とても読みやすい作品ですが、内容の濃さはすごいです。
現在、第四章が佳境を迎えています。
SFでありながら、アポカリプス後の生活が細かく描かれ、すごくリアル。
そして登場人物の心理描写が見事で、心にぐっと迫ってくるのです。
情景描写も素晴らしいです。主人公の見ている風景が目に浮かぶようです。
カクヨムコン参加作品です。
私は今回、完結するまでレビューは書かないようにしようと思っているのですが、こちらすでに十一万字を越えており、また、大変良質な作品なので、是非多くの読者さんにリアルタイムで追いかけて欲しいなと、今レビューすることにしました。
読みやすさと質の高さを両立させている稀有な作品です。
どんな嫌な世界でも、人は生きていかないといけねえ! しかしそうは分かっていても、人間はつらいことや苦しいことがどちゃくそやってきやがる! でも、それでも顔をあげていくのが人間ってものよ! 俺はこんな思いをこの物語から強く感じた! そう思わせるくらい、登場人物それぞれにいろんな苦難が立ちはだかってくる! 詳しい内容はネタバレだから言えねえが、それでも色んな手助けや自分なりに努力して解決していく! つまり! ここにいるのは人間! それも人間臭いながらも、カッコよく生きている人間がいるんだ! すげえ! の一言だ!
失礼しました。
上でも言いましたが、この作品はそんな人間がよく書かれています。その中でも一番感動したのは4-6です。私は書籍にせよ、ネット小説にせよ、少しは小説というものを読んできたつもりでした。しかしこれが、このシーンがここまで綿密に書かれたのは初めて見ました。とても感動しました。その内容は一言ではどうしても言い表せないので、是非とも皆さまの目で見てほしいです。
本作品には非常に素晴らしいレビューがすでに沢山寄せられていますので、私は少し違った観点から書かせて頂きます。少し風変わりなレビューになってしまうかもしれませんが、どうかご容赦を。
私は基本的に作家読みをする人間なので、カクヨムに掲載されている陽澄すずめさんの他の作品も大方拝読させて頂いております。その中に『楽園の子どもたち』という印象的な作品がありまして、本作『めぐりの星の迷い子たち』は、そちらの作品の良い部分をさらに突き詰めた、陽澄すずめ作品の進化系という認識で拝読させてもらっています。
語り手を巧みに変えての精緻な心理描写と、それらが齎す叙述トリック。あるいは構築ギミックとでも呼ぶべき計算し尽くされた展開。両作品に共通する魅力はやはりこの点であると思いますし、時に大胆不敵に読者を裏切っていく小悪魔的な構成は、おそらく作者様の人間性を如実に表したものなのではないかと思います。
非難を恐れずに申し上げるならば、怖いくらいに女性的なのです。
科学的な根拠や正否を重んじ、破綻の無いロジックを組み上げることに注力したSF作品が多い中で、陽澄すずめさんはあくまでも【人間を描くこと】に重きを置いたSF作品を紡がれる作者さんなのだと感じていました。またその感覚は、本作を読み進めていく内に揺るがない確信へと変わったのです。
作者様にとって、SFというジャンルは人間を描くための剣なのではないでしょうか。科学という剣が時に倫理を揺るがすように、作者様はSF作品を描いて「人間とは何か」を問いかけてきます。
そして多くの方が、その切っ先の鋭さと美しさに魅入られているのです。
誰もが未来に希望を持ちたい。
しかし、この作品世界では、基本的に未来への希望はない。
そんな世界でも、人はささやかな幸せを求めて、小さくても希望を持とうとする。
周囲がそのような状況で、登場人物たちは疑いつつも前に進もうと努力している。
良くも悪くもみんなが順応している悲しい現状に立ち向かおうとしている。
そこに人の強さを感じさせられる。
もちろん、辛い現状に順応していることは、人の弱さでもあり強さでもある。
大勢は日々を生きることに懸命なのだから、新たな何かを切り開けないとしても弱いとは言い切れない。
環境に順応し耐えて生きていくことは強さでもあるのだ。
だが、今のままなら決して希望は持てない。
だから、その先は?
登場人物たちはそれぞれ「その先」に向けてあがいている。
それは現状に耐えられない弱さでもあり、希望を掴もうとする強さでもある。
この作品ではいつも人の弱さと強さの双方を突きつけられる。
そこが人間らしさを感じさせるところでもあり、この作品の魅力だろう。
最終章が近づいている。
結末をドキドキしながら待つとしよう。
終わってしまった地球、その中で一日一日を必死に生きる人々。
けれど地球からコロニーへ逃れた人々も統治社会の中。そんな鬱屈した世界からこの物語は始まります。
疫病や餓えが常につきまとう地球。娯楽のない極限状態で人々が頼るものといえば「神の化身」「植物の生長」「家族の帰宅」など、とてもささやかなものばかり。
けれど、そこに読み耽ってしまうのは荒廃した世界のリアリティであったり、嫉妬や恐怖、そして読み手である私たちにも理解できる悩みであることが、とても大きいからだと考えます。現代だって決して生きやすいワケじゃありませんからね……(苦笑
そして物語の進行も意外なところから、意外なものが降ってきたりと、決して飽きさせない展開がなんともニクい!
これは作者すずめさんの持ち味ですね。展開を読みきってやる、と言う挑戦心から読んでみるのも面白いかもしれませんね?
個人的には2章という少ない枠組みでトワの人間らしさが綿密に書かれていて、とても胸に来ました。
けれど、その後の展開では……おっと、続きは本文で読んでくださいね?(笑
荒廃した地球にはそれでも命が細々と生き延びていて、文字通り生きるために生きている人々の姿を描く筆者さまの筆致は綺麗で残酷でしかしどこか温もりを感じます。
登場人物の心情の開示が秀逸で、優しいだけでなく汚い部分も繊細に表現されていて、読んでいて「あ、人が居る」と何度も思いました。
時系列の追い方も上手く、ここがああなって。おーここに繋がるのか。ほうそれで…なんと…!?ふぁ!?と手のひらでころころされながら読み進めるのが楽しいです。
そして章の区切り方が悪魔的…早く続きくださいお願いしますなんでもします(なんでもするとは言っていない
20XX年。人類は荒廃した地球を捨て、月コロニーへの移住を完了している。
しかし、地球に残る人々もいた。彼らを襲う自然の猛威、病と乾き。文明が崩壊した地球で、人々は神に祈る。その希望の象徴とも言えるのが、主人公の少年ナギだ。
ナギは「神の使い」であるという自らの役割に悩みながら大人になっていく。
一方、月コロニーは神なき世界。最適化されたプラントで培養される動物や植物。遺伝子操作された「デザイナーズ・ベイビー」と呼ばれる子供たち。そこで生まれ育ち、罪人として地球(月の民の流刑地になっている)に送られることとなった青年トワ。
彼はあるものを地球に持ち込んだ。人類の希望となるかも知れない「種」を——。
この作者さんは、思い描いた世界観を文章で表現することにおいて、カクヨムでも屈指の人ではないかと思います。自然に支配されながらも、所々に文明の残骸がある地球。砂嵐の場面では、視界が閉ざされていく映像が目に浮かぶよう。月で生まれた人間が初めて地球に降り立つ場面では、その未知なる身体感覚を疑似体験できるようでした。
家族の物語としても二転三転、王道を行きながらも飽きさせない工夫があります。
神とテクノロジーが分離された2つの世界が再び交わるとき、何が起こるのか?
今から結末がとても楽しみな作品です。
荒廃した地球と、人類の移住が行われた月の間で、結ばれる絆と希望の群像劇。
話が始まるのは、退廃した地球の男女の子供からだ。神代の名を冠した二人の子供は、地球に残された人々にとって、まさしく神のような役割を果たしていた。そう、この砂だらけの地球で、二人の子供は人々の、希望だった。しかし二人の母親は亡くなり、父親は月へ移住してしまっていた。男の子は父を恨んでいた。そして二人の子供の母親が亡くなる原因となった病が、地球の人々を蝕んでいった。その病に薬は存在しなかった。
物語は月に移される。月に移住した人々は地球のことを、罪人の流刑地として認識していた。そんな中、若き植物学者の青年と、二人の子供の父親が出会う。そして地球の流行病の薬となる花が見つかる。二人の子供の父親は、流刑になることで、その花の種子を地球に持ち込もうとしていたのだ。これに協力した青年とその恋人は、それを見送る。それは月から託された希望の種子だった。
しかし青年は、このことで罪に問われることとなる。そして恋人と悲しい別れを迎え地球に降り立つのだが……。
壮大なスケールで絶望的な病と人間を戦わせながら、ちゃんと希望が残るように組まれていることが分かる。群像劇であるため、地球の過酷さを見せられると、判官贔屓したくなるし、月のお偉いさんは敵に見える。しかしそう言った単純な二項対立ではなく、月側にも地球のために動く人がいて、そちらの視点に立てば、月側にも声援を送りたくなる。そして、視点となるキャラクターたちが必死になって残そうとする希望を見届けたくなる。
希望の種子が、地球で花を咲かせ、人々に届きますように――。
心をわしづかみにされる作品。
壮大ながら、分かりにくさはゼロで、むしろ読みやすい。
是非、ご一読ください!
今よりももっと未来。擦り切れた世界で懸命に生きる人々の群像劇。
苛酷な自然環境、限られた資源の中を必死に生きる人たちを、ヒルコ症という無慈悲な病から救うために、あらゆる人たちが人生をかける。
いやぁ、「エモい」ってこういうことを言うんちゃう?
もう何回もバスルームに駆け込んで、シャワーで涙を誤魔化したもんね。
確かに登場人物たちが苛酷な運命に翻弄される様を見ると、思わず涙が溢れそうにはなるんですけど、ぼくが涙を流した理由は違うんですよね。
この作品に出会えた喜び?
それなんですよね。
まだ物語は完結前なんですけど、これ、物語が最高の形で終わったなら、自分の涙腺とかどうなってしまうのかと思って、すでに南アルプスの天然水を2リットルのペットボトル6本入りの箱で用意してます。
荒廃に瀕した世界に生きる人々を描く、非常に良質なSF群像劇です。
滅びを臨む大地にあって世界の在り方に翻弄される少年少女、過酷で理不尽な運命に抗う大人たち、それらを結びつけてゆくのは「希望の種」。
植物についての知識を織り交ぜつつ丁寧に構築された世界観は、「病」「砂漠」「電波塔」「火山」などがめぐりゆき、重なり合い、彩られています。
そうやって鮮やかに描きだされた物語世界をゆきめぐるのは、どこまでも等身大な人間たち。生々しくあたたかみのある人間模様は、読んでいるこちら側の胸をも締めつけて先へ先へと心を誘います。
すれ違い、ままならず、それでも進みゆく大人たちの願いはやがて、子供たちの——……と、詳細はぜひ本編にて見届けてください。
高度に発展した月と、捨て置かれるようにして荒廃した地球。
その二つの星をめぐるSF群像劇です。
地球で生まれ育った子どもであるナギ、サク、サクの親であり村人たちから一線引かれていたミカ、対して月で生まれ育ったトワ。
彼らの視点を軸にして語られる物語は、一人一人の立場や心情をしっかりと描きつつ、現在と過去を往き来し、縁を複雑にしながらやがて未来へと向いていきます。
ある場所で、ある時間で種を蒔かれた縁は、たとえ離れ離れになっても時を経て芽を吹き、やがて巡って「希望」として結実します。
「めぐり星の迷い子たち」。そのタイトルの意味を、読みながら識るでしょう。そして迷い子たちが迷いながらも歩き続ける姿に、明るい未来を願わずにはいられません。
これは荒廃した地球を主な舞台としたSF群像劇です。
この物語の地球は、人類が生活するために不適切な土地と成り果てています。自然の恵みは壊滅し、文明は瓦礫となれ果て、砂漠と砂埃と火山灰の中に覆われ、ヒルコ症と呼ばれる伝染病がはびこっています。
こうなった直截的な原因は何なのか、原子力発電所が大爆発を起こしたためなのか、それともそれ以外の原因が折り重なったためなのか――。ともかくも、人類は地球を棄てて月へと移住しました。しかし、移住のための最後の宇宙船が出て十年――地球には、まだまだ取り残された人々が生活していました。
棄てられた大地、棄てられた人々。もはや猛威でしかない自然と伝染病とに身をやつしつつも、人々は静かに終わりへと向かっています。
そんな物語の主人公の一人は、ナギと呼ばれる半陰陽の少年です。彼は、双子の妹であり同じく半陰陽であるナミと共に、共同体の特別な存在として祀り上げられ、『神の化身』と呼ばれています。ただし、それは絶望的な生活を強いられた人々が創り出した根拠のない迷信でもあります。ナギ自身は、祀り上げられることに空虚感を抱いており、それどころか、自分は誰よりも役に立たない存在ではないかと非常に強い劣等感を抱いています。
しかし勘のいい人ならばすぐに気づくでしょう――ナギ・ナミ・ヒルコなどという言葉が、日本の創世神話に出てくる固有名詞を元にしていると。
これは、終わりの中に息吹く始まりの物語なのです。
絶望的な大地と激しい劣等感に囚われたナギ――しかしあるとき、ふとしたきっかけから、行商人であるコウの旅へついてゆくこととなります。そしてその旅の途中で見つけたものは、ある人物が残した熱い「思い」でもありました。
この「思い」を一つの大きな軸として、物語は大きく動いてゆきます。
それが一体何であるのかは、ここで書くことは憚られます。しかしそれは、この荒れ果てた大地に芽吹く一つの希望であり、一つの命の形でもありました。
非常に過酷な大地で生活を送る人々、そんな彼らの中で交錯する期待の視線や侮蔑の視線、人間関係の中で押し潰されそうな感情を抱える登場人物たち。世界観は非常にリアルであり、登場人物たちの息が伝わってくるようなしっかりとした文章で物語は紡がれております。
しかしそんな中にあって、どこか不思議な、マジックリアリズム的な雰囲気が漂っていることもまた事実であり、それも物語の大きな魅力の一つです。
はたして、物語の軸となる「思い」とは一体なんでしょうか?
そして、死にゆく大地の中で生まれる命の形とは?
このレビューを目に留められた方は、ぜひともこの物語を読んでください。きっと、生命の神秘と、切なさと、我々がここに生きているという実感が与えられることでしょう。そして、あちこちに散りばめられた伏線に驚かされ、物語に惹き込まれるに違いがありません。