くるくるに流されて

 何故か人々はくるくると回ってる。僕は回らないし、君も回らないが、周りは回ってばかりだった。


「……これどういうこと?」


 返答に困る。やや重い口調で答える。


「いや、分からない」


 ところで


「君は回らないの?」


 相手は少し悩んだ表情をしたけど


「……私はしないかな」


「でもみんな回ってるよ? 僕たちの方が少数派じゃないの?」


「でもさ」


 彼女は少し声を強くして続けた。


「私は私だからさ」


「……そっか」


 その後、彼女は1人、旅へと出た。僕はたった1人っきりになった。


「どうしようかな……僕は僕なんて持ってないしなぁ」


 でもそれもありかな、と思った。周りに合わせる僕、それだって僕には違いなかった。無理して人と違う道を歩く必要はない。それができないことを恥じる必要はない。


 くる? くる、くる? くるくる


「ああ、楽だ」


 回るのは楽チンだった。もちろん楽なら楽しいというわけではない。でも、それは実に簡単にできたのであった。


「……僕は無理だったさ。でも悪いとは思わない」


 言い訳じゃない、本当に悪いとは思ってない、多様性のある国だ。でも


「……君はすごいよ。心から尊敬するさ」


 その後、年賀状が届いた。彼女はとある村でボランティア活動をしているらしい。大きな笑顔がそこに写っていた。対して僕はくるくる回っていた、くるくるに流されて、ただ回っていた。

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