〔魔力の解放〕


第15話〔魔力の解放〕




特子「ガチャ!みんな~!集まってる~?!お待たせ!特子のお姉さんだよ~!!」



カチョー「なんだよそれ!?お前は歌のお姉さんか?それにドアが無いんだから、開ける音はいらないだろ?」



特子「ルーチンよルーチン。」



カチョー「プーチンみたいに言うな。プーチンみたいに。それを言うなら『ルーティーン』だろ。」



特子「似たようなものでしょ?早口で言えば読者にはわかりゃしないって。」



カチョー「お前な~…」




私の名前は『志賀内特子しがないとくこ』このむさ苦しい『特別課捜査班』のマスコット的キャラクターだ。



カチョー「むさ苦しいは失礼だろう。お前の部屋もあるんだぞ。

て、いうか、他のみんなはリモートだから、ほとんどお前1人の部屋だろ?」



特子「加齢臭マンマンのカチョーが居るじゃないですか。」



カチョー「誰が加齢臭マンマンだ!むさ苦しいと加齢臭は関係ないだろ!

それに、お前1人にしておいたら、何をしでかすかわからないだろうが。

あと何か事件があった時、対応する者が居ないと困るからな。」



コウのパソコン「そんなこと言ってカチョー、奥さんに追い出されたんでしょ?」



特子「あ、コウちゃん、居たんだ。」



コウのパソコン「そりゃあ居ますよ、リモートとは言っても仕事しなきゃいけないですからね。とは言っても、自宅のモニターから全部見えてますけど。

もう前みたいにパソコンをいきなり閉じないで下さいよ。」



特子「わかってるわよ。あのあとカチョーの声が耳に残って大変だったんだから…夢にまで出てきて悪夢よ悪夢。

ところでマイさんとミルさんは?」



カチョー「お前、人の声を悪魔みたいに言うなよな。

マイとミルなら、デパートの警備に行って貰っている。年末になると人混みに紛れて万引きをするヤツが増えるからな。

俺達が行くより、女性の方が客に紛れていいだろ?」



コウのパソコン「マイさんは男ですけどね。まあ、今年は人混みも少ないと思いますけど。」



カチョー「一応、終わったら、ここに顔を出すように言ってある。報告書も書かないといけないからな。」



コウのパソコン「カチョー、報告書もメールでいいんじゃないですか?いちいち顔を出していたらリモートの意味が無いですよ。」



カチョー「い、いや、まあ、そうなんだかな…ほ、ほら、やっぱり顔を付き合わせて話した方が、気持ちが伝わるというか…」



コウのパソコン「出たよ、昭和頭。カチョー、だからみんなに『昭和の化石』とか言われるんですよ。顔ならパソコンでも見れるじゃないですか。」



特子「違うよ!コウちゃん!カチョーはただ顔が見たいんじゃないんだよ。肌と肌の温もりを感じたいんだよ!こうやってね。」



「ギュ~!スリスリ…」



カチョー「バ!バカ!特子!くっつくんじゃない!『密』はダメだ『密』は!」



コウのパソコン「カチョー、セリフと表情が一致してませんよ…」



特子「ねえ~…カチョー…私い~、海に行きた~い。」



カチョー「な!?海?お前、もう12月だぞ?」



特子「だぁっ~て~、私~い、今年は海に行けなかったんだも~ん。」



カチョー「いや、今年は殆どの人が行ってないと思うぞ…」



特子「お願~い。カチョ~。チョンチョンすりすり…」



カチョー「ま、全くしょうがないな~。今回だけだぞ。マイとミルは現地集合にするか。」



コウのパソコン「僕は行きませんよ!寒いし、部屋から出るのめんどくさいし。

あ!ドローンで参加します。空からみんなを撮ってあげますよ。」



特子「え!?ドローンで撮影って、あの「ブワ~」って私のアップから一気に引きの映像になるヤツ?」



コウのパソコン「そうですよ、逆も出来ますよ。なんなら衛生を使って、地球から一気に特さんにズームアップしましょうか?」



カチョー「バ、バカ!そんな私用に衛生を使うんじゃない!上にバレたらどうする!」



コウのパソコン「わかりましたよ。ドローンだけにします。マイさんとミルさんに連絡しておきましょうか?」



カチョー「ああ、頼む。無理に来いとは言わないけどな。」



コウのパソコン「ジミーさんはどうします?今、茶目さんの所に居るみたいですけど。」



カチョー「ああ、ジミーはいい。茶目の所も客が減って、売り上げが落ちているみたいだからな。それにあのラーメンを食ったら、いかにジミーでも半日は動けないだろうから。」



コウのパソコン「わかりました。じゃあ、マイさんとミルさんには僕から連絡しておきます。」



「ピッ」



カチョー「ところで特子、なんでまたこんな時期に海なんかに行きたいんだ?」



特子「ウフフ…ナ・イ・ショ。」



そして…




「ザザ~…ザザ~…」



特子「イヤッホ~!海だ~!!」



カチョー「特子のヤツ、あんなにはしゃいで…、そんなに来たかったのか…

さすがに誰も泳いでないな。まあ、こんな寒空に海に入るなんて自殺行為だもんな。」



コウ「カチョー?聞こえますか?」



カチョー「ああ、よく聞こえるぞ。補聴器をしてるみたいで、ちょっと恥ずかしいがな。」



コウ「いいじゃないですか。どうせ誰も居ないんでしょ。」



カチョー「まあな、確かに誰も居ないな。はしゃいでいるのは特子だけだ。」



コウ「もうすぐ着きますから、特さんに知らせておいて下さい。」



カチョー「ああ、わかった。お~い!特…

ん?なんだ?アイツ、しゃがみこんで何か探しているのか?

綺麗な貝殻でも見つけたか?やっぱりああ見えて女の子なんだな。フフフ…」



特子「ち!イヤリングかと思ったら、アルミホイルの切れ端かよ…

いつもなら、お金や指輪みたいな貴金属が落ちているんだけどな。さすがに今年は無いか…

いや!負けるな私。探せばきっと何か金目の物があるはず。」



カチョー「お~お~、あんなに真剣になって…可愛いところもあるもんだな。俺にプレゼントでもしてくれるつもりなのか?

「はい、カチョー。いつもありがと…私が作ったの。貝のペンダント。」なんてな。」



特子「なんだよ…ゴミばかりじゃねえか…、お!『革靴』発見!ラッキー、綺麗だしちゃんと左右揃ってる。あ~、でも男物だ。どうしよう…フリマで売るか…、これブランド物かな?

でもいろいろと質問が来たら面倒だしな。

よし!カチョーに売りとばそう!」



カチョー「ん?特子が走って来る?何か見つけたか?俺にくれるのかな?」



特子「カチョ~!カチョ~!カッチョ~!」



カチョー「フフフ、なんだ特子。そんなに走らなくても逃げたりしないよ。」



特子「はい!これ!」



カチョー「ん?革靴じゃないか?俺にくれるのか?」



特子「買って!」



カチョー「は?買って?いやいや待て待て、お前、それ今、拾った物だよな?俺に買えって?」



特子「うん!そう!だから買って!」



カチョー「「買って」って、そもそもお前の靴じゃないだろ!いくら落ちていた物だからって勝手に自分の物にしちゃいけないことぐらいわかってるだろうが?」



特子「その点は大丈夫!ちゃんと靴の持ち主から頼まれたから。」



カチョー「「頼まれた」って…誰も居なかっただろ?」



特子「靴の下にね、紙が置いてあったの。「後は宜しく頼みます。」って。だから頼まれてやったのよ。」



カチョー「紙って…、ん?特子、お前この靴履いたのか?」



特子「やだな~、カチョー。いくら私でも、そんな誰ともわからない男の靴を履くわけないでしょ。」



カチョー「まだ少し暖かい…脱いで間もない感じだ。

特子!爪先はどこを向いていた!海か?浜か?バラバラに置いてあったか?」



特子「爪先って…、ちゃんと揃えて海を向いてましたよ。ご丁寧に汚れないよう靴の下に紙まで置いて。よほど几帳面な人が忘れたんでしょうね。」



カチョー「何を言ってるんだ!特子!これは忘れ物なんかじゃない!コウ!聞こえるか!」



コウ「はい!話は全部聞かせて貰いました。今、頭の上に居ます!このまま海を捜索してみます!」



ドローン「ブ~~ン!!」



コウ「居ました!浜から約50メートル!男性が仰向けで浮かんでいます!」



カチョー「コウ!すぐに海保に連絡!救急車もだ!!」



コウ「わかりました!」



マイ「オラオラ!どけどけ~!!」



特子「あ!マイさん!」



マイ「ザブ~ン!!!バシャバシャ!」



ミル「カチョー!特ちゃん!」



カチョー「お!ミルにマイ!」



特子「カチョー!マイさんが!」



カチョー「心配するな特子。マイはな警官になる前は、ライフセーバーだったんだ。」



特子「ライフセーバーって、あの筋肉ムキムキの?」



カチョー「ああ、凄腕のライフセーバーだったんだが、必要以上に体に触ったり、人工呼吸をしたりしてな…特に男性に…」



ミル「意識が戻っても人工呼吸を止めないんだからね…舌入れちゃうし…」



特子「はぁ…、あ!マイさんが戻って来た。て?誰?このおじさん?」



カチョー「ああ…特子はマイのスッピンを見たことが無かったな。フフフ、驚くのもムリはない、これが『真のマイの姿』だ!」



ミル「カチョー、『魔力を解放した魔王』みたいに言わないで下さい。」




特子「魔力の解放…さすがだなマイ!しかしその代償は大きかったな。ハハハ!今ならこの私でも勝てるぞ!

カチョー!カチョー!私とマイさん、どっちが可愛い?」



カチョー「は?何を言っているんだ?こんな時に?!」



特子「だから!私と今の姿のマイさん、どっちが可愛いか聞いているの!」



カチョー「あのな~、男の姿のマイと勝負なんて…、お前には女としてのプライドは無いのか?…」



特子「だって~、魔力を溜め込んでる時のマイさんには勝てないんだもん…」




マイ「ハアハアハア…ダメだ、息をしてない!人工呼吸をするぞ!カチョー!そのジャンパーを貸してくれ!」



カチョー「この着てるヤツか?寒いな~…」



マイ「いいから早く!枕の代わりにする!」



特子「マイさん、男らしい…」



マイ「グッ!グッ!グッ!チュウ~!チュウ~!チュウ~!

グッ!グッ!グッ!グッ!チュウ~!チュウ~!チュウ~!チュ~ウ!チュポ!」



特子「マイさん、いやらしい…」



新海しんかい「ゲホッ!ゲホッ!…ん~!」



カチョー「やった!意識が戻った!」



マイ「いや!まだよ!全部吸い出してキレイにしないと!ブッチュ~ウ!レロレロ…」



新海「ん~~~……」



カチョー「はいはい…もういいから。離れて離れて。」



マイ「や~!もうちょっとやらせてよ~!」



新海「ケホ、ケホ…、ここは…僕は確か……ここは?」



カチョー「大丈夫か?あんた…、なあ、どうして自殺なんか…」



新海「自殺?何を言って…、あ!そ、そうだ!確か会社で昼御飯を食べてたら急に眠くなって…」



ミル「眠くなったって…じゃあ、どうやってここまで来たの?」



新海「…ここは…海なのか?あなた達は…?」



特子「安心してください。私達は刑事です!」



カチョー「お前は違うだろうが!」



新海「刑事…、あなた方が僕を助けてくれたんですか?ありが……と…?え??も、もしかして!?進舞しんまい進舞入夏しんまいいるかか!?」



マイ「え?どうして私の名前を?」



特子「え?どうして今の男顔でわかる?」



新海「俺だよ俺!中学の水泳部で一緒だった、新海真威流しんかいまいるだよ!」



マイ「え!?もしかして新海センパイ?」



カチョー「え?もしかしてお前達知り合いなのか?」



マイ「ええ、中学時代の水泳部のセンパイ。まさかこんな所で会えるなんて。」



新海「俺もだよ、懐かしいなあ。進舞は全然変わってないな。」



特子「魔力を解放したからね…」



救急車「ピーポー、ピーポー、ピーポー…」



コウ「カチョー!救急車が入り口に到着しました。」



カチョー「よし、ミル!救急車を誘導してくれ!」



ミル「わかったわ!」



コウ「カチョー、それから一つ気になる事が…」



カチョー「気になる事?なんだコウ?」



コウ「はい、新海真威流、彼の素性を調べてみたんですけど、どうやら『黒石くろいし興業』の社員なんですよ。しかも経理課。」



カチョー「『黒石興業『って、今、代議士の脱税疑惑に関わっているとされる、ゼネコン大手の黒石か?」



コウ「はい、黒石興業の『黒石成夫くろいしなりお』は代議士の岡根越照おかねこえてると地元が同じで、闇献金の噂がたえません。特捜も動いてるみたいですが、確証が…」



カチョー「そういえば最近、黒石から横領による内部告発があったよな。」



コウ「はい、社員が10億近く架空の会社に流してたという。」



カチョー「社員1人でどうこう出来る金額じゃないよな…」



コウ「はい、リークしてきたのが社長本人だという噂もありますから。」



カチョー「自殺に見せかけて殺されそうになった『経理課の社員』、横領をリークした社長か…怪しさ満開だな。

コウ、この辺りの防犯カメラを調べてくれ、新海の言うことが本当なら、眠っていた彼を誰かが連れて来たことになる。あと、黒石と岡根の会話もさがしてくれ。どうせお前の事だ、録音があるんだろ?」



コウ「まあ、お偉いさんが使いそうな『高級料亭』にはすべて仕掛けてありますから。少し時間を下さい。」



カチョー「たのんだぞ、コウ。」



救急隊「大丈夫か?君?」



新海「あ、はい!歩けます。」



救急隊「さ、早く乗って。」



新海「あ!進舞!また連絡するから!」



マイ「はい!待ってます!」



ミル「あら、なんかいい雰囲気。」



救急車「ピーポーピーポーピーポー…」



カチョー「さて、ゆうさんにも連絡しなきゃな。立派な殺人未遂だし。そうそう、このまま新海君にも死んでもらうか。」



特子「え!?新海さんを殺すの?せっかく助けたのに?」



マイ「なんだと!このやろ~!!いくらカチョーでも、言っていいことと悪い事があるだろうが~!!!!」



カチョー「い!いや!待て!落ち着けマイ!新海君は命を狙われているんだぞ、生きていたのがバレたら、また命を狙われかねない。事が済むまで死んだ事にしておく方が安全なんだ。」



マイ「な…なんだ、そういうことか…じゃあ仕方がないな…」



カチョー「そこでミル、マンションの部屋を一つ貸してくれないか?」



ミル「マンションの部屋?」



カチョー「どうせ、いろんな所に買ってもらっているんだろ?病院だと生きている事がバレるかもしれないからな。」



ミル「わかったわ。用意しておくわ。」



カチョー「それからミル、もう一つ頼みがある。

これからコウが新海を連れて来た実行犯を特定する。そいつらを色仕掛けで茶目の店に連れて行ってくれ。

あのラーメンを食べたら、洗いざらい吐いてくれるからな。」



特子「確かに!一見さんが食べたら、ありとあらゆる物を吐きますから!」



マイ「あたしも行く!カチョー!全部吐いたら、ボコボコにしてもいいんでしょ!」



カチョー「ま…まあ、死なない程度にな…それから黒幕が捕まるまで、新海とは連絡を取るなよ。誰が何処で見てるかわからないからな。わかったな。」



マイ「は~い…。」



その日のニュース「今日、午後3時頃、海に浮かんでいる男性を海岸に訪れた清掃ボランティアが、発見しました。男性は病院に運ばれましたが、その後死亡が確認されました。自殺とみられています。この男性は黒石興業の社員とみられ、横領に何らかの関わりがあると思われ、捜査員達が捜査に乗り出しました。」




そして数日後…




コウ「カチョー、見ました?あの黒石興業の会見。」



カチョー「ああ、見た見た。『自殺した社員が会社の金を横領してました』会見で、新海が不正の証拠資料を持って現れて、さらにコウが録音していた黒石と岡根の密談も流れて、実行犯もゲロして殺人未遂で捕まったからな。」



ミル「あの時の黒石の顔ったら、真っ白石になってたわね。」



コウ「でも肝心の岡根には逃げられましたね。会見が開かれる前に、持病の悪化で入院て、代議士のお約束じゃですか。」



カチョー「情報が漏れたんだろうな。敵は身内にも居るかもって事だ。」



コウ「そういえば、今日ですよね。マイさんと新海さんが会うの。何か大切な話があるんですよね?新海さんから。」



特子「もしかして愛の告白とか?」



カチョー「でも、男同士だからな…」



特子「いや!魔力を溜め込んだマイさんは立派な女の子です。はたから見たら普通のカップルですよ。」



ミル「マイちゃん、ずっと我慢してたからね。連絡取るの。中学の時、新海君と人工呼吸の練習ばかりしてたんだって。

でも、実行犯はよく浜から沖まで新海君を流せたわね?波打ち際に戻って来そうだけど…」



カチョー「ああ、それなら、あの浜はよく離岸流が発生するんだと、特にこの季節は。穴の開いた浮き輪か何かに乗せて流したんだろう。

離岸流に乗ったら、あっという間に沖まで行くからな。あとは浮き輪の空気が無くなれば、自殺者の完成って訳だ。この季節だと人もほとんど居ないしな。

運が良かったのは、新海の体が波で仰向けになった事だ。あれで窒息せずに済んだ。あとは、特子が『海に行こう!』って言った事だろう。

俺達が行かなかったら、新海も低体温で凍死か溺死、横領も闇献金もうやむや。全く特子様様だ。」



特子の机「バン!」



特子「そうですよ!全部私のおかげじゃないですか!お金下さいよ!闇献金の10億の1割くらいもらってもいいぐらいですよ!」



カチョー「ま、まあまあ。ほら、お前、感謝状をもらったじゃないか。凄い事だぞ。」



特子「誰ともわからないオッサンに、『海岸清掃のボランティア』の感謝状じゃないですか!あんなもの1円の価値にもなりませんよ!」



カチョー「仕方ないじゃないか、仕事サボって海に行ったんだぞ。海岸清掃のボランティアをしてる時に、たまたま新海を発見したことになってんだから。」



特子「わかりましたよ。じゃあこれ買って下さい!」



カチョー「なんだ?それ?」



特子「海で見つけた、謎の液体!」



カチョー「バ!バカ!!そんなものを警視庁に持ち込むヤツがあるか!すぐに捨てて来い!」



特子「ちぇ~、せっかく売れると思ったんだけどな~…」



カチョー「誰が買うんだ!誰が!」



特子「じゃあ、せめて晩御飯をおごって下さいよ。そのくらいならいいでしょ?ダメかな?パパ…?」



カチョー「お、おう…晩飯ぐらいならおごってやるぞ。

そうだ!ミルも来るか?事件も片付いたし。」



ミル「ごめんなさい、カチョー。私、先約があるの。また今度ね。」



カチョー「また今度って、お前は毎晩誰かと居るだろ…今夜はどこのお偉いさんだ?」



特子「さすがミルさん。魔性の女。」



カチョー「コウはどうする?」



コウ「どうする?って、聞くだけ無駄な事わかっているでしょ?」



カチョー「仕方ない、2人で行くか?特子、行きたい所はあるのか?」



特子「ありますよ!最初から決めてました!」




その夜…




カチョー「特子~…、行きたい場所ってここかよ~…寒いよ~、店に入ろうぜ…。」



特子「何言っているんですか、カチョー!店に入ったら、マイさんが見えなくなっちゃうじゃないですか!あのマイさんを見てください!ギリギリまで魔力を溜め込んでいるんですよ。それだけ気合いが入っているんです。

マイさんも、寒空の下、彼を待っているんですから。私達も待ちましょう!」



カチョー「でも、待ち合わせの時間は過ぎているんじゃないか?」



特子「う~ん、迷子か?」



カチョー「ちょっと待ってろ。おい、コウ!聞こえるか?どうせ見てるんだろ?」



コウ「さすがカチョー!覗きは、僕の仕事ですからね。」



カチョー「新海の姿は見えるか?待ち合わせの時間はとうに過ぎているんだが…」



コウ「近くには居ませんね。マイさんの回りに居るのは、カップルが2組、待ち合わせの女性が1人…ぐらいですかね。」



カチョー「ああ。こっちからも見える。あの背の高い女性か。あの人も待ち合わせか?」



コウ「あれ?あの女性って…」



特子「あ!マイさんがその女性ひとに近付いた。」



マイ「あれ~?『まい』ちゃんじゃないの?!」



まい「マイちゃん!どうしたのよ?こんなところで?!」



マイ「まいちゃんこそ?待ち合わせ?同伴?」



まい「ん…、まあそんなところ。マイちゃんは?」



マイ「あたしも待ち合わせ…、でもすっぽかされたみたい…。」



まい「なによ!そいつ!マイちゃんとの約束を破るなんてとんでもないヤツね!今度とっちめてやらなくちゃ!」



カチョー「おい、コウ?あの女性はマイの知り合いか?」



コウ「はい。あの『まい』って女性は、マイさんがよく飲みに行く店の店員です。同じ名前同士気が合うみたいですよ。」



まい「マイちゃん!これからうちの店に来ない?安くするわよ!」



マイ「あれ?まいちゃんも待ち合わせじゃなかったの?」



まい「いいの、いいの。思い出にすがるなんて私のガラじゃなかったみたい。今日は2人で飲み明かしましょ!」



マイ「そうね!男なんて、こっちからお払い下げだ~!!」



カチョー「ん?あの『まい』って娘の目元、何処かで…?」



コウ「カチョー?どうかしました?」



カチョー「あ!…ふふふ…。『マイ』に『まい』か…いや、なんでもない。

ほら特子、もういいだろ?マイ達も居なくなったし、俺達も店に入ろうぜ。今日はステーキおごってやる!」



特子「な!なんだと!!今日が地球最後の日なのか?!」



カチョー「バーカ。そんなんじゃねえよ。」



特子「でも、マイさん新海さんにフラれたっぽいみたいですよ。」



カチョー「大丈夫だ。あの2人は固い絆で結ばれているよ。」




マイ、まい「男なんて!くそくらえっい~だ!!」




おしまい。







特子「何~!この終わりかた?いつもと違うじゃないですか!」



カチョー「たまにはいいじゃねえか。ちょっと感動したろ?」



特子「私、今回、ゴミを拾っただけですよ?活躍も何もしてないじゃないですか!」



カチョー「いいんだよ、今回は『マイ』が主役なんだから。」



特子「確かに魔力を解放したマイさん、物凄かったけど…。

よ~し!私も!魔力解放~!!!」



カチョー「バ!バカ!!服を脱ぐな服を!!」




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