探偵と不毛のネットバトル 4/5

 説明には僕のアカウントを使うことになった。

 舞台であるサイトについて、一通り主な機能を説明する。

 140字以内の文章を投稿すること。

 各人の投稿の集合でTLが構成されること。

 1対1や複数での会話もできること。

 DMという簡易メッセージ機能があること。

 諸々を説明するそのたびごとに、どうにもな生返事が来た。


 「消えたIDなら分かってる、なら中身も追えるはずなんだ」


 そんな友人に変化があったのは、しばらくTLを眺めていたときだった。


 「これ、どう言う意味なんだい」


   大草原である

    RT @XxxYyyZzz 草不可避


 @の文字と半角英語、それに文。

 ただし、@の後はリンクになっていない。


「ああ、これはリプライ、相手にだけ飛ばす会話文だよ。@の後がIDで、普通はここが相手アカウントへのリンクになる。でも、会話の後に相手がIDを変えたりするとこうなるんだ。色が変わってないのがその証拠」


 「自動では消えないのかな」


「自分で消さない限り、そのはずだけど」


 わずかに目を見開き。

 遅れて現れる、思案する顔。


 「なら、裏が取れる」


「どういう事?」


 「説明は後、と言うより見れば分かる。そのキーボードを貸してくれ。これでこう、検索すると、だ」


 タイプ音と、一瞬遅れてのEnterキーの打鍵音。

 ほどなく、検索結果が現れる。


 「見たまえ」


 絶句する文章が、モニターに広がっていた。


 「相手の親玉、こいつはね、邪悪ではあるが頭はまあ回る。ただやり方がどうにも感心しないだけでね、才の行き場所が見つかるといいんだが。だが周囲、これは本当に凡人、所詮は烏合の衆さ。自分で善悪を判断するだけの頭もない、調子合わせがせいぜいのね。こう言うときに足を引っ張るのは、えてしてそう言う奴らなんだよ」


「いや、でもこれは……」


 凡人だから、ではたぶんない。

 思いつけない。いや思いついたとして。

 こんなの、防げる訳がない。


 「剥がされた化けの皮って奴だね。どんなに酔っていても最低限、大通りで裸にならない程度の知性は欲しい所だ」


   @konohayawa 私はこのローターになりたい

   @konohayawa いっそ全部脱いで!!!

   @konohayawa 時間3万! 円光!!!

   @konohayawa 高校卒業したら相場は2時間2万だよ……

   @konohayawa 撮る角度工夫すれば見方かなり変わりそう

   @konohayawa これはギンギンですわ

   @konohayawa 本当、いつも綺麗な胸だねー

   @konohayawa ニーソで応えてくれてありがとー! 何か贈るわ


 反応があまりに多かったため、ここでは比較的マイルドなものを抜粋する。


 「派手に残してくれたもんだ。この様子だとたぶん、他にもいろいろ残ってるだろう。問題の画像も見つかるかも知れないぜ」


「ど、どうやって?」


 「それはだね」


 ――この時とった方法についての非公開を、読者の皆様にはお許し頂きたい。

 友人と相談した結果、こちらの方法にははっきり害があるとの結論になった。

 ただ結果として、数々の収穫があったとだけ述べておく。


 「画像の加工は厳禁だよ。こちらの方は事実なんだ、後は疑われないための細心さだね。やるとすればせいぜい、線を引いて強調するくらいだ。それもあまり好ましくないが。丸、そうだね、丸のマークがいい。もしくは楕円で強調すれば、字面を一切加工してないと分かるんじゃないかな」

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