10. 姉妹
カエデは急いでベッドから下りると、ブランケットを抱いたままバルコニーに出た。
「怖い夢を見たの・・・?」
心配そうなモミジの顔。カエデは声を上げて泣いた。
「怖かったんだね・・・」
伏し目がちに微笑みながら優しく包んでくれるモミジ。カエデはそこに母親とは違った安らぎを感じて、鼻をすんすん鳴らしながらも徐々に落ち着きを取り戻していった。
その後しばらくアンティーク・ランタンを挟んでお喋りをしたカエデは、安心するとそのまま眠ってしまった。あどけない表情で寝息を立てるカエデを、モミジは幸せそうな表情(かお)で一晩中見守っていた。
「・・・ん」
鳥のさえずりが聞こえる。
「やあ、おはよう。」
鈴を転がしたような澄んだ声。
「あ・・・」
ブランケットがかけられていた。
「お、おはよう・・・」
昨夜のことを思い出したカエデは、ブランケットを抱き寄せながらやや上目遣いでモミジを見る。
「〜♪」
モミジはすごくご機嫌だった。
その日、カエデは学校へも行かずに一日中モミジと過ごした。
「ただいま〜。」
夜になって、母親が帰宅した。
家は真っ暗だった。
「カエデ〜?」
下に人の気配がないので、2階に上がってみる。
バルコニーの部屋をノックした母親は、しかし返事がないのを見て取ると、そっとドアを開いてみた。
カエデは、一人ベッドで寝息を立てていた。
「・・・。」
音を立てないように気をつけながら、ドアを閉める。
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