6. 思い出

モミジと知り合ってから、カエデは毎日がとても楽しかった。まるでお姉ちゃんができたみたい。自分の部屋からバルコニーへ出れば、いつでもお姉ちゃんとお話ができる。

小学校で仲の良い友達がいないカエデは、家に帰ると一人バルコニーに上がって過ごすことが多くなった。


母親はモミジを見ることが出来なかったけれど、カエデから話を聞いて、ひとまずは引っ越してきて良かったと思っていた。

そして「吹きさらしではカエデもモミジさんも困るだろうから」と言って、バルコニーに屋根と風よけのためのサッシを付けてくれた。この改装でバルコニーは半室内のようになり、雨が降っても濡れることはなく、風が強くても髪を手で押さえなくて良くなった。

そこにテーブルと椅子のセットをしつらえて、モミジとカエデがお茶をしながらお話ができるようにしてくれた。テーブルの真ん中には、ちょっとお洒落なアンティーク・ランタン。

この計らいに、モミジはとても喜んだ。

「幽霊やっててホントに良かった!!(T▽T!」などという謎の言動を放っていたと伝えると、母もまた「喜んでもらえて良かったわ^^。」と目を細めた。


揺れるアンティーク・ランタンの光を囲んで、カエデはモミジに色々な話をした。

キライな先生のこと、苦手な友達のこと、図書室でまた面白い本を見つけたこと、量が多すぎる給食のこと・・・。モミジは生前のことを殆ど覚えてないとのことで、学校での話をするといちいち驚いて喜んだ。


モミジもまた、このバルコニーから見てきた色々なことをカエデに話してくれた。

春は遠く川沿いの咲く桜の花が見えること。夏は山の中腹にある神社から盆踊りの唄が聞こえて来ること。冬は朝露に濡れた葉が朝日を浴びて、山の稜線が一斉に輝くこと。そして、山が一斉に色づく秋はとりわけ眺めが美しいこと。恐らくこの町で紅葉の眺めが一番良いのは、このバルコニー。自分はとても運の良い幽霊だと。そう言って屈託なく笑った。

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