外から見るか、中から見るか
2人の男が向かい合って座っている。
若い男がぞんざいな口調で話す。
「ハリーポッターの友達の親父が車持ってて、それに魔法を掛けてるんだが、知ってるか?」
「空を飛べるんだろう?」と中年の男が書類を見ながら雑に返答する。
「それもそうなんだが、実際より中を広くしてあるんだ」
「ふむ」
「しかしな、これは魔法に限った事じゃない。軽自動車を外から見たって只の2mの立方体に過ぎないが、中に乗りゃ4、5人座れちまう広々空間だ。教習所に通いたての奴が、対向車にぶつかると錯覚するのも同じ理由さ。実際には余裕があるのにな。家だって、外側は一周回るのに30秒もかからん小さな箱だ、しかし中から見れば、何人もの人間が飯食って布団敷いて寝てるし、大量の物が収納されてる。六畳間とか大家族ってんなら別だが、一軒家住んでて狭いって思うことはあんま無ぇだろ?道歩いてて脇を通り過ぎるのは一瞬なのにな。要するに『外から』と『中から』じゃ心理的な体積は変わるって事さ」
「それが犯罪犯して『外から見たら』狭い拘置所に入って『中から見た』感想か?貴重な接見の時間を削りたくはない、無駄話はこのくらいだ」
中年の弁護士は、若い犯罪者にそう諭した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます