死んでたまるかちゃん。
戮藤イツル
死んでたまるかちゃん。本編
死んでたまるかちゃん。
『おい、死にたがり!今日ヒマか!?』
「ヒマだけどヒマじゃない」
『どっちなんだ!』
「今日クリアしなきゃならんイベントあるから。連れ出された先で充電切れマジ勘弁」
『このゲーオタが!あたしがあんたの家行ってやるからかまえ!』
「俺が今かまいたいのはスマホ。アプリ開けないから電話切れ」
『なんだと!儚い系美少女のあたしより画面の向こうの美少女の方がいいってのか!!』
「ゴキブリ系の間違いだろ。あともう少女じゃねぇしな、歳考えろ」
『この流れだと『美』まで否定!とにかく今から行くからな!麦茶冷やして待ってろ!』
「おい、来られても困(ぶちっ)…話を聞かねぇ、だと…しかもギャルゲー属性にされた」
(二分後)
「…そーいや、あの女一人で出歩いて大丈夫なのか?」
(三十分後)
「案の定、大丈夫じゃなかった」
「なんだその可哀想なものを見る目は!ちゃんと無事に辿り着いただろ!」
「どこの関取に気合い入れてもらったら両頬そんな腫れるんだよ。スカート破れてるし豪快に転倒してるじゃねーか。そして左肩は昨日お前が「撫で肩だ」って言った時、実は脱臼してましたテヘペロレベル以上に脱臼している。腕がぷらぷらする飾り状態。お前を見る度に流血してるのはどう言ったサービスのオプションなんだ。その縋りついてる木の棒よく落ちてたな、髪の毛クモの巣張ってるし樹海でも通ったのか。以上を踏まえて『無事』の意味を調べ直して出直して来い」
「この上無く冷静にたたみ掛けられただと…大丈夫だ、まだ、やれる」
「どこのプロボクサーだてめぇは」
(プルルルル…プルルルル…)
『はい、こちら救急セ…』
「すみません、○○区になんで死なないのか不思議な重症女が」
『すぐに向かわせます。おい、またあの女だ!(ぶちっ)』
「(覚えられている…)…とりあえず座れ、肩入れるくらいなら…たぶんできる」
「素人のたぶんダメ絶対!無理だな、これはもう骨が粉々だ!」
「俺が指摘した以外にやらかしたとこは?」
「右アキレスと半身打撲!」
「お前なんで死なねぇの?」
「死んでたまるか!あたしゃ死なないよ!」
「一晩眠ればこれが全部回復…生き汚いてめぇにはお似合いの回復力だな」
「死のうと外に出たら人が倒れてて死ぬの怖くなって引きこもりに戻りつつあるあんたに言 われたくないよ!」
その場で大怪我人相手に大喧嘩して、二人して救命のおっさんにめっちゃ怒られた。この死んでたまるか女にとり憑かれて一週間。この女、どんな重傷を負っても寝て起きれば翌日にはけろりと治ってるらしい。そんな人間いんのかと思ってたが、この女見てたら信じるしかない。俺がガキの頃と世界の構造変わったの?そしてまたその日のうちに重傷を負う。お前もう病院に住めって言ったら「病院に長居は、むしろ危険なんだ」って真顔で返された。その不幸体質と奇跡的回復力でプラマイしねぇのかよ。正直、うんざりする。生きてるのに疲れて死のうとしたらとんでもないものに憑かれた。うまいこと言いたかったわけじゃない。俺みたいなバグはさっさと死ねばいい。死んでみなけりゃ色々解らない。だが、この女の言う通り俺は尻込みした。人の気も知らんで腹が立つ。救急車を見送りもしないで舌打ちした。
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