弾道の軌跡

 当たり前に用いられているものに疑問を呈する。そんな習慣を当たり前に身につけるのがどれほど難儀なことか。
 しかも、思いついただけではすまない。造物主よろしく、その世界に肉付けもすれば骨やら毛細血管やらを備えさせねばならぬ。
 本作は、作者がいかにその世界を苦心して造り上げたかが随所に滲み出た労作であり力作である。その最大の特徴がそのまま作中の筋と推理に噛み合わされている。
 一人一人の登場人物に丁寧な演出を行いつつ、読者に必要な情報を無理なくもたらし続けるのは相当な根気がいったことだろう。
 字数も手頃なので、ファンタジーにおけるミステリーとして過不足なく楽しめる一作である。

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