小説にすべてを捧げた男×脳梗塞という最悪のマリアージュ、それでも世界は

 ――光輝く。

 作中で語られる闘病記は生々しく、曲がりなりにも小説を書いている身としては吐き気を催すほどの過酷さを伴って迫ってくる。
 だが、完全な闇かと言われれば決してそうではない。
 端的に言えば、ここで刺す光は愛そのものだ。
 必要とされ愛されていることを。
 自分が誰かを愛していることを。
 それさえ思い出すことができれば、どんな最悪な状況でも人は乗り越えてゆくことが出来る。
 僕は山本弘先生は小説の天才だと確信している。だからこそずっとずっと追い続けてきた。
 その先生が今回のことでまた新たな武器を手に入れた。僕はそんな気がして仕方がない。
 不幸は不幸だったのだろう。だがそれは人として不幸だっただけであって、小説家として不幸だったのかと問われれば、もしかしたらそうじゃないのではないかとさえ僕は思っていて、その答えは復帰第一作にすべて集約されるはずだと思っている。

 最悪は、最強だ。

 上手く言えないが、ずっと待っていると本当にそのことをただ伝えたい。
 皆、刮目せよ。
 小説の底力がきっとここで試される。

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