12. 別離

カエデが学校から戻ると、バルコニーは人気のない虚ろな静けさ包まれていた。

「やあ、おかえり。」

鈴を転がしたような透き通った声と共に肩越しに振り返る、いつもの姉の気配は何処にも無かった。


季節は秋。夕方ともなれば既に陽は傾き、遠くの空には夜へと連なる黄昏空が迫る頃。

アンティーク・ランタンの載ったテーブルも、読みかけのまま伏せたマンガも、湯が半分ほどに減ったクマのゆるキャラの電気ポットも、まるでそこに相方が居る光景など想像することさえ拒むかのような孤独さで、出かけた時のままの状態を保って静止していた。

カエデは自分の半身を喪ったかのように思えて、夕闇迫るバルコニーにいつまでも立ち尽くしていた。

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