〔特別課捜査班!特子!〕

じんべい

第1話〔特別課捜査班!〕



第1話〔特別課捜査班!〕



私の名前は「志賀内 特子(しがないとくこ)」アニメと刑事ドラマが大好きな29才、独身。

今年の4月に、その実力を買われ、新しく警視庁内部に設置された、この『特別課捜査班』通称『特課』に勤務する事になった。


それから半年、慌ただしい毎日を送っていた。


ちなみに、この班の人は私以外、すべて『課長』の役職を持つエリート集団なのだ。




カチョー「お~い!特子、この資料をコピーしてくれ~!」


彼は『敬志 壮寛(けいし そうかん)』この班の課長だ。

56才、通称『カチョー』少し頭が薄くなってきてるが、なかなかダンディーなおじ様だ。なんと、元捜査1課の課長をしていた事もあるらしい。



ジミー「今日も、空が泣いてるな…」


彼の名前は『次見 大須樹(じけん だいすき)』通称『ジミー』35才、

いつも窓際で、わざわざ折り曲げた電子煙草を吸ってるハードボイルド。課長代理の肩書きを持つ。

黒の上下スーツ、黒のネクタイに黒のハットは彼のトレードマークだ。

たぶん『あの人』を意識してるのだろうが、本人は一貫して否定している。



コウ「特さ~ん、この間の事件の資料を持ってきて~。」


望樹 太陽(のぞき たいよう)25才、この班の中で1番若い、ネット犯罪のスペシャリスト、通称『コウ』、課長補佐だ。

黄色い縁のメガネをかけ、長くもないのに髪を後ろに束ねている。



マイ「特ちゃん~、一緒にお茶しよ~。」


彼女?彼は『進舞入夏(しんまい いるか)』一見女性に見えるが、実はおネエだ。

警視庁初の女性課長誕生かと思われたが、カミングアウトによって、その快挙は失われた。

課長兼係長、39才。通称『マイ』私より綺麗なのがなんだかシャクだ。



ミル「特ちゃん~、トイレの電球が切れそうだったよ~。」


私以外では紅一点、本物の女性。彼女は『杏仁目 美留(あんにんめ みる)』さん、35才、正真正銘の警視庁初の女性課長になった人だ。どこの課なのかは知らないが…

この班では、『課長監査役』をしている。愛称は『ミル』さん。コスプレが趣味で、ジミーさんとは同期らしい。私の短髪癖っ毛とは違い、黒のロングストレートヘアーは私の憧れだ。



カチョー「特子~!男子トイレの紙がなかったぞ~。」


コウ「特さ~ん、ボールペン拾って~。」


マイ「特ちゃ~ん、アールグレイとレモンティーどっちにする?」


ジミー「お、やっとの空が微笑んで来やがった。」


ミル「特ちゃん、見て見て、このコスいいでしょ。この前のイベントよ。」


カチョー「お~い!特子~!」


コウ「特さ~ん!」


ジミー「ふ~…フフフ…」


マイ「特っちゃん~~!」


ミル「特ちゃん、特ちゃん!」


特子「……ぐぬぬぬぬ……だ~~~!!!!

一度に呼ばないでください!! 呼び方もバラバラだし、せめて呼び方だけでも統一してくださいよ~!」


カチョー「じゃあ、女性だから「さん」付けで『特子さん』?」


コウ「それだと堅苦しいですよ。『特さん』でいいんじゃないですか?」


マイ「え~、可愛くな~い!」


特子「『特さん』は却下で…」


ジミー「そら…」


特子「名前、まったく関係ないじゃないですか!真面目に考えてくださいよ!」


コウ「『特さん』でいいじゃん、普通でさ。」


特子「『特さん』は嫌なんです。小さい時から、『泣き虫特さん』とか『四の字特さん』とか呼ばれてたんですから。

だいたい『四の字』って何なんですか!」


カチョー「え?お前、あの『特さん』知らないの、超有名な元アナウンサーだぞ?」


特子「知りませんよ!そんな人、私はギり平成生まれなんですから!」


マイ「特ちゃ~ん、あんまそれ言わない方がいいよ。「私はもうすぐ三十路で~す。」って言いふらしてるようなもんだから。」


特子「あ~、もういいですよ、好きに呼んでください。」


コウ「そういえば、特さんて、制服着てませんよね。刑事でもないのに。」


カチョー「あ~、コウは途中から入って来たから知らないのか。

特子は警察官じゃないぞ、ただのアルバイトだ…う~ん、でもないか、警察官見習いのアルバイトだ。」


コウ「アルバイト~?警視庁ですよ、ここ。いいんですか?そんなことして。」


マイ「いいのよ、特ちゃんは特別なの、なんたって警視総監の紹介なんだから。あ、『けいしそうかん』って言ってもカチョーの事じゃ無いわよ。」


コウ「わかってますよ。カチョーの権限がそんなに偉いはずないじゃないですか。総監の親戚とか?あ!まさか隠し子!」


特子「やめてください!ちゃんとした理由があるんです!」


コウ「冗談、冗談ですよ。特さんの生い立ちは、全て調べてありますから。ハハハハ。」


ミル「コウちゃん、またやったわね。」


コウ「個人的な趣味ですよ。外には漏らしません。」


特子「ミルさん、「またやった」って何を?」


ミル「コウちゃんはね、他人のプライベートを覗くのが大好きなのよ。コウちゃんに秘密は出来ないと思ってね。」


特子「は、はあ~…」


コウ「特さん、新しく買った『チェックの下着』なかなか似合ってましたよ。」


特子「え?あ?そう?ストライプと迷ったんだけとさ、チェックの方が可愛く見え…て~~~!!

な、なんで知ってるのよ~!一昨日買ったばかりなのに?!」


コウ「街中の監視カメラは、全部僕の目だと思っててください。望遠機能で、特さんのアパートも、しっかり警備しますからね。」


特子「それって、しっかり覗きますって言ってるようなもんじゃないですか!カチョー、どうにかしてくださいよ…」


カチョー「まあまあ、四六時中守られてると思えばいいじゃないか、実際コウがここに来てから、空巣や女性への暴行被害が減っているんだから、

匿名の電話が増えたんだと。

犯人逮捕にも繋がるから、実質コウは野放し状態だな。ハハハ。」


特子「も~!お風呂だけは覗かないでくださいよ!」


コウ「別に特さんの裸が見たい訳じゃないですから、見たくもありませんし。」


特子「ぐ~~~…なんだかそう言われると腹が立つ…」


コウ「そんな事より、なぜ特さんが、ここに居るかですよ。いくら調べてもわからないんですよね。」


ミル「この事は、どの資料にも載っていない『トップシークレット』なのよ。」


マイ「なんでも特ちゃんが、警視総監の未曾有の大惨事から身を呈して救ったんだって。」


コウ「未曾有の大惨事?でも、そんな大事件なら、どこかの資料に載っててもいいんじゃ…」


ミル「警視庁トップも知られたくない過去があるって事よ。」


コウ「どんな大事件だったんですか?」


カチョー「あれは今年の4月の事だ…警察学校の合格発表の日にな、4回目の不合格が決定した特子が、トボトボと歩いていたんだ。」


特子「(本当は5回目なんだけどな…エヘヘ黙ってよ。)」


コウ「あれ?カチョー、違いますよ。特さん、5回落ちてますよ。」


特子「だ~~~!言わなくていいから、そんなこと!」


カチョー「お前な…こんな事をサバ読むなよ…」


特子「だって~~…」


カチョー「ま、まあ、特子が歩いていたんだな。ドボドボと…」


特子「カ、カチョー!変わってる!変わってる!何か漏れてる!漏れてますよ~!!」


カチョー「え?ああ、悪い悪い…間違えた。

その日はな、『警視総監』が合格者にねぎらいの言葉を送るという、サプライズを計画していたんだ。


ただ、マスコミも警視総監が現れるかもしれないとの噂を聞きつけ、入り口には大勢の報道陣が集まっていたんだよ。


警視総監は、警察のアピールに丁度いいと、報道陣の中を通り、合格者達に姿を見せようとした瞬間、特子が突然現れ、警視総監に体当たりを食らわしたんだよ。」


コウ「え!?総監に体当たり?な、なんて事を!…でも、それのどこが大惨事なんですか?っていうより、特子さんが暴漢じゃないですか、逮捕されなかったんですか?」


カチョー「まあ、話は最後まで聞け、もし、あのまま警視総監があと1歩でも踏み出していれば、間違いなく『犬のウ○コ』を踏んでいたそうだ。

もし、そんな事になってみろ、今の世の中『SNS』で拡散されて、とんでもない事になってたかもしれないだろ。『ウ○コまみれの警視総監、臭い挨拶!」とか…カメラも何台かあったしな。


その危機を特子が身を呈して救った訳だ。まあ、特子の方がウ○コを踏んで、滑って転んでウ○コまみれになったんだがな…」


特子「そうですよ!スーツが一着、台無しになったんですから!

(あのときは報道陣に突き飛ばされて、飛び出しただけなんだけど黙ってよっと。)」


コウ「でも、総監の周りにはSPも居たんでしょ、よく総監の所まで行けましたね?」


カチョー「な?普通そう思うだろ?

そこが特子の凄い所なんだ、なんでも見てたヤツによると、蝶が舞うような華麗なステップで、4人居たSPの間をすり抜けて総監の所まで行ったんだと。誰も特子には触れる事さえ出来なかったそうだ。

他には、「まるで超一流のダンスを見てるようだった。」って言うヤツも居たぐらいだ。」


コウ「凄いじゃないですか、特さん。ダンスとかやってたんですか?そんなデータのカケラも無いんだけど…」


特子「エヘヘ、ま、まあね。人間、何か特技があるものなのよ。

(本当は足がもつれて、転ばないように耐えてただけなんだけど…)」


カチョー「それで警察学校のお風呂を借りて、着替えて帰ろうとした時なんだよな。警視総監が直々に頼みに来たそうなんだ。「新しく部所を増やすから、そこで働かないか?」とな。

「さすがに警察官にするわけにはいからないから、アルバイト的な見習いって感じで。」だとさ。」


コウ「まあ、特さん的にはラッキーでしたよね。5回も落ちているんだから、普通には警察官になれなかっただろうし、それにもうすぐ三十路だし…」


特子「まだ20代です!」


コウ「そもそも、なんで警察官になろうと思ったんですか?」


マイ「あ、あたしも知りたい。」


ミル「そういえば、聞いたこと無かったわね。ねえ、なんでなの?」


特子「え~と、それはですね…昔、私が暴漢に教われそうになった時、助けてくれた刑事さんが居たんです。

男に追い掛けられ、つまずいて転んで、「もうダメだ!」って思った瞬間、その人が現れ暴漢と格闘し、追い払ってくれたんです。」


コウ「(ん?そのまま逃がしたの??)」


特子「ベージュのヨレヨレのコートを着ていて、「大丈夫か?」って。

雨でずぶ濡れの私に、着ていたコートを優しく掛けてくれたんです。」


コウ「(いつから雨になったんだろう?)」


特子「そして、2人は警視庁で運命的な再開をするんです。やがて2人は恋に落ち、幸せな日々を送るんです。しかし!そんな平和な日々も続くはずもなく、凶悪犯を追い掛けていた彼は、犯人に拳銃で打たれそうになるんです!

その時、私が彼を庇って凶弾に倒れました。薄れ行く意識の中、優しい彼の腕の中で生き絶える……そんな警察官に、私はなりたい…」


全員「あ…駄目なやつだ、これ…」



と、その時!


「ピーー!人質監禁事件発生!人質監禁事件発生!係りの者は、至急現場に急行せよ!!」


ジミー「事件だ!カチョー!」


カチョー「待て!慌てるなジミー!」


ジミーは事件が起きると、一番まともな人間になるのだ。


カチョー「コウ!詳しい状況はわかるか?」


コウ「ちょっと待ってくださいよ~…っと、はい!出ました。

場所は駅前ですね。刃物を持った犯人が人質を捕まえて、何やら叫んでます。

あれ?この人質って…」


マイ「ん?なになに、人質がどうしたの?

あ!この人『煌 流星きらめきりゅうせいじゃない?」


カチョー「なんだそりゃ?今、流行りのキラキラネームか?」


特子「違いますよ、カチョー。平成最後のアイドルと言われている、『煌 流星』ですよ。最近のドラマにも出ているんですよ!知らないんですか?」


カチョー「あまりテレビは見ないからな~。」


ミル「あら~、奥様にテレビを見せてもらえないの間違いじゃないんですか~?」


カチョー「オホン!そ、そんな事はどうでもいい!これだけ大きなヤマだ、捜査課のやつらだけでは手に負えまい、すぐに応援の要請が来るはずだ。」


次の瞬間!


「プルプルプル、プルプルプル…」


内線のベルが鳴った!


マイ「はい!特課!はい!はい!了解しました!すぐに向かいます!

カチョー!応援要請です!!」


カチョー「よし!みんな行くぞ!!今回はガイシャが有名人だ!気を引き閉めていかないと、とんでもないことになるぞ!」


全員「了解!!」


カチョー「あ、特子は留守番な。」


特子「え~!?私も行きたいです~!流星見たいです~!」


ジミー「ダメだぜ、特さん。現場は危険だ、素人は近づいちゃならねぇ。」


マイ「そうよ特ちゃん、ここで大人しく待っててね。」


ミル「お土産買って来るから、あ!写メ送るね。」


特子「は~い。みなさん気を付けて下さいね。ムリしちゃダメですよ。」


コウ「ムリなんかしませんよ。痛いの嫌いだし…」


ジミー「フッ…任務にムリは付き物なんだぜ、コウ。」


カチョー「ほら、行くぞ!みんな!

特子!絶対この部屋から出るなよ!わかったな!」


特子「は~~い…」



15分後…現場にて


捜査員「ゆうさん、野次馬がスゴすぎます…我々だけでは抑えきれません!」


ゆう「もう少しの辛抱だ、応援は要請してある!」


この男、捜査1課の課長を努める『古事 雄造こごとゆうぞう』通称『ゆうさん』

カチョーと同期なのだが、カチョーが1課に居たとき、カチョーの部下だったらしい。今や立場は逆転し、何かと『特課』を目の敵にする。

が、基本的には仲が良い。


カチョー「悪い、ゆうさん、遅くなった。」


ゆう「ん!?なんで『特課』がここに居る!」


カチョー「なんでって、応援要請を受けたからじゃないか。確かにこりゃ大変だな…

よし、お前達、手分けして野次馬を抑えるぞ!」


全員「了解!」


そう!『特課』の仕事は、主に『お手伝い』なのだ!時には『迷い子探し』、時には『交通整理』、『検問』など、人手が足りない時は颯爽と現れる!仕事を選ばない!それが『特課』なのだ!!



特子「みんな現場に着いたかな?私も早く立派な刑事になって、彼の腕で殉職しなくちゃ。フフフ…

あ!事件の事、ニュースでやってないかな?」


「ピッ」


テレビ「こちら現場です!凄い人が事件を見ようと押し寄せています。」


特子「うわ~!凄い人…あ!みんなが写ってる!ジミーさんてば、あんなにムリはしないでっていったのに…

私も『生』流星さん見たかったな~…

ん?!こ、このブレスレットは!!?…

な、なんで彼がこれを?行って確かめなきゃ!染五郎!留守番お願いね!!」


染五郎とは、特子がいつも机に置いてある『クマ』のぬいぐるみの事である。



コウ「ジミーさん、そこはムチャだ。そんな人数押さえきれる訳がない!!」


ジミー「抑えてやるさ!この命が尽きようとな!!」


マイ「このやろう!!押すなっつってんだろ!(男声)」


ミル「あ~!服が汚れちゃった~!…」



カチョー「ゆうさん、犯人は誰だい?」


ゆう「生真面目 一郎きまじめいちろう」、前科11犯の指名手配犯だ。5年もの間、どこかに潜伏してたんだが、いきなり現れやがった。

人質は見ての通りだ、『煌 流星』、本名『真田 徳之助』」


カチョー「おやまあ、なんとも風流な名前だな。」


コウ「違いますよ、カチョー。本名は『山田 次郎』ですよ。」


ゆう「なんだと!?公式ホームページでは『真田徳之助』だぞ?」


コウ「よくある手ですよ、キラキラネームが実は古風な名前だったと、ギャップ萌えってやつです。」


カチョー「『山田次郎』か、確かにツッコむ所もないな、『太郎』ならどうにかなるんだけどな。」


ゆう「ま、まあいい。改めて…被害者は、本名『山田 次郎』21才…」


コウ「あ、それも違います。31才です。」


ゆう「はぁ~??31~??10才もサバよんでいたのか?」


マイ「ヤッパリね、どうもおかしいと思ってたんだよね。デビュー当時のキャッチコピーが『ちょっと大人の19才』だったからね。」


ゆう「なにが、『ちょっと大人』だ!その時点で三十路手前じゃないか!」


ミル「それにアイツ、良くない噂も聞くわよ。」


ジミー「アイツ確か、共演した若手女優や、アイドルを片っ端から食ってやがるんだってな。」


ゆう「お、お前ら、野次馬を抑えるんじゃなかったのか!?」


コウ「それに、アイツには良くない仲間もいるとか…」


ゆう「確かに薬物絡みで、チョイチョイ名前が挙がるんだが、上からの命令でな…最後まで捜査出来ない…」


カチョー「もう、ほっといたら?」


ゆう「バカ!そんな訳には行くか!警察としてのメンツはどうなる!」


ジミー「犯人からの要求は無いんですか?」


ゆう「おい!犯人からの要求は何だ!」


捜査員「はい!1ヶ月前に起こった『女性の列車飛び込み自殺』の再捜査です。」


ゆう「なんだと?自殺の再捜査?」


コウ「この記事ですね。『多忙な仕事のストレスに耐え兼ね、女性がホームに飛び込む』

ん?この女性、声優の卵ですって。

少し前の映画で、流星と共演あり。」


カチョー「おいおいおい、何だか怪しくなって来たんじゃないかい?」


マイ「カチョー!犯人が何か叫んでます。」


一郎「頼むよ刑事さん、コイツが彼女を突き落としたんだよ。

俺はどうなってもいいからよ、もう一度調べてくれよ!…」


コウ「って言ってますが?」


ゆう「バカ!相手は凶悪犯だぞ、鵜呑みに出来るか。」


流星「おい!警察!早くコイツをなんとかしろ!俺達が税金払って、お前達を食わしてやってるんだぞ!!この能無しの税金泥棒が!!」


狙撃隊「古事課長どうします?今なら人質に当たるかもしれませんが、撃てます!」


ゆう「いや待て、もう少し様子を見よう。」


ジミー「カチョー、どうします?………カチョー?カチョー??」


カチョー「あ…あ…あいつ…なんであんな所に…」


マイ「カチョー、どうかしたんですか?」


ミル「ん?あれ、特ちゃんじゃない?」


マイ「え?どこ?」


ミル「ほら、犯人の後ろの茂みの中…」


コウ「あ!本当だ。特さんだ。」


ゆう「おい!壮寛!なんであの女が居るんだ!現場には連れて来るなと、あれほど言っただろうが!」


カチョー「いや~、部屋から出るなと言ったんですがね。

コウ、あいつの携帯に電話出来るか?」


コウ「出来ますが、犯人に気付かれませんか?」


カチョー「大丈夫だ、いつも仕事中はマナーモードにしておけと言っているからな。」


コウ「じゃあ、かけますよ?」


「……おかけになった電話番号は電波の届かない所にいるクマか、電源が入っていないクマ、ご用のあるクマは、ピーーという発信音の後にメッセージをお入れ下さい。ピーー…」


カチョー「あ、あいつ~…あれほど語尾に『クマ』を付ける時には『メッセージを入れるクマ』にしろと言ったのに…『ご用のあるクマ』って、クマが電話するわけないじゃないか……まったく…」


ジミー「どうします?カチョー。このままだと犯人に気付かれますよ。」


カチョー「あいつ、友達からの電話やLINEもあるだろうに…」


コウ「それは大丈夫でしょう。特さんに友達は居ませんから。ほら、特さんの携帯の電話帳のホルダー。

人間は僕達5人だけですね、あとは実家と天気予報、時報、119に110番、サイトや店の番号でなんとか埋めようとしてますが、それでも50件ぐらいです。」


ミル「じゃあ、私の友達を登録してもらおうかしら?私のスマホ電話帳が一杯になって困ってたのよね。ちょうど良かった。」



ゆう「お、おい!どうでもいいから、早くあの女をどうにかしろ!アイツは1課にとって疫病神なんだからな!」


カチョー「仕方ない、あの方法でいくか。」


ゆう「何か策があるのか?」


カチョー「フフフ…俺達『特課』はな、いかなる状況でも連絡が取れるよう『ブロックサイン』を決めてあるんだよ!」


ゆう「ブロックサインだと!?なんでもいい、さっさとやってくれ!」


カチョー「特子…特子…お~い…お~い…」


特子「ん?カチョーが手を振ってる…

『難問・手・北?』なんできた?

こ、これはブロックサイン!」


ジミー「やったぞ!通じた。OKサインだ!」


コウ「ん?何だあれ?『田植え』?」


カチョー「いや、あれは『田』だ!次は『鹿』だな。『目』…」


マイ「次は…釣り?釣った釣った、おっとっと、生きがいい…?」


カチョー「あれは『鯛』だ!」


ミル「あ!見えなくなった…」


カチョー「違う!座ったんだ!」


コウ「ちょっと待ってくださいよ。後ろの監視カメラで見てみます。

あ!本当だ、正座してる。正座をして、何かを弾いてる?」


カチョー「あれは『琴』だな。」


ジミー「次は…スカート?フリフリ?ウッフン?」


カチョー「ガールだガール。女のコだよ。」


マイ「繋げて読むと、『田鹿目鯛琴ガール』?」


カチョー「『確かめたい事がある』って事か。」


コウ「カチョー、よくわかりますね…」


ミル「ほら、うちの課って、結構暇でしょ?あの2人よく『ジェスチャーゲーム』をして遊んでいるからね。」


コウ「え?でも冒頭で『慌ただしい毎日』とか言ってませんでした?」


ミル「カチョーはともかく、特ちゃんは、雑用をしながら、カチョーの相手もしなくちゃいけないからね…慌ただしくもなるわよね…」


ジミー「カチョー、今なら特子が、犯人を後ろから突き飛ばす事が出来るんじゃないか?」


カチョー「いや、危険過ぎる。特子は一般人だぞ…」


マイ「違うわよ、カチョー。特ちゃんは、私達の仲間、『特課』の一員よ!」


ミル「そうよ。特ちゃんならやってくれるわ!」


ジミー「カチョー、長引けば犯人も興奮してくる、特子が気付かれる前になんとかしないと…」


ゆう「頼む、壮寛!後ろから突き飛ばすだけでいい、今は『流星』…いや『次郎』が邪魔で狙撃が出来ない。もう少し前に出て来れば、横から撃てるんだ。」


カチョー「あれ?特子は疫病神じゃなかったっけ?」


ゆう「今回は特別だ。あの女に賭けてみる。」


カチョー「わかった。やってみよう。」


特子「あ、カチョーが出て来た。」


コウ「あ!特さんが何か言ってる!お腹を出した?」


カチョー「胴だ!」


マイ「ベロ?べー?」


カチョー「舌だ!」


ジミー「あ!撃たれて死んだ。」


カチョー「デス!(死)だ!」


ミル「手を叩いているわ?」


カチョー「蚊だ!」


コウ「続けて読むと、胴舌デス蚊。『どうしたんですか?』だ!」


マイ「凄い、ちゃんと通じるんだ。」



続けてメンバーは、カチョーのジェスチャーの解読を試みた。


マイ「ん?ガッツポーズ?頭がかゆい?で、後ろ?」


ミル「あれよあれ!バラエティーの『得する奴、損する奴』のキメポーズだわ!」


コウ「と、いうことは、2つのポーズの後ろだから、『損する奴』だ!


マイ「で、次は、怪しい動き?あ!何か取ってポケットに隠した!」


ジミー「スリじゃないか?」


ミル「さっきのと合わせて考えると『する奴』よきっと!」


コウ「あ!これは僕でもわかります!『これは置いといて』ですよね。

と、いうことは、『損する奴』から『する奴』を取るから『損』だ!」


マイ「次は~、指で5?で、あ・あ・あ・あ・あ …」


ジミー「5番目の『あ』は『な』だ。」


ミル「あ、座って正座した。」


マイ「琴ね『琴』。」


コウ「『歯』」


コウ「あ!これも『置いといて』ですよね?」


特子「そんな事は置いといて?」



一郎「おい!ジシイ!何踊ってんだ!早く再捜査するかどうか決めろ!コイツがどうなってもいいのか!!」


ゆう「おい!アイツの武器は、あの果物ナイフだけなのか!!」


捜査員「はい!短パンにタンクトップ!他に武器は所持してないかと!」


カチョー「なあ、ゆうさん。果物ナイフなら、2、3回刺されても死なないんじゃないか?もう帰ろうぜ。流星のヤツ、なんかシャクにさわるし。」


ゆう「バ、バカ!そんな訳にはいかないって言ってるだろうが!マスコミも来てるんだぞ!

ほら、あの女が指示を要求しているぞ!」


コウ「本当だ、あれは『カモン、カモン』ですね。」


カチョー「よし!続けるぞ!」


コウ「親指を立てて自分を指差し…『俺だぜ!』」


ジミー「『俺』じゃないか?」


マイ「座って、立って、座って、立って…」


ミル「『立つ』よ!きっと!という事は、俺立つ?あ!『俺達』ね。」


コウ「ヒラヒラ?蝶?でも、なんか「あっちに行け!」ってやってる。」


ジミー「蝶じゃなくて、『蛾』なんじゃないか?」


マイ「なんだろう?両手を広げて上に挙げたわ?」


ミル「あ!あのポーズは、あれよ、あれ!『ドラコンホール』の『ワテに『気』を分けてくれ~!』っていうやつ!」


コウ「じゃあ、『俺達が気を分けてくれ』?」


マイ「ううん、違うみたい…円を半分に切って?分けて置いたのかしら?」


ジミー「あ!『分ける』を置いといてだ!」


ミル「見て!また同じポーズ!『気を』集めて…発射!?じゃないみたい…」


コウ「発射!と見せかけて、腕を引いた!」


ジミー「そうか!『気を引く』だ!



一郎「『俺達が気を引く』?なんだ?」


コウ「でもジミーさん、僕達がわかるサインなら、真っ正面にいる2人にもわかるんじゃないですか?」


ジミー「ああ、その危険性はある…後は特さんとカチョーの絆の深さに賭けるしかない。



流星「なんだあれ?箱か?」


一郎「開けて中身を見た。な~んだ、な~んにも入ってな~い?」


流星「『空っぽ』だったって事か?」


一郎「そうだ!『空』だ!」


流星「次は…お尻?に、長いヒモ?」


一郎「シッポの事か?」


流星「俺の田舎では、『尾っぽ』だぜ。」


一郎「なるほど、『尾』だ!お前、なかなかやるな。」


流星「う、うるせえ!どんどん行くぞ!

上着を脱いだ?表、裏、表、裏、表?」


一郎「いや、違う、文章が合わない!前、後ろ、前、後ろ、『前』だ!


流星「あれは『歯』だろうな。」


一郎「あ、また前、後ろ、前だ。ん?今度は『後ろ』で止まった?」


流星「また箱かよ、ハイハイ、な~んにも入ってな~い…『空』だろ!」


一郎「ん?長い棒を持って?「ヤー!」って?


流星「難しいな…棒で何かを突き刺しているのか?」


一郎「それだ!『突く』だ!」


流星「ガラガラガラ~、こんばんわ~…ドアか?いや、横に「ガラガラガラ~」だから、引き戸?『戸』だ!」


一郎「お~~~~きな、車?ブ~~~ン、ピンポーン。止まった?あ!『バス』か!」



ジミー「しまった!犯人がサインを読んだ!徳さんは!?」


マイ「なんか徳さんは、すました顔で知らん顔してる。」


ジミー「なんてこった!特さんのやつ、最後の『突く』を『槍』と間違えた!

『やりとばす』じゃ意味がわからないから、無意識に『やり過ごす』に自動変換してしまったんだ。」


コウ「そ、それじゃあ、徳さんは『俺達が気を引くから、お前は後ろからやり過ごせ』って思ってるんですか?」


マイ「そういう事になるわね~…」


コウ「カチョー!これじゃ意味がないですよ!カチョー?カチョー?!」


ジミー「ダメだ!カチョーの体力はもう限界だ!」



一郎「俺達が気を引くから、お前は後ろから突き飛ばす?」だと!?

後ろ?」


コウ「あ!ダメだ!見つかった!」


一郎「なんだ!お前は!!」


特子「パンパン、ヒラヒラ、ん~…」


一郎「蚊蝶、晴″れた~…じゃね~!!!」


ジミー「カチョー!アイツ俺達のブロックサインを完全にマスターしてます。」


一郎「お前は、警官か!?奴らの仲間か!?」


特子「ウンウン、ほ~う…」


一郎「『いい絵』か?『イイエ』だろそれ!

あ~も~めんどくせ~!普通に喋れ普通によ!」


狙撃班「一課長!一般人が危険です。撃ちます!」


ゆう「ま、待て!そいつは!!」


「キラッ!」


特子「ハ!あれは狙撃隊!

止めて!!撃たないで!お願い!!話を聞いて~~~!!!!」


マイ「特ちゃんが万歳しながら狙撃班の前に飛び出して来たわ!」


ミル「あ、あれは!『風のタニシカ』!

主人公が仲間のタニシを助けるため、身を犠牲にするシーンよ!

でも、あの後…」


「バンバンバン!!!」


特子「グッ!…」「ドサァ~…」


コウ「カチョー!!特さんが撃たれました!!!」


ゆう「狙撃班!なぜ撃った~!!」


狙撃班「安心して下さい一課長、空砲です。威嚇です!」


ジミー「特さんが、起き上がったぞ。」


コウ「でも、特さん、足を引きずってますよ、肩も押さえているし、ケガはしてないんですよね?」


ミル「きっと『タニシカ』になりきっているのよ。」


コウ「は~…、カチョー、どうします?」


カチョー「仕方がない、ここは特子に任せるしかない。

特子も『特課』の一員だ。きっとやってくれる。」


マイ「それ、さっき私達が言ったやつよね。」


カチョー「頼んだぞ『タニシカ』…」



一郎「なんだ貴様!何か用か!?」


特子「貴方に用は無いわ!私が用があるのは、その右腕にはめている『ブレスレット』よ!」


一郎「こ、これがどうしたっていうんだ!」


特子「なぜ、それを貴方が着けているのかを聞いているの!」


一郎「こ、これは、彼女の…ミホの形見なんだ…」


特子「話は後ろで聞いていたわ。駅のホームで自殺したっていう…」


一郎「だから、自殺なんかじゃねえ!!こいつに突き落とされたんだ!」


特子「わかってるわ、貴方の言ってる事が正しい事ぐらい。」


一郎「あ、あんた…俺を信じてくれるのか?」


流星「な、なんだと!コイツは凶悪犯なんだぞ!指名手配犯なんだぞ!!」


特子「え!?貴方、御尋ね者なの?賞金首なの?!いくら?いくらの賞金がついてるの?

1億?2億?まさか、10億?ま、まさかまさかの15億ベリー!?」


コウ「特さん、キャラ変わってるし…」


ジミー「カチョー!一郎の意識が我々から反れてます。

私が突っ込みましょうか?」


カチョー「いや待て、ここは俺がつっこむ…」


コウ「カ、カチョー自ら?危険です!危険過ぎます!」


カチョー「ふっ…俺が一課に居た頃は、こんなこと日常茶飯事だったぜ…」


マイ「カチョー…」


ミル「気を付けて…カチョー…」


カチョー「行くぜ!フォローよろしくな!」


ジミー「わかった!援護は俺達に任せろ!」


カチョー「ふ~…、よし!ツッこむぞ!!3、2、1…

『ベリー』って、それ!『ワンパース』やないか~い!」


マイ「カ、カチョー?…」


カチョー「え?え?ま、間違った?『ワンパース』じゃなかった?」


ミル「は~~……」


カチョー「ジ、ジミー、フォローしてくれるんじゃないのか…」


コウ「何をどうフォローすればいいんですか……」


マイ「あ!特ちゃんが、一郎に近付いたわ!」



特子「その『ブレスレット』はね、『ガールズ&パンター』通称『ガルパン』の最終章第1巻の初回版100枚にしか付いて来ない貴重な物なの。

私にだって、手に入らなかったんだから~。

それを持ってるって事は、『ガルパン』が大好きだったのね彼女…」


一郎「ああ、ミホのヤツ、挫けそうになると、このブレスレットを見て呟くんだ。『電車に…』」


特子「『電車に通れないレールは無い!諦めなければ、必ず駅に着く!』でしょ?」


一郎「そ、その言葉…」


特子「この言葉はね、主人公の『北住 ミホ』が困難にぶつかった時に言うセリフなの。

『ガルパン』はね、『電車道』を通じて仲間と助け合い、ライバルと戦う物語なのよ、みんな電車が大好きなの。

きっと貴方の彼女のミホさんも、電車が大好きに違いなかったハズだわ。

そんな電車を大好きな人が、自分の血で電車を汚すわけないのよ!!自殺なら、きっと他の方法を選ぶハズなのよ!!!」


一郎「あ、姉さん…」


特子「私は貴方の話を聞くわ、よかったら話してくれないかしら。」



一郎「あれは1年ぐらい前の事だ、俺は逃げ回るのに疲れきっていたよ…


カネもねえ…食い物もねえ…雨の中、路地にしゃがみ込んでいた…

もう、どうでもよくなってな、このまま野垂れ死にもいいか。って思ってたんだ。

そんな時、アイツが傘を差し出して来てな、食いかけのパンを出しやがったんだ…

食いかけのパンだぜ…「そんなもん要らねえ!」って叩き落としたら、アイツ…道に落ちたパンを拾って泣きながら言うんだ…


ミホ「ゴメンね、今日はこれしか無いの…」


後でわかったんだが、アイツは声優になりたくて、パン屋でバイトしなが、学校に行ってたんだ。カネもギリギリで、毎日バイト先で貰う1個のパンを3回に分けて食うんだ。

わかるか!? そこまでして夢を叶えたかったんだ!

俺はそのまま彼女の部屋に転がり込んだ。部屋にはな~んも無かった、小さなテレビとベッド…とても若い娘の部屋とは思えねえ殺風景な部屋だった。

オーディションに落ちては泣いて帰って来てな、でも、このブレスレットを見ながら、


ミホ「大丈夫…大丈夫…きっと、きっと、レールは続いてる…」


って、呟くんだ。

それから半年ぐらい経って、やっと念願の役が貰えたんだ。あんたなら知ってるんじゃないか?『ヤジンガーZ』


特子「もちろん!知ってるわ。何十年も昔に、テレビでやっていたアニメを新しく作り直したやつよね。」


カチョー「あ~、俺、まだ見てないんだよな~…今日借りて見ようかな~。」


マイ「しっ!カチョー、うるさい。」



一郎「小さな役だった…ホンの一言「あ!」って驚くだけの役だった…

でも、アイツは凄く喜んでいたよ。「この作品がある限り、私の生きていた証が残るんだ。」ってな。

でも、アイツのデビュー作品が最後の作品になっちまったんだ。コイツのお陰でな~~!!!」


流星「お、俺が何したって言うんだ!」


特子「そういえば、貴方も確かゲスト声優で、その作品に出ていたわよね?」


流星「そ、それがどうした。頼まれたから、仕方なく出てやったんだ。」


特子「し、仕方なくですって~!!アニメをバカにしないでくれる!1つの作品を作るのに、何百人もの人が関わっているのよ!そのスタッフ全員の想いがこもっているの!!そんな事もわからない様な貴方にアニメに出る資格はな~い!!

貴方なんかこうしてやる!

えい!えい!えい!!」


コウ「カチョー、特さんが人質に砂をかけてますよ。」


カチョー「ふふ、いつも言ってるからな、「直接手は出すな、ケガでもされて訴えられたらかなわない。」とな。」


マイ「は~、今のご時世、世知辛いわね~…」



一郎「ね、姉さん!落ち着けって。」


特子「ふ~ふ~、ふ~…」


一郎「でも、その映画がそもそもの悲劇の始まりだったんだ。

映画が完成して、みんなで打ち上げをしてる時に、コイツに声をかけられたらしい。」


流星「デ、デタラメだ!そいつの女の方から声をかけて来たんだ!」


一郎「それは絶対無いんだよ!その日は2人で打ち上げをする予定だったんだ!少しだけ贅沢をして、外で食おうって…

でも、結局その日は帰って来なかった…次の日の昼前だよ、帰って来たのは…酷くやつれてな…

そして、俺が理由を聞く前に、


ミホ「エヘヘ、ゴメンね、急に仕事が入って、徹夜になっちゃった。」


って、笑いながら言ったんだ…

それから何日かに1回は帰って来ない日が続いた。


そして1ヶ月前、衝撃の告白をされたよ。「妊娠」したってな。


流星「どうせ、お前の子供だろうが!!」


一郎「それは絶対に無いんだよ!俺とアイツは、そんな関係じゃねえ!

確かに何度かヤりてえとは思ったけどよ。頑張ってるアイツの邪魔をしたくなかったんだ。

無防備に寝てるアイツを見てると、ムラムラして来やがるから、よく外に走りに行ってたよ。

たまに警官に声をかけられたけど、汗だくで走ってる俺を見て、


警官「頑張ってるね、あまりムリしちゃダメだよ。」


って励まされた。」



カチョー「その警官、懲戒免職ものだな。」



一郎「アイツは「貴方の子供よ…」って言うんだ。

「寝顔が可愛かったから寝てる間にしちゃった。」って。

そんな訳あるか!俺はほとんど夜は居なかったんだからな!」


流星「し、証拠でもあるのか!?ほ、他のヤツの子供かもしれないだろうが!!」


一郎「証拠ならこれだ!!この日記に、全部書いてあったんだよ!」



マイ「あ、タンクトップから『でっかい本』を出したわ?」


ジミー「どこに隠してあったんだ?」


ゆう「おい!ナイフの他には何も持っていなかったんじゃないか!?」


捜査員「は、はい!そのはずなんですが…」



一郎「アイツは几帳面でな、毎日日記を書いていたんだ。役作りに役立つと思ってな。

ミホが死んでから、アパートの管理人が「出て行ってくれ」って言い出した。

ミホの荷物を片付けていたら、ベッドの下から出て来たんだ。

全部書いてあるんだよ!

読んでやるよ!今、ここでな!」


特子「待って!女の子にとって、『日記』は秘密の宝箱なの、大勢の人の前で読むものじゃないわ。私が読んで、カチョーに報告してあげる。それでいいでしょ?」


一郎「そ、それもそうだな…おなじ女のあんたなら、ミホも恥ずかしくないだろうしな。」


特子「○月○日、明日は映画の打ち上げ、でも、早く帰らなきゃ、一郎君が待ってる。どこに食べに行こう、楽しみ。エヘヘ。


○月○日、打ち上げで流星さんに声をかけられた…ごめんなさい…一郎君、私、汚れちゃった…


○月○日、今日も呼び出された、何人も居た。写真も撮られてるし、逆らうと声優も出来なくなる…ツラい…でも、頑張ろう。レールはまだまだ続いている。


○月○日、妊娠した、どうしよう?一郎君に、なんて報告しよう…」



コウ「カチョー、特さん、声を出して読んでますよ、いいんですか?」


カチョー「し、しまった、つい聞き入ってしまった!」


特子「○月○日、明日はあの人に会って話をしなくちゃ、少しでもお金を出してもらわないと。

一郎君、私、負けないからね。私と一郎君のレールはいつも隣に並んでいるんだから…一郎君が居れば頑張れる。」

これが最後のページね…」


一郎「そうだよ…このページを書いた次の日に………

自殺するヤツが、『頑張る』なんて書くか?コイツに会いに行った後、コイツに突き落とされたんだ妊娠した事を知ってな!

アイツの無念を晴らして、俺もアイツの所に行くんだ!!」


流星「あ、あの女がデタラメ書いてるに決まってるだ!そ、そんなものがなんの証拠になるんだ!

凶悪犯のお前と、平成最後のアイドル『煌 流星』の話、どっちを信じると思うんだ!」



カチョー「平成最後の『サバ読みおじさん』な。


一郎「じゃあ、これはどう説明する?」


ミル「あ!また何か出したわよ?」


ジミー「あれは『ボイスレコーダー』」


ゆう「おい!どうなっている!もう本当に何も持っていないんだろうな!!」


捜査員「と、思います!!」



一郎「ミホはな、演技の勉強になると、日常を録音しまくっていたんだ。

もちろん、打ち上げの日にもな。聞かせてやるよ!今、ここでな!!」


特子「待って!もし、彼女が変な事をされていたらどうするの!?そんな彼女を人前に晒す訳にはいかないわ。まず私がイヤホンで聞いて確かめてみる。いいでしょ?それで。」


一郎「あ、ああ、イヤホンならさっきみたいに声は出ないだろうからな…」


「ピッ…」



流星「お疲れ様。ミホさん。凄くよかった。また共演したいな。」


ミホ「ありがとうございます。流星さん。」


流星「このあとどうするの?よかったら知り合いの店で飲まない?」


ミホ「すいません…この後、友達と約束があるんです…」


流星「『ガルパン』…」


ミホ「え?いま、『ガルパン』…って…」


流星「いやね、ちょうど『ガルパン』の中の人も来るって言ってたみたいなんだよ。」


ミホ「サ、サイン…す、少しだけなら…」


流星「大丈夫だよ。サインだけ、貰って帰ればいいじゃん。」


コウ「あの~カチョー?特さん、イヤホンをレコーダーに差してないんじゃないですか?駄々漏れですよ、声…」


カチョー「し、しまった~!!


特子「なんだか、音が小さいわね。もう少しボリュームを上げてと…」


マイ「ただの耳栓だものね…」



ミホ「あ…れ…な、なんだか、か、体が…」


流星「やっと薬が効いてきたか。バカな女だ、さてと、いくか。」


「ガチャ…」


友人A「やっと来たか流星、始めてるぜ。今度の獲物は、その可愛い娘ちゃんか?」


流星「獲物は失礼だろ、ペットと言ってくれ。」


友人B「じゃあ、そのペット後で可愛がらせてくれよ、こっちのペットもやるからよ。」


流星「まあまあ、そう慌てるな、まず俺が味見をしてからな。コイツ結構いい体…」


「ピッ!」


一郎「ハァハァハァ…」


特子「な、なにするのよ!まだ全部聞いてないわよ!」


一郎「バ、バカかお前!全部聞こえてるだろうが!」


特子「ぺらぺら、ガラガラ~、う!バタン、パンパン、パンパン、ヒラヒラ~」


一郎「本戸デス蚊、蚊蝶。じゃね~!!!」


カチョー「あいつ、うちの課に欲しいな。」


一郎「でも、これでわかっただろう?コイツがどんな人間か!コイツが生きていたら、ミホが浮かばれねえ、コイツを殺して俺も死ぬ!!」


特子「バカ~~~~!!!」


「ドゴッ~ン!!」


コウ「あ!特さんが犯人を直接ぶっ飛ばしましたよ。」


カチョー「あ~も~、直接触れるなと、あれほど言ったのに…

ミルさん、後で弁護士を色仕掛けで頼むわ。」


ミル「まかせて。優秀なのをピックアップしておくから。」



特子「彼女がそんな事をして喜ぶと思っているの!ミホさんがして欲しいのはね。見たくても見れなかった『ガルパン最終章の続きを見てあげる事なのよ!

きっとミホさんは、続きを貴方と一緒に見たかったハズなの。

見て内容をお墓の前で話してあげなきゃ、まだ6話も残っているんだから、貴方、当分死ねないわよ。覚悟しておきなさい。」


一郎「あ、姉さん…、け、けど俺、『ガルパン』見たこと無いんだよ…」


特子「大丈夫!私が全巻貸してあげるわ。刑務所でもDVDぐらいあるでしょ!」


マイ「刑務所でDVDはちょっとね~…」


一郎「わかったよ、姉さん。自首して『ガルパン』見るよ。


特子「そうよ、貴方たちのレールはまだまだ続いているのよ。」


ジミー「カチョー!犯人が人質を離しました!」


ゆう「よし!犯人を確保だ!!」


捜査員「はい!!!」


流星「た、助かった…おばさん、サンキューな。」


特子「だ~れ~が~…オバサンじゃ!このゲスやろう~~~!!」


「ドッカ~ン!!」


コウ「カチョー、特さん、人質までぶっ飛ばしましたよ。」


カチョー「あ~も~!ミルさ~ん…」


ミル「はいはい、もう1人ね。」


流星「け、刑事さん、助けてくれよ…」


ゆう「わかった、わかった。それじゃ署の方でゆっくりと話を聞こうじゃないか。

煌 流星!いや、真田徳之助!い~や!『山田 次郎!31才!』(大声で)婦女暴行及び殺人容疑&薬物所持容疑で逮捕する!引っ立てい!!」



次の日…



コウ「カチョー、昨日の事件新聞に載ってますよ。

『警察庁一課大手柄!逃亡中の凶悪犯と婦女暴行殺人容疑の男を同時逮捕!!』ですって。

徳さんも載ってますよ。『乱入の一般女性、婦女暴行犯に鉄拳制裁!」

一般女性って事になってるんですね。」


カチョー「もちろんだ。アルバイトを現場に出した事がバレたらマスコミに叩かれるからな。」


マイ「でも、いいのカチョー、徳ちゃんのおかげでしょ?犯人が自首したの。手柄取られちゃったじゃない。」


カチョー「いいんだよ、たまには一課にも、お裾分けしなくちゃな。

コウ、特子が来てから何件未解決事件が解決した?」


コウ「この事件を入れて27件目ですね。全部『特さん』絡みです。」


ジミー「今日は、空が笑ってやがる。」


マイ「あの凶悪犯はどうなるのかしら?」


ミル「ああ、多分『死刑』だろうって。知り合いの弁護士が言ってたわ。」


コウ「まあ、15人も殺したら死刑にもなるでしょ。」


マイ「あらまあ、じゃあ徳ちゃんが、彼女のお墓の前で話をしなくちゃね。」


カチョー「まあ、特子のヤツが覚えていたらな。」


「ガチャ!!」


特子「みっなさ~ん!!おっはようございま~す!!!

今日も平和の為、働きましょう!!!」



私は『志賀内 特子』アニメと刑事ドラマが大好きな、ギり平成生まれの29才!

優しい彼の腕で殉職するため、警察官に絶対になってやる~!!



おしまい




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