車輪を転がして

 遊佐未森氏の『夏草の線路』をBGMにしたくなるご作品だった。巨大な苦悩を優しく見守るようでいながら、水も漏らさぬ完璧な文体はむしろ冷厳ですらある。作者の視線は過去の轍(わだち)を我々に届けるが、読者の我々はそこから未来を思い浮かべる。車輪の行く末を。

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