存在が儚いからこそ、心に残せるものを持っている

 読了後、題名について考えさせられます。

 ある条件が必要で、その時だけ会える「お姉ちゃん」は、とても儚い姿をしていて、常に別れる時は掠れて消えてしまう。

 そばにいてくれる訳ではなく、いつでも会える訳でもなく、「そこ」とは何かと考えました。

 ここ、あそこ、そこ…距離を表す単語は複数あります。「ここ」が手元、「あそこ」が遠方というのが一般的だと思いますが、「そこ」とはどこなのでしょう? 指させるくらいの距離?

 彼女がいるのは、主人公が住む街ではなく、祖父母のいる村の、更に森の中というのならば、「そこ」ではなく「あそこ」になるはず…と疑問が一つありました。

 でも答えを出すのは簡単でした。

 絶望しかけている人が行けるところにいるんだから、「そこ」としかいえない、と。

 絶望した人にだけ姿が見え、くれた言葉も特徴的だと感じます。

 もし中学生の主人公に対し、「なりたい自分になれる」といっていたら、主人公はもっと早く次の絶望がきていたはずです。

 何故ならば、努力が及ばない事などいくらでもあり、そういう事態に陥った時、「嘘を吐かれた」と思っても仕方がないからです。

 だけど彼女は、「失敗しても残るものがある」と教えています。

 これが大きいと感じるのです。

 これを私は「プライドを持てる」と解釈しました。

 努力する事で、挑んだというプライドを持たせられる言葉…案外、教えてもらえない事が多いのではないでしょうか?

 ある条件が整った時しか会えない儚い存在だからこそ、はっきりと残る言葉をくれる、そんな強さを感じさせられる物語でした。