9. 悪夢
誰もいないはずの廊下に、人の気配がする。ズルッ・・・ズル・・・と何かを引きずるような音。呻き声のような音もする。一つじゃない。聞き覚えのある音だった。
カエデは頭から布団をかぶり、膝を抱えるようにして身を強張らせる。小さく丸めた背中からどっと汗が噴き出した。
ガチャ・・・ギィ・・・・・・
ドアを開ける音。間違いなく、カエデがベッドで震えるこの部屋のドアだった。
「ああああアアァァァーー・・・!!!」
耳をつん裂くような、女の子の叫び声がした。
バンッ!バンバンバンッ・・・!!
窓ガラスを激しく叩く音。
その音で目を覚ました。
ベッドの上。ブランケットの端を固く握り締めながらガタガタと震えていた。
「・・・。」
目だけを動かして辺りの様子を窺う。
・・・静まり返った部屋。怖い気配は絶えているように思えた。
身体を起こして呼吸を整え、額の汗を張り付いた前髪ごと手のひらで拭う。
ベッドの傍に枕が落ちていた。拾おうとした背中に湿った冷たさを覚えて、ふるるっと身体を震わせる。
コンコン・・・。
窓から優しいノックの音。
目を遣ると、月明かりに照らされたモミジが泣きそうな顔で張り付いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます