聖なる夜

クリスマスイブも午後9時を回り、所謂「性の6時間」に入った頃合いのこと。これからどこで一緒に夜を明かすか品定めしている若いカップルをすれ違いざまに見て、舌打ちしながら歩く男がいた。

「全く、クリスマスはいつからこんな恋人の日に成り下がったんだ。イエス様の誕生日だってこと覚えてる奴は居ねぇのか?」

髭をボサボサに伸ばした彼が悪態交じりに溜息を吐くと、寒さのせいか白い煙が残る。

「リア充はいいよな、一晩中イチャイチャしてればいいんだからよぉ。こちとらぁこのクソ寒い夜に仕事だよチクショウ」

寒いとは言いつつ、彼の仕事着は暖かそうだ。帽子も付いている。

「今年は雪降ってねぇからまだマシなんだよな、ホワイトクリスマスだっつってテンション上げてる都会の浮かれた阿呆どもなんてクソッタレだ!というか身体より心が寒い、なんで毎年毎年一人で夜勤しなきゃならねんだよクソが。リア充は爆発してろ、ってもうベッドの上でしてますか」

社畜で構成された日本のサンタクロース達は当然恋人を作る暇などある筈もなく、皆リア充へのヘイトを溜めながらプレゼントを配り歩くのであった。

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