8. 留守番
「じゃあ明日の夜には戻るから、ちゃんと学校に行くのよ?ご飯も冷蔵庫にあるのをチンして食べてね。」
カエデが中学生に上がったある日、母親はそう言い含めて出かけて行った。
単身で街に残っている父親が、珍しく風邪をこじらせてしまったのだった。
「うん・・・行ってらっしゃい。お父さん、はやく快くなるといいね。」
カエデは、やや心細そうに母親を見送った。
小ぢんまりしてるとは言え、裕福な人が建てたこの別荘は、母と二人で暮らしていると少しスースーする広さ。カエデは言いようのない淋しさを覚えた。
人の気配がない廊下。靴下が床を擦る音と床鳴りの音とを交互に鳴らしながら、リビングへ戻ってトスンとソファに腰を落とす。
キーン・・・という血の巡る音を聞きながら、何をするでもなく一人の時間をやり過ごした。
夕方、薄暗いリビングで空腹を覚えたカエデは、明かりの点いていない台所で冷蔵庫を開いた。
庫内灯の明かりに顔を照らされながら「きょうのお昼」と付箋の貼られたチャーハンを取り出すと、言われた通りレンジで温めて一人で食べた。
空腹が満たされると後は特にする事もなくて、風呂にも入らず早々に寝てしまうことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます