11. 傾倒
カエデは、段々とモミジに依存する傾向が強くなっていった。
学校からの帰りは寄り道もせず、友達と待ち合わせなどすることもなく家へと直帰。
中学3年生に上がる頃には学校にも行きたがらなくなり、マンガや電気ポット、ラジオ、雑誌など、あらゆる物をバルコニーに持ち込んで、一日中そこで過ごすようになっていた。
そんなカエデを、母親は心配そうな眼差しで見つめていた。
いつまでも幽霊と一緒に居られるわけではない。自分も、いずれカエデよりも先に旅立たなければならない。
ある日、カエデを説き伏せて久しぶりに学校へ遣ることに成功した母親は、2人分のお茶を淹れてバルコニーに上がり、モミジに語りかけた。
長い間カエデの心の支えになってくれたことをとても感謝していること。
カエデの霊が見える体質は、自分譲りのものであること。
カエデも、あと何年かすると霊が見えなくなるであろうこと。
そうなった時のことを思うと、モミジにあまりにも依存している今のカエデは酷く危なっかしく思えること。
誰もいないバルコニーで一人、母親は娘への想いを訥々と打ち明けていく。
母親が語り終わる頃になると、辺りはオレンジ色の静寂に満たされていた。
向かいに置いたティーカップの、既に冷め切った紅茶が微かに揺らいだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます