8. 留守番

「じゃあ明日の夜には戻るから、ちゃんと学校に行くのよ?ご飯も冷蔵庫にあるのをチンして食べてね。」

カエデが中学生に上がったある日、母親はそう言い含めて出かけて行った。

単身で街に残っている父親が、珍しく風邪をこじらせてしまったのだった。

「うん・・・行ってらっしゃい。お父さん、はやく快くなるといいね。」

カエデは、やや心細そうに母親を見送った。

小ぢんまりしてるとは言え、裕福な人が建てたこの別荘は、母と二人で暮らしていると少しスースーする広さ。カエデは言いようのない淋しさを覚えた。

人の気配がない廊下。靴下が床を擦る音と床鳴りの音とを交互に鳴らしながら、リビングへ戻ってトスンとソファに腰を落とす。

キーン・・・という血の巡る音を聞きながら、何をするでもなく一人の時間をやり過ごした。


夕方、薄暗いリビングで空腹を覚えたカエデは、明かりの点いていない台所で冷蔵庫を開いた。

庫内灯の明かりに顔を照らされながら「きょうのお昼」と付箋の貼られたチャーハンを取り出すと、言われた通りレンジで温めて一人で食べた。

空腹が満たされると後は特にする事もなくて、風呂にも入らず早々に寝てしまうことにした。

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