第5話 姪と運動会と美人上司。

 雲一つない快晴とまではいかないが、それなりに晴れて心地よい風が優しく流れる。そんな十月後半の日曜日。明日以降の天気予報は、秋雨前線により傘マークが続いている。今日という日を逃す手はないだろう、と思えるような運動会日和だった。


 紗月の通う小学校の校門の前に立ち、校舎を見上げる。


 学校というものを一通り経験してきた身としては、校舎の出で立ちなんて殆ど変わりがないという印象をもっていた。しかし、こう大人になって小学校の校舎を見上げてみると、本来持っていたイメージよりも大分小さく感じる。

 きっと教室の中はミニチュアの世界の様に感じることだろう。


 そう思うと、身体はでかくなったし歳もそれなりに食った。小学生の頃は、大人になることに憧れたりもしたけれど、なってしまうと存外そんなにいいものでもなかった。

 それはきっと憧れた大人になる前に、見た目や年齢だけ大人になってしまったからだろう。

 そんな物思いにふけながら校舎へ向かった。


 今日はきっとたくさんの父兄が訪れるだろう。身だしなみもある程度気を使わなければいけない。そう思い、今日はスリムパンツに白のYシャツ、薄手の紺のジャケットを羽織り薄茶色の革靴という比較的カジュアルな装いで赴いた。お昼も用意してもらっていると言う事で、手荷物は貴重品の入ったボディバックだけという、身一つと変わらないような軽装。


 校庭に広がる光景を目の当たりにした俺は、今の自分が色んな間違いを犯していることに気付く。


 昨夜、紗月から運動会についてのお知らせを見せてもらった。プログラムや持ち物、注意事項が記されている藁半紙のA4用紙だ。

 当日の持ち物に関しては、既に紗月は自分で用意をしていた。保護者用の連絡事項としては車やバイクでの来場の禁止や、観覧席での日傘・パラソル使用の禁止等が記載されていた。

 もちろん、記された持ち物は児童用のものだし、保護者の連絡事項に持ち物は記されていない。必要な物は常識の範囲でそれぞれ用意してくれということだろう。


 現在の時刻は運動会開始三十分前。そんなに遅く来たつもりはない。


 しかし保護者用の待合席は既にレジャーシート等で陣取った父兄で埋め尽くされている。装いも皆さんそれぞれジャージやスウェットなど動きやすい服装の人が多い。


 場所取りをする程の荷物の持ち合わせもなく格好すら浮いてしまた俺は、仕方なく校庭の比較的隅の方へ移動した。しかし大丈夫だ。周りには同じようにやらかしてしまった父兄、もしくは親族の方々が数名いる。一人じゃない、というのはこれほどまでに心強いものなのだろうか。


 まだ開会に時間があるからか、一部の生徒は保護者席の方で過ごしている。紗月の姿を探すように、俺は児童用の席の方へ目を向けた。どこが三年生の席だか分からないので遠めの視線がフラフラ泳ぐ。気がつくと誰かが俺のジャケットの袖を引っ張った。


「やっぱり来たんだ……」


 俺の袖の掴んだまま、不満そうな表情で体操服姿の紗月は言った。


「当たり前だろ」


 紗月は家を出る前にも「別に来なくていいから!」と捨て台詞を吐いていた。紗月には申し訳ないが見に来ない理由が見当たらない。今、この場に居るのは至極当然の流れと言えよう。


「わざわざ探してくれたのか? 悪かったな」


 俺の横にちょこんと佇む紗月の頭に軽く手を乗せる。


「べ、別に探してなんかないしっ! てゆうかその格好! メッチャ浮いてるんだけど!」


「そうなんだよなあ……皆さん、思ったよりもラフな格好で戸惑いを隠せない」


「まあ……ちゃんと言わなかった私のせいでもあるけど……」


「ん? 指定の格好でもあったのか? お知らせには特に記載はなかったはずだけど」


「いや……そういうわけじゃ……って、あ、サーシャちゃん?」




 紗月の視線の先を見るとサーシャちゃんとそのお母さんと見られる人物が、二人並んでこちらへ向かってくる。なんていうか目立ち方がヤバイ。


 特にお母さん。175センチはあるだろう高身長で八頭身。モデル級のすらりとしたスタイルに合わせて絶世のロシア美女とも言える顔立ち。周りのお父さんの視線を一斉に奪っている。

 そんな女神と天使がこちらへ向かってきている。俺は思わず身構えた。だって、ロシア語なんて分からない。


 心の準備もままならないが、女神と天使の二人は俺と紗月の前で足を止めた。


「サーシャの母、御園生 フェドリワ ユリアと申します。昨日は娘が大変失礼いたしました」


 とても流暢な日本語で深々と頭を下げる。それに合わせてサーシャちゃんも頭を下げた。


「い、いえいえ、とんでもないです! そ、そんなわざわざご丁寧に申し訳ありません」


 俺も反射的に頭を下げた。


 昨日の件の謝罪だろうが、目の前の二人が放つ圧に圧倒されて言葉がどもる。美女と美少女があまりにも眩しくて、直視するのを避けるためになかなか頭が上がらない。


 すると俺の顎に人差し指が添えられ、グイっと俺の顔を持ち上げた。


 視界にはサーシャちゃんのお母さんの顔が至近距離にある。その表情は不敵に頬笑み、眼差しは冷たく光っていた。


 昨日の恐怖がフラッシュバックする――――


 背筋に凍てつく程の寒気が奔り、俺は硬直して身動きが取れない。サーシャちゃんのお母さんは顔をゆっくり近づけると、俺の耳に軽くその唇が触れた。



「サーシャ程度じゃあ満足できなかったでしょう? この子、まだまだ未熟だから。足りなかったら私がいつでも相手してアゲルから遠慮しないで言って頂・戴」



 耳元、というか脳に直接語りかける様な囁きに戦慄する。


 そして――――最後にカプっと耳を甘噛みされた――


「!!!!!!!!!???」


 声にならぬ叫びが心の中で反響する。


「ふふふ。ダフストレーチ」


 そう言うとサーシャちゃんのお母さんは俺から身を離し、颯爽と去っていった。サーシャちゃんは取り残され、申し訳なさそうにこちらを見つめている。


「あ、あのう……お母さんが……すみません……」


 今にも泣き出しそうなサーシャちゃん。その表情もマジ天使。


「い、いや……気にしなくていいよ……ビックリしたけどなんとか持ち堪えたし」


「昨日のお詫びをしたいって言うから連れてきたのに……」


 サーシャちゃんは目に涙を浮かべる。


 この子の本質は最初の印象通り、控えめで純粋なのだろう。しかし血は抗えないか。出来る事ならこの純粋なまま、真っ直ぐに育ってほしいと思う。あの母親の元では難しいかもしれないが。


「ひとつ気になったんだけど、ダフなんとか? お母さん、最後になんて言ってたのかな?」

「ダフストレーチ。ロシア語で『また会いましょう』とかそんな意味だったと思います」


 怖っ!! 次会ったら何されるか分からないよ!! そんな機会こちらから願い下げだ。もう二度と会うことは無いだろう。あ、でもこういう学校行事でまた会ったりするのかな? でも公衆面前だから大丈夫だろう。多分…………大丈夫だよね? 妙なフラグ立てるんじゃないよ。


「なーんか嬉しそうだったし、今度サーシャちゃんの家に行って来ればあ?」


 紗月が冷たい眼差しで吐き捨てるように言う。


「どこが嬉しそうに見えたんだよ!! 俺はそういうの好きじゃないの!!」


「そうだよ紗月ちゃん。貴大さんは躾甲斐ないんだから。まあ、お母さんは逆にそう言う人の方が燃えるらしいけど。う~ん……私はもういいかなあ……」


 薄笑いを浮かべながら淡々と言うサーシャちゃん。さすがに紗月もちょっと引いてた。



 うん、この子はもう手遅れかもしれない。



「紗月ちゃーん! 貴大さーん!」


 今度は実愛ちゃんらしい元気な声が俺たちを呼ぶ声が聞こえる。俺は声のする方を見回した。

 保護者や生徒が散見しているのですぐには見つけられなかったが、こちらに近づいてくる二人に気付く。実愛ちゃんと、もう一人はお母さんだろうか。


 …………? 


 !!? 


 はあ!!? 



 お母さん!!!??



 俺は実愛ちゃんの隣にいる人物を見て、またも身体が硬直した。近づいて来た二人は俺たちの前で足を止める。


「紗月ちゃん、貴大さん。こちらが美人で自慢のお母さんです!」


 実愛ちゃんは隣いるお母さんを俺たちに紹介した。紗月はその人を見て「わあ、ホント美人……」と見惚れたような声を漏らす。


 薄手のパーカーにスウェットパンツにランニングシューズ、頭には日よけのサンバイザーを身につけたラフな格好。いつものビシっと決まったスーツ姿からは想像も付かない。


 しかし、どう見ても皆藤主任にしか見えなかった。


「は、初めまして……さ、紗月の保護者の橘です」


 他人の空似かもしれない。いや、そうであってくれ! そんな願いを込めて頭を下げる。


「ふふっ、初めましてって……それはちょっと酷いんじゃないの、橘くん」


 その人は少しイタズラな表情でクスクス笑う。


「やっぱり…………皆藤主任……ですよね?」


 冗談だろうが、酷いとか言わせてしまって俺の全身に冷や汗が流れる。いつもの如くびしょびしょだ。


「ふふっ、実愛の母の皆藤です。まあ、こういった形では初めましてなのかしらね。驚いた?」


 いつもの仕事中では考えられない優しい表情で微笑みかける皆藤主任。


 いやいやいやいや!! 誰だよ!? 俺はこんな人知らないよ! 本当に初めましてだよ!


「いやあ……驚きを通り越してパニック寸前です……未だに頭の整理がおっつかないですよ」


「ええ、そんな顔してるわね。……ダメ。……ホントに可笑しい」


 声を張り上げるのを堪えるように、軽くお腹を押さえつつ肩を震わせる。


 なんていうかもう、別人を相手にしている気分だった。


 仕事中は常に無表情で、その感情すら読みとるのが難しい。プライベートも謎に包まれたクールビューティ。そんな人が今、目の前で肩を震わせて笑っている。それに母親だと!?

 俺をからかう様な態度や口ぶりから、、どうやら俺と紗月の事は知っていた様だが……


 混乱していて何から整理していいか分からない。それに加えて皆藤主任を前に萎縮してしまっているから、どう受け答えたらいいかも考えられなかった。


 そんな中――生徒の集合を告げる校内放送が流れる。


「あ、紗月ちゃん、サーシャちゃん。そろそろ戻ろっか」


 実愛ちゃんの声と共に駆けていく三人。


 周りの散っていた生徒や保護者も所定の位置へ戻っていく。


 俺は皆藤主任と二人きりになった。


「その様子だと場所取りも出来てないんでしょう? 貴方の分の場所も確保してあるから一緒にいらっしゃい」


「は、はい!」と反射的に返事をして、言われるがまま皆藤主任の後を付いて行く。

 保護者席の最前列。大人四人は座れるくらいのレジャーシートへ案内された。


「ほら、立ってると後ろに迷惑だから早く座りなさい」


 ボーっとつっ立っていた俺はレジャーシートの上に正座する。その横に皆藤主任は脚を崩して座った。


 なんていうか、近い。充分な広さがあると言っても所詮はレジャーシート一枚。少しでも横にズレれば肩がぶつかってしまう様な距離感だった。もう頭ん中、訳が分からなくなっていて正座の姿勢のままカチンと固まってしまっている。


 皆藤主任はそんな俺の顔を覗きこむように、まじまじと見つめている。整った美貌が至近距離に感じるのは色々ヤバイ。


「ねえ、橘くん。前から気になっていたんだけど……私って、そんなに怖いかしら?」


 不満そうにジト目で言ってくる皆藤主任。心なしか顔が近づいてる気がする。


「え!!? い、いや、全然そんなことないですよ!」


「あらそう。じゃあ、もう少しリラックスしてもいいんじゃないかしら?」


「いやあ……こんな美人の隣にいて、リラックス出来る方がどうかしてますって……」


 本当は怖いですけどね! 上司相手にそんなこと言えるわけないじゃん! まあ、言った台詞は嘘じゃないけど、今は混乱と緊張が入り混じっていて優先される感情が理解できない。


 俺の返答に対し皆藤主任は


「そ、そんなこと言っても何も出ないわよ」


 と恥ずかしそうに視線を逸らし、頬を赤らめた。



 ヤバ。なにコレ。メッチャ可愛い。



 こんな表情が出来るのに、こんな感情豊かに振舞えるのに、何故仕事中はまるで別人のようなのだろうか。実は二重人格で本当に別人なのだろうか。

 仕事中に感じる皆藤主任の発言による身体を切り裂かれるような感覚。さっきまで気付かなかったが、今は微塵も感じられない。どちらかといえば感情の籠った温かさすら感じる。


 運動会のほうは開会式が終わり、プログラム通りに進行を始めた。


 皆藤主任は恥ずかしそうにした後、キュッ口を噤んでしまっている。妙な沈黙が流れ、いたたまれない気持ちになる。


 何か話題を……そう思った時にあることに気がついた。


 レジャーシート一枚に俺と皆藤主任の二人。加えて皆藤主任の物と思われる大き目のリュックサックが一つ。これだけだった。

 いてもおかしくないだろう人物の姿も陰も見当たらない。俺は特に深く考えずに口を開く。


「あ、あの……今日、旦那さんはどちらに……?」


 実愛ちゃんの母親と言うなら当然父親もいるだろう。沈黙を紛らわすための繋ぎのつもりだった。しかし、皆藤主任の表情を見て、いかに軽率な発言だったのかと後悔することになる。


 皆藤主任は明らかに表情を曇らせ、遠い目で口を開いた。


「私はね…………未婚の母なのよ」


 俺は返す言葉に詰まり息をのむ。皆藤主任はそのまま言葉を続けた。


「私が実愛を身籠ったのは十九の時。まだ未成年で学生だったわ。当時付き合っていた人も同い年。経済的にとてもじゃないけど結婚できるような状況じゃなかった。まあ、経済的になんとかなったとしても結婚はなかったでしょうね。妊娠を告げたら逃げられてしまったんだから」


「その相手の男性――今何してるんですか?」

 俺は少し強い口調で言う。


 別にその男性の今後が気になったわけではない。どららかといえば心底どうでもいい。ただ、命に対する無責任さに腹が立った。俺はこういう話が一番許せない。


「知らないわ。だって向こうから縁を切っていったんだから。うちの両親が相手の家へ相談に行ったの。そうしたらね「息子はまだ若く責任を背負える立場にない。今回の事はなかったことにして欲しい」って言われて帰ってきたわ。手切れ金も渡されたらしいんだけど突っぱねてきたって。なかったことになんて……出来るわけないのにね」


 クソっ! なんなんだ、その話は! 家族揃って無責任過ぎるだろ! 煮えたぎる怒りを抑えつけるように俺は唇を噛みしめる。


「でも私の両親は産むことも育てることも賛成してくれた。育児にも全面的に協力してくれて、とても感謝している。世の中には育てたくても状況的に難しくて、泣く泣く養子に出す人も少なくないと聞くし、私は本当に幸せなほう」


 そう言う皆藤主任の表情は、次第に柔らかなものへ変わっていた。


 皆藤主任は既に過去を振り切って前を向いていたのだ。思い出したくもないだろう過去を無暗に掘り返して後ろめたさを感じる。


「でも、いつまでも両親に頼ってばかりもいられない。私は私自身の力で実愛を育てていかなきゃいけない。私は自身の地位を手に入れるため、ひたすら仕事に没頭した。そこからは貴方の知る通り、冷たい仕事人間になったってわけよ」


 皮肉交じりに微笑む皆藤主任。


 この人には守りたいものがあった。背負っていく責任があった。


 今の皆藤主任からは仕事中に感じる無機質さは感じない。


 ただここにあるのは、子を想う一人の強い母親の姿だった。


「あ、あの……このことは他に知ってる人いるんですか?」


「他人に話すのはこれが初めてね。橘くん以外に知る人はいないわ。

 だから――――

 このことは、職場の人には内緒にしといてね」


 人差し指を軽く口に当て軽くウインクする。


 仕草の艶かしさがいちいちヤバイ。今までのイメージとのギャップが激しくてドキドキが治まらない。そういえば救心買ってないなあ。そういう薬じゃないから絶対効かないだろうけど。


「俺と紗月の事は知っていたんですよね? 最初からこういう話、するつもりはあったんですか?」


 父親の件は遅かれ早かれ話題にあがりそうなものだった。今回は流れで言わせてしまったが、必要以上に踏み込んだ部分まで話させてしまったとも思う。


「実愛がね「今度来た転校生の橘紗月ちゃん。両親居なくておじさんと一緒に暮らしてるんだって」っていう話を聞いてね。ああ、橘くんのことなんだろうなあって思ったわ」


「ああ…………なるほど」

 そんな橘さん、俺くらいなもんですよね。


「実愛と仲いいみたいだし、隠し続けてもいずれはバレるかなって思ったわ。少なくともこういった行事で顔を合わせる可能性も高かったし。だから疑惑を確信に変えるために昨日、実愛にリサーチに行ってもらったのよ」


「あんたの差し金だったのかよ!」


 俺は思わず突っ込みを入れる。上司に向かってあんたとか言っちゃたけど、そのせいで俺は予想外の被害を被ってるんだぜ。まだちょっと、心に傷は残ってる。


「ふふ、ごめんなさい。悪気はなかったのよ」


 俺のツッコミを気にするどころかクスクスと笑い、楽しむ様な素振りを見せる。絶対悪気があった顔をしていた。


「それにね、話すつもりは最初からあったわ。その若さで子供一人を養おうって心意気、なんか他人事と思えなくて……だから、あなたになら私の事、話してもいいって思ってたの」


 皆藤主任は職場の部下としてではなく、母親として俺の境遇を見てくれていたと言うことなのだろうか。そう思うと、嬉しい様な恥ずかしい様な心がむず痒い気分になった。


「さて、おしゃべりはこのくらいにして子供たちの競技を見ようかしらね。そろそろ実愛や紗月ちゃんの番よ」



 気付くとプログラムのいくつかが終了し、次は三年生の競技の番の様だった。


 皆藤主任はリュックサックからハンディのビデオカメラを取り出す。


 ああ――ビデオカメラ。なるほど、まったく頭になかった。周りを見回すと、他の保護者も当たり前のようにビデオカメラを構える姿が見受けられる。

 子供の活躍する姿を映像に収める。親として当然の考えだろう。どうやら俺にはそういう姿勢がまだまだ足りないようだ。仕方なくポケットからスマホを取り出し、カメラを起動させる。敢えて口には出さないでおくが、下手なビデオカメラよりも最新のスマホの方が画質綺麗なんだぜ。


 プログラムで確認すると次の三年生の競技は『飴食い競争』みたいだ。小麦粉の中に顔を突っ込んで飴を咥えて走るアレだろう。


 都合のよい事に保護者席はコースに面しているため近い距離で撮影することが出来た。俺たちのいる場所はゴールに近い。スタートラインが少し離れているので、紗月の番を逃さないように少し気を張った。


 先に出走したのは実愛ちゃん。皆藤主任が軽く手を振るとこちらに気付き、笑顔で手を振り返していた。

 実愛ちゃんはスタートの合図と共に勢いよく飛び出し、飴のトレーの元へ一番に到着する。そのまま豪快に顔を小麦粉の中に突っ込み粉塵を捲き上げた。そして煙を掻き分けるように颯爽と姿を現す実愛ちゃん。飴を咥えたまま一番にゴールテープを切った。

 顔中小麦粉で真っ白にした笑顔でブイサインを皆藤主任へ向ける。それに皆藤主任も笑顔のブイサインで応えた。


 そんな些細なやり取りに親子の絆を感じる。

 羨ましく感じつつ、俺は紗月の番を待った。


 ほぼ競技が終わり、残り数組の出走を控えた時点でやっと紗月の番が来た。


 俺は軽く手を振ると紗月もこちらに気付き、元気よく手を振り返し…………いや、違うな。顔を真っ赤にして、オーバーリアクションで身ぶり手ぶり何かを伝えようとしている。何かを叫んでいるようだがここまでその声は届かない。


 いや、なんとなく分かるよ。多分動画を撮るなって言いたいんだろう。こっちはそんなの知ったこっちゃない。撮ったもん勝ちだ。俺はお構いなしにスマホを紗月に向ける。


 スタートの合図と共に勢いよく飛び出し、飴のトレーの元へ一番に到着する。しかし、小麦粉へは控えめに口先だけチョンチョン付けてなかなか飴が取れないようだ。チョンチョンチョンチョンじれったい。もっとガッといけよ。


 そしてやっと飴が取れたのか、口の周りを真っ白にした紗月がこちらへ全力疾走してくる。


 おいおい紗月さん、こちらはゴール側だが、俺の胸はゴールテープじゃねえんだぜ。


 そんなふざけたことを思っていると、紗月が眼前まで迫ってきていた。


「撮るなって! 言ってるでしょ!!!!!」


 すれ違いざまに俺のスマホをぶん盗ってそのままゴールする紗月。


 おいおい紗月さん、これは借り物競走じゃないんだぜ。


 咥えた飴は叫んだ事で落としてしまったようだし、スマホは持ってくるし、ゴールした紗月はなにやら先生に怒られているようだった。


「紗月ちゃん、怒られてるわよ……」

「俺のせいですかね……?」

「正直、微妙なラインね……」


 少しして、怒られた紗月がトボトボこちらへ歩いてくる。


「は、恥ずかしいから……もう撮らないでっ」


 バツが悪そうにスマホを差し出す。


「分かったよ。これからは俺の心のメモリに焼き付けるから」


 俺がそう言うと紗月は表情を歪ませ、後ずさるように去っていた。隣の皆藤主任も苦笑いを浮かべながら明後日の方向を見る。


 いや、ちょっとなんか言って! 純粋にドン引かれると辛いんだけど!


 怒られた紗月を慰めるためにボケたつもりだったが大失敗に終わった。


 仕方なくスマホを起動し、さっき撮った動画を確認する。しかし写真のフォルダに何も画像が残っていなかった。どうやらちゃっかり削除していたらしい。

 おいおい紗月さん、いくらなんでもオールデリートはないんじゃないか。

 消された画像たちは、俺の心のメモリには残っていなかった。





 午前の部が終わり、昼休憩の時間になる。紗月と実愛ちゃんが加わりレジャーシートには四人となった。


「何が好きか分からなかったから色々作ってきたんだけど……」


 皆藤主任は少し恥ずかしそうにいくつかの弁当箱を差し出す。恐縮すぎて手を伸ばすのも躊躇われたが、実愛ちゃんがお構いなしに勢いよく全開してくれたので助かった。

 開けられた弁当箱の中にはおにぎりやサンドイッチがメインに添えられ、唐揚げやアスパラベーコン等の定番のオカズたちが並んでいる。


 まさか皆藤主任の手料理が目の前に並ぶ日が来るなんて……昨日まではその発想すら思い浮かぶ事すらなかっただろう。

 さすがに四人分を考慮したためか、並べられたお弁当は大量だった。遠慮して食べ残す方が失礼にあたるだろう。


「有難く頂きます!」


 そう言って手を合わせ、勢いよく食べ始めた。


 紗月も続いてサンドイッチに手を伸ばす。食は進んでいるようだが、ずっと脹れっ面で機嫌が悪い。動画の件は謝ったし、オールデリートの件はこっそり復元しておいたので特に咎めなかったのだが……


「そういえば橘君、今さらだけどその格好で大丈夫なの?」


 心配そうな表情で皆藤主任が問いかける。


「え? 大丈夫って何がですか? 確かに皆さんの動きやすそうな格好とは違いますけど……」

「それは紗月ちゃんが黙ってたんだからしょうがないよねー」


 実愛ちゃんがニヤニヤしながら紗月の方を見る。それに対して紗月は下を向きながら「ううぅ……」と小さく唸った。


「この学校の運動会、午後の部は『親子競技』がメインなのよ。だから参加する保護者は基本的に動きやすい格好でくるんだけど……」


「え!? そうなんですか!?」


 俺は慌ててプログラムを確認する。確かに午後の部の競技名の後ろに《親子競技》と記載されていた。


「任意参加だから全てに出る必要はないんだけど……三年生は親子ペア競技があるのよね」


 皆藤主任がそう言うと、紗月はおもむろに頭を抱えた。


「あーー嫌だーー。考えたくなーい」


 そんな紗月を横目に再びプログラムへ目を落とす。

 三年生は……二人三脚か。なるほど、紗月が運動会の存在を知らせず、俺が来る事を拒んでいた一番の理由はこれだろう。


 …………そんなに嫌か? まあ、確かに密着度高い競技だけど、紗月は俺と二人三脚したくないってことだよな。そんなに嫌か? そう思うと軽く凹むんですけど。


「まあ……紗月が嫌だって言うなら……先生とか代役って頼めるんでしょうか?」


「どうしても見に来られない保護者もいるはずだから、代役じゃなくて不参加という形は取れるはずだけど……」


「紗月ちゃんは嫌なんじゃなくて、貴大さんと密着するのが恥ずかしいだけなんだよねー。だって最近胸が―――――ふごごごご」

「みみみ実愛ちゃん何言ってるのかなー? べ、別に恥ずかしいとかそんなんじゃないからっ! 貴大と出ても全然問題ないし!!」


 紗月は何かを言いかけた実愛ちゃんの口を塞ぐ。


「まあ、紗月ちゃんが大丈夫ならいいんじゃないかしら。怪我には気を付けてね」


 そんな紗月と実愛ちゃんを見ながら皆藤主任はクスクス笑う。


「紗月、いいのか?」

「なんのこと!? 私は最初っから貴大と出るつもりだったし!!」


 顔を真っ赤にしながら紗月は言う。何をそんなに強がっているんだか。




 結局参加することになり、親子二人三脚のプログラムが始まる。


 数組出走を終えたところで早速俺たちの出番になった。


「橘君、負けないわよ」

 気合の入った表情で皆藤主任が言う。


「いや~あの二人には負ける気がしないんだけどな~」

 緩い表情で実愛ちゃんも続く。


 俺たちは皆藤親子と同じ番の出走だった。

 さて、当の俺たちはと言うと……


「掛け声は右、左、右、左でしょ!?」

「いや、それだとお互い出す足が違ってくるから混乱を招く。掛け声は一、二、一、二だ」

「ああ、そっか……どっちの足から出すの? 繋がってない方から?」

「繋がってる足からの方がいい。その方がお互いのリズムが掴みやすいからな」


 出走目前で作戦会議を繰り広げていた。まあ、ぶっつけ本番でもなんとかなるだろ。


「位置について」

 スターターの声と共に構えを取る。


「よーい」

 発砲音が鳴りスタートを切った。


「一、二、一、二」


 出足は良く、意外と紗月との息もあっている。俺たちは順調に一歩一歩、歩を進めることに成功した。この調子なら一番でゴールすることも――なんて考えは甘かった。


 だって、すんごいのがいるんだもん。


 TVで小学生がやってた三十人三十一脚ってあったじゃん。毎日血がにじむ様な訓練を繰り返し、その末クラスの心が一つになって駆け抜ける青春と感動の競技。

 あれ、めっちゃくちゃ早いじゃん。五十メートル九秒とかだよ。


 まあ、あんな感じ。本当に足が繋がれているのか疑いたくなるようなスピードで、皆藤親子は颯爽とコースを駆け抜けた。アレ、絶対練習してたよね?


 皆藤親子は俺たちがコースの半分にも届かないうちにゴールテープを切る。


 結果として完敗を喫したわけだが、今はそんな事どうでもいい。


 実際、俺たちは一歩一歩足を踏み出すことに必死で、周りの様子に気を配ってる余裕なんてなかった。

 なによりもやっぱり革靴ではかなり走りにくい。服装はともかく、靴の違いは大きなデメリットとなった。


 事前にきつく結んでおいたはずだったが、気付くと足を繋いでいない方の靴ひもが解けていた。激しい動きを考慮して作られていないので、わりと少し走っただけで解けたりしてしまう。

 出来るだけ踏まないように気を付けていたが、回避し続けることは不可能だった。


 靴ひもを踏んでしまった俺は、繋がれている方の足を出すのが少し遅れる。そこでバランスを崩したのは紗月の方だった。


 前のめりに放り出される紗月。


「危ない!!」


 咄嗟に後ろから紗月を抱きかかえる。


 そしてそのまま――俺が紗月を庇う様な形で二人とも地面に倒れ込んだ――


「いって……」


 俺は腰を強く打ちつけたが、紗月は俺に抱えられているので恐らくダメージは少ないだろう。


 ん―――――?


 紗月を抱えた指先に、僅かだが柔らかい感触を感じる。指を少し動かすとふにふにした。



 ふにふにふにふに。



 あ……これってもしかして――――


 そう思った瞬間、紗月がガバっと身体を起こした。目にいっぱい涙を浮かべ、顔を真っ赤にして身体を震わせながらこちらを睨みつけている。


「いや……紗月……これは……」


 俺の弁明を待たずに紗月は振りかぶる。腰のひねりが加えられた華麗な右ストレートは俺の鼻へ直撃した。


「ぶっはああぁぁ!!」

 俺は再び地面に倒れ込む。


「そ、そそそんなに触らなくてもいいでしょ!! このへんた…………って……え?」


 怒鳴り散らしたと思ったら俺の顔を見るなり青ざめる。


 身体を起こした俺は、わりといい感じの量の鼻出血をしていた。流れる血液を手で受け止めるも、すぐに手のひらは朱く染まった。口の中がすげー血の味がする。


「ちょ……大丈夫!!?」


 紗月は心配そうな表情で俺の顔を覗きこむ。

 いや、大丈夫って……お前がやったんだろうが。まあ、この場合はお互い様だろうが。


「俺は大丈夫だ。だから紗月――最後までゴールするぞ」

 俺は再び立ち上がりコースの終わりを見据えた。


 こんな出血大した事ない。どんな逆境でも最後までやり抜くことが大切だ。そんな姿を子供に見せてやるのが大人の役目ってものだろう。


「貴大……」

 紗月はジッと俺の顔を見つめる。


 俺の想いが伝わったのか、紗月はしゃがんで……脚同士を繋いでる紐を解いた。あれ? 伝わらなかったかな、この想い。


「そんなのいいから早く血を止めなきゃダメでしょ!!!」


 割と正論で怒られた。いや、俺もそんな気がしてたんだよ。この出血量はそこそこヤバイ。


 結局俺たちはコース上からフェードアウトして救護所へ向かった。


「ごめんなさい……」

 呟くように紗月は言う。


「何言ってるんだ。俺の配慮が足りなかったんだ。紗月のせいじゃねーよ」


「ううん、違うの。最初から私が運動会の事とか全部話していればこんなことにはならなかったと思う…………だから……ごめんなさい」


 確かに、知っていたら革靴を履いてくることはなかったか。


 しかし――どうなんだろうな。


 俺は紗月の保護者であるが、親ではない。そんな人物と、こういう学校行事に参加すると言うのは、全く抵抗が無いわけでもないだろう。特に小学生なんて、意外と周りの目を気にする時期だ。


「まあ、言いにくいことだってあるだろ。だからそんなの気にするな」


「うん……次からは……ちゃんと話すよ」


 結果的に水を濁す形になったが、変に尾を引かずに収める事が出来た。

 この出血はその代償として受け取ろう。


 いやー、小学三年生の胸でも意外とふにふに柔らかいものなんだな。まだまだボリュームは足りないけど。


 実はもう一生、口をきいてもらえないくらいの覚悟をしてたから本当に良かった……



 救護所で止血をするも時間がかかり、完全に止まった頃には運動会の閉会式が始まっていた。






 運動会が終わり、生徒や保護者たちはそれぞれ帰路についていく。

 俺と紗月、皆藤親子はそのまま帰らずに、小学校近くの公園で寄り道をしていた。


 思い返すとこの運動会に勝者はいなかった。昔ながらのチーム分け、得点による競い合いがなく、純粋に競技を楽しむことに特化していたように思う。親子競技の多さから、生徒や保護者同士の交流も目的にしていたのではないだろうか。俺が知っているイメージとは、少し異なる雰囲気を感じた運動会だった。


 俺にとっても忘れられない一日になったと思う。本当に色んな意味でね……


 紗月と実愛ちゃんは公園の大型遊具で遊んでいた。まったく、子供の体力は計り知れない。運動会で疲弊しているであろう身体を元気よく動かし続けている。


 俺と皆藤主任はベンチに並んで座り、缶コーヒーを飲みながら二人の遊ぶ姿を眺めていた。

 チラッと横目で皆藤主任を見る。微笑むような優しい眼差しで、ジッと実愛ちゃんを見つめていた。

 改めて職場の雰囲気とは別人だと感じる。俺は缶コーヒーを一口飲んだ。


「ねえ、実愛の名前の由来、聞いてくれる?」


 唐突に皆藤主任が口を開く。真剣な表情だったので、俺は軽く頷き姿勢を正した。


「この子には、誰よりも実りある愛情を捧げる。そんな想いを込めて実愛と名付けたの」


「とても……いい名前だと思います」


 皆藤主任の実愛ちゃんに対する愛情が感じられる。素直にそう受け取れた。


「でも最近思うのよ……あの子には父親がいない。あの子は父親の愛情を知らない。実りある愛情には、それも必要なんじゃないかってね」


「父親の愛情――――」

 俺は思わず出かかった言葉を飲み込む。


「そう……例えば……橘君が父親になってくれたら良いのにね」


 今度はいかにも冗談と取れる様な含み笑いで言う。


「からかわないでください。俺には……皆藤主任はもったいないですよ」


 取り繕いや謙遜ではない。今の俺は、皆藤主任のことを母親として魅力的な女性だと思っている。本当に、俺なんかにはもったいないくらいだ。


「そうね。橘君はこんなオバサンじゃ嫌よね」

「オ、オバサンなんてとんでもない! 皆藤主任は、本当に素敵な母親だと思いますよ」


「母親…………ね。まあ、いいわ。もう私の事、怖がっていないみたいだし、今日のところはそれでよしとしておいてあげる」


 今日のところは? まだ次の何かがあるのだろうか? そんな質問を返す前に実愛ちゃんが俺たちの目の前に現れる。


「お母さ~ん。お腹すいたあ~」

「そうね。日も暮れてきたしそろそろ帰ろうかしら」


 気付くと明るかった空もその色を失い、薄暗く濁り始めている。


「じゃあ橘君、また仕事でね」

「はい。お疲れ様でした。お弁当、とても美味しかったです」


 公園を出た俺たちは、それぞれ違う方向へと歩き出す。紗月と実愛ちゃんはお互いが見えなくなるまで手を振り合っていた。




 紗月と二人、並んで歩く。


「ねえ貴大。貴大は実愛ちゃんのお母さんの事嫌いなの?」


「嫌い? なんでだよ?」


「だってこの前、美波さん達が話してたカイドーしゅにんって実愛ちゃんのお母さんの事でしょ? なんかその時の貴大、不機嫌そうだったからその人の事嫌いなのかなーって」


 ああ、そんな話題も出てたっけな。よくそんな事覚えてたもんだ。


「いや、嫌いっていうか苦手なんだよ。仕事中は表情も言葉も冷たくて、一言でいえば怖い上司って感じだな」


「えー? すごく優しい人だったよ?」


「そうだな。俺も今日まで知らなかったけど、本当は素敵な人だったよ」


 さっきも言われたが、いつしか皆藤主任に対する恐怖心は消えていた。緊張も解けて自然に接することが出来るようになっていたと思う。そう考えると、明日からの仕事が少し楽しみにも感じた。


「すっごい綺麗な人だったしね。ねえねえ、貴大。美波さんとどっちがいい?」


「な、なんでそこで美波さんが出てくるんだよ!? そもそもタイプが全然違うから比べられるようなもんじゃないだろ!?」


「まあ、貴大に選ぶ権利ないしねー」

 紗月はイタズラな表情でケタケタ笑う。


「分かってるなら言うんじゃねえよ。悲しくなるだろ」


 まさにその通りだ。俺が美波さんや皆藤主任に魅力を感じて好意を抱こうと、向こうが俺を選ぶ事はない。


 憧れは憧れのままに。


 その先は――きっと、ない――




 秋の夕暮れはつるべ落とし。いつの間にか空の主役は月へと変わっていた。


 さっきの皆藤主任との会話を思い出す。


 父親の愛情――――か。


 横を歩く紗月を見ながら強く思う。



 父親の愛情なんて、この世で一番低俗で、どうしようもなく信用出来ないものだと――



 そんな台詞、皆藤主任の前では言えなかった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る