね。」
カチョー「ああ、警察に差し押さえられたからな。」
マイ「カチョー、特ちゃん、どうなるの?」
カチョー「まあ、例の『靴』も見つかって、持ち主を特定したところ、『パン女』の都市伝説を確かめに来ただけだったらしい。
まさか、本人に出会って、足を掴まれるとは思ってなかったみたいで、パニックになって、逃げ出したみたいだがな。
それに、警察も特子が『靴』を持っていたから、誤認逮捕をしなかったわけだし、下手すりゃ冤罪になってたかもしれん。
と、まあ、いろいろの事情で、特子にはおとがめ無しだ。」
コウ「で?その特さんはどこですか?まだ、来てないんですか?珍しいですね。」
カチョー「あ!そうだ!」
「ドンドンドン!」
カチョー「コラ!特子!いつまで寝てるんだ!いくら通勤が無くなったからといって、夜更かしするなとあれほど言ったろうが!警視総監にいいつけるぞ!」
「ドタッ!バタバタバッタバッタバタバタ…」
「ガチャ!」
特子「お、おっはようご、ございます。みなさん!」
カチョー「『おはよう』じゃねえ。お前が1番遅いんだよ。せっかくミルが部屋を空けてくれたっていうのに…」
ミル「いいのよ、特ちゃん。友達の社長が、マンションの部屋を買ってくれたから。」
カチョー「特子、早速だが、みんなにお茶を入れてくれれか?」
特子「は~い!」
マイ「でもさぁ、特ちゃんも詐欺の被害者でしょ?お金は帰って来ないの?」
カチョー「あ、あれは『モルモット団』は関係なかったんだ。隣の『岡』って女が勝手にやったんだと。」
コウ「え?勝手にやったって?」
カチョー「『岡』は『宇良切』と組んで、見張り役をしてたらしい。
まあ、日本語がカタコトだからしょうがないんだけどな、『見張り役』ってのは1番手取りが少ないんだと、だから他のヤツの真似をして、特子に電話をしたってわけだ。」
マイ「でも、よく特ちゃんの番号を知ってたね。」
コウ「あ、特さんは、出会った人にところかまわず番号を教えてますよ。かかって来たら、電話帳の友達リストに入れる為に。
でも、特さんのホルダーに『岡』さんの名前はなかったんだけどな…」
カチョー「たぶんその答えは、この前の『録音』だろうな、『岡』は、詐欺の事を知らないから、本名を名乗って、特子に電話したんだ。「ワタシ、ワタシ、オカサンヨ」ってな。それを特子が本当のお母さんと間違えて、そのまま『お母さん』と登録したんだろ。」
ミル「えっと、その場合って、どうなるのかしら?」
コウ「『岡』さんが、特さんに『お金を頂戴。』って言って、『はい、いいですよ。』って渡しただけですね。」
マイ「特ちゃんの勘違い?」
カチョー「それに、金額を聞いたら、全部で3万2千円だと。」
ミル「まあ、簡単に人を信用しちゃダメっていう勉強代かしら。」
カチョー「これに懲りたら、特子もホイホイと『お金』を他人に渡さないだろ?」
コウ「それはどうでしょう?特さ~ん!」
特子「なんです?コウさん?」
コウ「特さんにピッタリの下着を見つけたんです。買ってきますから、お金をくれます?」
特子「も~、コウさんたら~、しょうがないなあ~、はい、これで足りる?」
コウ「ね、カチョー。」
カチョー「と~く~こ~!お前は財布没収~!!」
特子「え!え?なんで~~!?」
ジミー「今日も空が笑ってやがる…フフ…」
おしまい
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