死ねないマリ

 生きてる心地なんてない。かといって死んでるつもりもない。

 赤い星は徐々に近づいてきているが、また離れてゆくだろう。

 僕は小さな青い星に憧れている、もっと小さな星だ。

 たとえば君が僕をムーンと呼ぶのなら、僕は君をなんて呼ぼうか?


 マリでいいかい?


 特に大した意味はないがマリでいいかい?

 うさぎなんていやしないよ。昔、お姫様はいたけれど。


 ところでマリ?


 君は1秒で生まれ1秒で死ぬね。苦しいだろ?

 この独り言だってきっと届いてないだろう。


 なんでよ、マリ?


 月人に憧れたのは分かる。でもなんでこんなところで無限に手を伸ばしたの?

 もっと冷静に動くべきだよ、マリ。

 協力したいけれど惑星は回転するしかできないよ。


 助けてよ、マリ。


 君の方が苦しいだろうけど、それを何もできないままずっと見てる僕の身にもなっておくれ。


 せめてさよならくらい許してもいいんじゃない?神様……


 死ねないマリ。


 きっと僕よりも長い時を生きるマリ。


 きっと僕よりも死ぬ時間が長いマリ。


 さよならマリ。


 僕はもう赤い星に飲み込まれた。

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