兵士の戦慄

 何も考えず勇敢であれ、と言われた。

 勇敢とは何なんだろうか?


 昨日喋っていた友人はもう喋らない。

 でもみんなは笑顔でよくやったと言ってた。


 一人だけ泣いていた僕にリーダーは言った。


「勇敢な死を無駄にするな。お前も彼のようになれるよう精進しなさい」


 死んだら何もないよ。ところで窓から見た景色は今でも忘れない。


 ドシドシ


 ああ、まるでくるみ割り人形の行進だ。


 山が増えてく、遠くから見てみると、実に実感が湧かない。まるでジオラマだ。


 僕は戦慄した。死ぬと思った。だから僕は最後に何かせねばと思った。


 だから文字を書いた、残した。勇敢に立ち向かったよ。敵じゃなく、周りの味方から逃げるように立ち向かったさ。


 勇敢な死ではなく、勇敢な詩である。


 ふふ、勇敢な命である。ああ言葉とは、文字とはなんて尊いものなんだろう……。


 バンッ


 ああ、消えた。でもこの言葉は残るさ。

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