夜咄小咄

丁_スエキチ

魔法使い

物理学者の男が異世界へ飛ばされてしまった。

ここが元の世界と違うことは解るが、どう違うかは解らない。近くにいた女性に尋ねてみた。

「すみません、私は物理学者です。ここはどういった場所ですか」

「はぁ、物理?そんな科学みたいな迷信じみた事言わないで。この世界を支配してるのは魔法よ、魔法。あと、この辺は少し前まで内戦が続いてた場所よ、そのせいで有力な魔法使いが不足してる」

成る程、科学が魔法で魔法が当り前の世界のようだ。科学者の一人として好奇心が疼く。

「魔法とは何から成り立っているんですか」

「本当に魔法を知らない…?簡単に言うと、四つの基本魔法から成り立ってるらしいね。

まず、全ての霊量を持つ物体が互いに引き合う誘引魔法。

次に、念場や呪場の影響で念荷に作用する念呪魔法。

あと、微小魔素子同士を結びつける強魔法と弱魔法ってのがあるけど、私にはよく解らない。

とりあえずこの四つの魔法のおかげで、物を持ち上げることができたり、星が動いたりするわけ」

「箒で空を飛んだりは?」

「だからこの世界は魔法でできてるんだってば…。そんな非現実的な『科学』…」

「成る程」


後に男はこの地域の腕利きの魔法使いとして有名になった。

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