それが、過去のことなら……

明日、結末を迎えるということで、最終話を前にレビューを書くことに意味があると思っています。

1話から89話まで一気に読了しました。
読みやすい文章と、1話が短い構成のためすらすらと物語の世界に入り込めました。

以下は男性目線の感想です。おそらく女性読者とは異なると思いますのであしからず。(注意:ネタバレあり)

高校生の透、元高校教師で24歳の凪。
歳の差恋愛にありがちな女性側がうじうじと考え込む内容で、男性読者にとっては物足りないと感じる場面が多々あります。
当初、大人びた雰囲気の透に感情移入しづらく、凪の年下への戸惑いにも苛立ちを覚えるほどです。
前半では、受験に合格するまで抱かないという誓いが残酷にも見え、モテる透がそこまで凪に固執する必要はないのではないかと思ったほどです。

物語全編を通じて、凪が高校教師をやめた理由の匂わせがあります。
その理由が男側にとっては地獄に突き落とされる伏線となります。

無事大学生となり、大人の仲間入りを果たした透が同級生と浮気(未遂)したあたりで「いや、こんな年下の男捨ててまえよ。小田さんていう素敵な男性がいるじゃないか」と一気に凪側に共感します。

そこはなんとか堪えて元の鞘になりますが、今度は凪が教師の頃、現役の教え子(高校生)と恋仲にあったことが明かされます。しかも、その生徒とは身体を重ねる関係だったと。

男性読者としては、それがとてつもない裏切りに感じました。
透とは合格するまで禁止していたくせに、凪はまるでその過去を傷として庇護してほしいとでも言いたげで。
そして、透がそれを愛情で乗り越えた矢先、凪は再びその元教え子に抱かれる始末。

たまらない。女性の卑怯な部分を見せつけられ、愛情を食い散らかされる心境です。
透と積み重ねてきた時間に対する自分の過ちを罪悪感という言葉にくるんでベランダから飛び降りてしまうのが余計に透を追い詰めています。
せめて向き合って、透をちゃんと振ってあげてほしかった。
「あなただって浮気したでしょ?」と開き直ってくれて構わないから、透と過ごした時間だけは嘘ではなかったと伝えてほしかった。

どんな過去でも、それが過去なら乗り越えられると思っています。
しかし、元教え子に再び抱かれてしまったことで、愛なんて全て幻だと言われた気がしました。


結末がどうなるかは想像できません。

男性読者はどうぞ透の気持ちになることを忘れずに物語に入っていってください。
深く、心の純粋な部分が傷つけられる良作です。

次回作も期待しています。

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