〔ラーメンという名の…〕



私の名前は『志賀内特子』!アルバイターだ。


5回目の警察学校の試験に落ちたあと、記者達に囲まれた『警視総監』を見つけて後を追った。しかし、


警視総監に夢中になりすぎた私は、後ろの記者に気付かず、突き飛ばされてしまった!


気が付くと…



俺の体は警視総監に体当たりを食らわせ、ウ○コまみれになっていた。


このままでは家に帰れないと思った俺は、警察学校内にある浴室に助けを求めた。


そして、警視総監の助言で、「アルバイトとしてなら、雇ってやる」と言われた俺は、警視庁初の『アルバイター』となり、警視庁内に新しく出来た『特別課捜査班』に転がり込んだ。


コイツらは、今の俺の同僚、『ジミー』『コウ』『マイ』『ミル』だ!


4人「私達、俺達、僕達!特別課捜査班!!!」


「シャキーン!」


そして、1番奥の席に座っているのが、この課の代表『敬志壮寛(けいしそうかん)』通称『カチョー』だ。

ここに来る前は『一課』の課長を努めていたが、新しく出来たこの課に飛ばされたらしい。


カチョー「あら?何か文句でもある?ほら、例の決め台詞。」


特子「ああ、そうだな。

アルバイトだろうが刑事(見習い)は刑事(見習い)!昇給無しの名アルバイター『志賀内特子』!!

親切は、一日ひと~つ!!!」


「ビシッ!」




カチョー「…お~い、特子…「ビシッ」と決めているのはいいが、なんだそれは?」


特子「あ!灰原カチョー」


カチョー「誰が『灰原カチョー」だ!」


特子「あ…間違えた…

やだな~カチョー、いつもやってるじゃないですか!『物語』の最初にする『自己紹介』的なやつ。」


カチョー「いつもと違うだろうが!いつもと!」


特子「え!?そうでしたっけ?」


カチョー「いつもはお前が、「ガチャ!オッハヨウゴッザイまっす!」

とか言って部屋に入って来るところから始まるだろうがよ!」


特子「あ~…そういえば…

どうも前回の終わりから尾を引いているというか…」


カチョー「それにお前、途中から自分の呼び方が『俺』になってるぞ?」


特子「???…あれ?!ホントだ、なんだかこっちの方が『しっくり』きたんですよね。」


コウ「『しっくり』じゃないですよ特さん、こっちの方が『ビックリ』ですよ。」


マイ「そうよ特ちゃん、私達のこと『コイツら』は酷いよ~。」


ミル「最期、変なポーズもさせられたし…」


ジミー「フフフ…」


特子「ゴ…ゴメンナサイ、つい調子に乗っちゃって、エヘヘ…」


カチョー「俺にも変なセリフ言わせやがって…」


特子「まあまあ、カチョー、とりあえず終わった事ですし…」


カチョー「まだ終わってね~だろうがよ。俺達の自己紹介が殆んど無いじゃねえか!」


特子「え~!?もういいじゃないですか。今まで散々したんだし…」


カチョー「でもな~、13話から読むヤツも…」


特子「だ・か・ら!そんなヤツいませんて!

だいたい1話2話読んで気に入らなかったら後は読まないんですって!

せいぜい3話止まりですよ。12話まで読んでくれるのは私達の事が大好きな人達なんですから、自己紹介なんてしなくてもよく知っている人達なんですよね~?」


読者「………」


特子「ほら!「うん」って言った!」


カチョー「あ~…もうわかったから、仕事をしてくれ…」


特子「へいへい、わかりました。

で?今日は何をすればいいんですか?」


カチョー「いちいち言わせるなよ、いつもの通り資料整理だ。」


特子「え~?!またですか~!もう整理する資料がありませんよ~…」


カチョー「そんなわけないだろうがよ。まだ廊下に山積みなってるだろ!」


特子「え?!あの段ボール、全部資料なんですか?

てっきり誰かの引っ越しの荷物かと…」


カチョー「おいおい、ここは『特課』だぞ。誰が好き好んでこんな所に来るか。」


特子「私は好きなんだけどな~。」


コウ「まあ、特さんはそうでしょうね…。」




ジミー「それじゃ、カチョー、ちょっと行ってくる。」


カチョー「ああ、気を付けてな。」


特子「あれ?ジミーさん、どこかに行くんですか?しかもマトモバージョンだし…」


カチョー「茶目の所に行くんだよ。」


特子「へ?茶目さんて、あの『バカ舌』の?」


コウ「特さんは知らないでしょうけど、茶目さんはただの『バカ舌』じゃないんですよ。」


特子「ただの『バカ舌』じゃない?

知ってますよ、『究極のバカ舌』でしょ?」


カチョー「おい、おい『バカ舌』『バカ舌』言うんじゃない、仮にも元同僚なんだから。」


特子「で?コウちゃん、その『バカ舌』がどうかしたの?


コウ「最近、違う意味であのラーメン屋が話題になってるんですよ。」


マイ「へ~、そうなんだ。知らなかった。」


特子「私も知らなかった…」


コウ「あれ?特さんなら、知ってると思ったんですけど。

よく、あの店に行ってるでしょ?」


カチョー「え″?…特子…あの店に通っているのか?」


特子「へへへ…まあ…なんというか…クセになるマズさというか。

食べ終わってあの店から出ると、空気が美味しくて、「あ~、私、生きているんだ~!生きてるって素晴らしい~!」

って実感するんですよ。」


カチョー「なんだ?それ?」


ミル「究極のお手軽『臨死体験』ね。」


コウ「そう!まさにそれなんですよ。手軽に『臨死体験』の出来る店ってネットで広がって、全国から客が来てるそうなんです。

中には、死んだ身内に会えたとか、地獄巡りをした人もいるとか。その人は、あまりの怖さに『まっとう』な人間になったとかならないとか…」

客が多すぎて、今では『完全予約制』ですよ。」


カチョー「世の中わからないものだな。あの茶目の店が繁盛するとはな。

あ!それでか。最近、茶目から未解決事件の情報が多いのは。」


特子「ん?どういうことですか?カチョー、『未解決事件』と、あの『臨死体験ラーメン』の関係って?」


カチョー「考えてもみろ、殺された被害者から、直接話が聞けるんだぞ、犯人を直接教えてもらえるじゃないか。」


特子「あ~、なるほど~。でもカチョー、私、食べてる時の記憶はうっすらとしか覚えてないですよ?

ラーメンを食べている事さえ忘れていますから。」


コウ「確かに殆どの人は、『食べている時に夢を見ていたようだ』と言ってるみたいですね。」


カチョー「まあ、曖昧で何の根拠もない証言だから、直接犯人逮捕にはいかないんだが、被害者と犯人が顔見知りなら、捜査の進展にもなるだろ?

ただ、ずっと客のうわ言に耳を傾けていなきゃいけないから、茶目だけじゃな。

あの店でラーメンを食っても意識を保っていられるヤツが必要なんだ。そこで『ジミー』の出番ってわけだ。」


マイ「たしかにジミーさんなら、正気を保っていられるわね。」


コウ「似た者同士(バカ舌同士)ですからね。」



内線「プルプルプル…」


ミル「はい!特課!…え?はい…はい…」


カチョー「事件か!?ミル!」


ミル「いえ、茶目さんからです。特ちゃんは居るか?って。

特ちゃんの考えた新作ラーメンがバカ売れだから、また新しいアイデアを出して欲しいんだって。約束通り儲けは折半で、だそうです。」


カチョー「え?!茶目?この電話は内線だぞ?どうやって外から?儲けは折半?」


特子「そ、それじゃ、私は『一課』から未整理の資料を貰って来ますね…」


カチョー「待~て~…特子!どういうことか説明してもらおうか。」


特子「いやだな~カチョー、茶目さんが新メニューのアイデアが欲しいって言うから、ちょっと考えてあげただけですよ~。『儲けは折半』だなんて、冗談に決まってるじゃないですか~。(あのやろ~、ここに直接電話するなと、あれほど言ったのに~…)」


ミル「あ!そうそう、特ちゃんスマホの電源が入ってないんじゃないかって?」


特子「あれ?そんなはずは…

あ!ホントだ…は!あの時か!バスの中で押されて…」


カチョー「お前、よく押されるよな…」


マイ「で?どんな新メニューを考えたの?大人気だそうだから、ちゃんと食べれるやつよね?特ちゃんが考えたのだし。」


特子「いや~、考えたと言うより、アドバイス的な?」


コウ「特さんがアドバイス?」


特子「ほら、茶目さんのラーメンて『細麺』でしょ?」


カチョー「いや…麺の太さまでは記憶に無いぞ…味のインパクトが強すぎるからな…」


特子「で、『太麺』にしてみたら?って言ったんですよ。」


マイ「それだけ?」


特子「はい、それだけです。」


ミル「でも『細麺』を『太麺』に変えただけじゃそんなに変わらないんじゃ…」


特子「そこが茶目さんが茶目さんと言われる由縁なんです!」


コウ「意味がわかりません!」


特子「茶目さんは茶目さんなりに『ラーメン用語』を勉強をしてるみたいで、ほら『バリカタ』とか『替え玉』とか。」


コウ「いまさらですか…」


特子「前に『試作品』を食べたんだけど、凄かったですよ。」


マイ「ど…どんなラーメン…?」


特子「『極太バリカタ1本麺』名付けて『チャーシューリキ』」


カチョー「もうラーメンの名前じゃねえだろ、それ…」


コウ「どんなラーメンなんです?」


特子「なんて言うのかな?池に大きな墓石が沈んでいるような…」


カチョー「それ、ラーメンだよな…?」


特子「ラーメンですよ!失礼な!

とにかく固くて、噛みきろうとしたら、脳内に麺が笑いながら語りかけてくるんです。

『ハハハ、まだキレてないっすよ。俺をキレさせたら大したものだ!』って。

そして、渾身の力を込めてひと口かじったと思ったら、いきなり体を持ち上げられて、後頭部を地面に叩き付けられたような感じがして、虚ろになりながらもやっとの思いで立ち上がったら、私の名前を叫びながら、胸元にぶっとい麺が叩き付けて来るんです。

まあ、だいたいそれでノックアウトですね。」


カチョー「何の話をしてるんだお前は?」


特子「何って、いやだなカチョー『ラーメン』の話じゃないですか。」


カチョー「『ラーメン』の話じゃねえだろ、なんか昔そんな場面をテレビで見たような…」


ミル「でも、そんな固い麺ならみんな食べられないんじゃ…」


特子「ちっちっちっ…『伝説のラーメン屋』の常連客を舐めちゃいけないっスよ。」


コウ「何のキャラですか…」


特子「常連客の中には『サメの歯を持つ男』通称『ジョーズ』や『噛み切れなければ飲めばいい!』通称『丸飲みマシーン!ゴミ収集車』略して『丸ゴミ』!」


コウ「嫌ですよ、そんな通り名。」


特子「まあ、他にも全国から名だたる『ラーマン』が挑戦に来るだろうから、『極太バリカタ1本麺』は、すぐに攻略されると思って、対策はしていたんですがね。ウフッ(ウインク)」


カチョー「何度も聞くが、『ラーメン』だよな?」


特子「『噛み切る』ならもっと固く!『飲み込む』のなら飲み込めないように!!」


カチョー「お前達は、何と戦っているんだ?」


特子「て事で、バリカタのさらに上を行く『伝説のバリバリカタ麺』通称『バリ伝』」


コウ「いや…逆になってるし、それに『麺』が無くなったし…」


特子「さらにさらにその上には、『バリバリカタ麺』を飲み込みさせにくく『サソリ』のような形をした麺!そう!その名も!

『必殺チャーシューリキ!サソリ固め』!!」


カチョー「『必殺』しちゃったよ…」


コウ「そんなに『固くて』『太くて』さらに『反り返って』たら…」


マイ「イヤだわ…コウちゃん、なんか卑猥…」


カチョー「まったく、今でさえ死人が出ないのが不思議なくらいなのに、そんなラーメン食ったら、ほんとに死んじまうぞ…」


特子「大丈夫ですよ、だって『ラーメン』なんですから。」



電話「リリリリリリリリ…」


カチョー「ん?電話?誰からだ?」


ミル「はい、特課。え?ああ、ジミー。どうしたの?珍しいわね、あなたが特課に電話するなんて。

……え!?殺人事件?」


カチョー「ミル!替われ!もしもし俺だ!何があった?

何!?茶目の店で人が死んでるだと!?」


スピーカー「ビービービー…都内のラーメン屋で、男性が頭から血を流して倒れているとの通報あり!至急現場に急行せよ!」


マイ「カチョー!どうします?」


カチョー「ジミー!とりあえずそこに居ろ!俺達もすぐに行く!

よし!行くぞお前達!」


特子「カチョー!私は?」


カチョー「今回は、おとなしくこの部屋に居ろ、窒息じゃないにしろ、もしかしたらお前の考えた『チャーシューリキ』が関わってるかもしれない…」


特子「そ…そんな…う、ウソでしょ…ねえ…ウソだと言って…コウちゃん…」


コウ「いや、そんなビックリラーメンを食べて、死なないのが不思議ですよ。」


特子「そ、そんな…私の『チャーシュー…リキ』…」


ガクッ




次回に続く…




特子「おお~!なんだか本物の刑事ドラマっぽい~!」


コウ「喜んでいる場合ですか、もし凶器が『チャーシューリキ』なら、茶目さんの店も、それを考えた特さんもどうなるかわかりませんよ。」


特子「え?マジ?」


コウ「はい、マジで。」


ナレーション「まさかの展開に驚愕する『特子』と『チャーシューリキ』!!

果たして2人の疑い…じゃなかった、1人と1杯の疑いは晴れるのか!


次回!〔掟破りの逆サソリ!!〕乞う御期待!




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