読了後、題名について考えさせられます。
ある条件が必要で、その時だけ会える「お姉ちゃん」は、とても儚い姿をしていて、常に別れる時は掠れて消えてしまう。
そばにいてくれる訳ではなく、いつでも会える訳でもなく、「そこ」とは何かと考えました。
ここ、あそこ、そこ…距離を表す単語は複数あります。「ここ」が手元、「あそこ」が遠方というのが一般的だと思いますが、「そこ」とはどこなのでしょう? 指させるくらいの距離?
彼女がいるのは、主人公が住む街ではなく、祖父母のいる村の、更に森の中というのならば、「そこ」ではなく「あそこ」になるはず…と疑問が一つありました。
でも答えを出すのは簡単でした。
絶望しかけている人が行けるところにいるんだから、「そこ」としかいえない、と。
絶望した人にだけ姿が見え、くれた言葉も特徴的だと感じます。
もし中学生の主人公に対し、「なりたい自分になれる」といっていたら、主人公はもっと早く次の絶望がきていたはずです。
何故ならば、努力が及ばない事などいくらでもあり、そういう事態に陥った時、「嘘を吐かれた」と思っても仕方がないからです。
だけど彼女は、「失敗しても残るものがある」と教えています。
これが大きいと感じるのです。
これを私は「プライドを持てる」と解釈しました。
努力する事で、挑んだというプライドを持たせられる言葉…案外、教えてもらえない事が多いのではないでしょうか?
ある条件が整った時しか会えない儚い存在だからこそ、はっきりと残る言葉をくれる、そんな強さを感じさせられる物語でした。
個人的には純文学のような緻密で繊細な作品だと思いました。
最後は涙ぐみながら読ませて頂きました。作品全体は確かにどこか切なさすら感じる幻想的な雰囲気ですが、その中に組み込まれた想いはとても激しく、重く、前へと向かって生きる美しさと力強さに胸が熱くなりました。
ストーリーの流れの作り方と心理描写の綴られ方が最高に素晴らしく、作中の時間や人物達の動きがとてもリアルに感じられます。まさに登場人物が生きて成長している作品です。
あまり言い過ぎてしまうとうっかりネタバレを口にしてしまいそうなので我慢しますが、彼女の存在に本当に感謝し、涙しました。是非読んでください。読み終えた後は熱い感嘆の息が零れます。
このお話を読ませて頂けて本当に良かったです。素晴らしい作品をありがとうございます。