死んでたまるかちゃん。4

 

「ん」

「どうした、死にたがり?」

「お前の足元なんか落ちてる」

「ん?(一歩退がった瞬間頭上から鉢植えが)」

「ッ!あぶねぇ!(ドン)」

「グォッフ」

「…はぁ。…いえ、すみません。殺しても死なない女、助けようと軽く突き飛ばしたんですけど…足をグネッたらしくて豪快に転倒して…何故か落ちてたナイフに刺さりました。いや、胸ではないです。脇腹です。はい、大丈夫です、抜きません。ハザードマップS地区の高層マンションの前です。…はい。お願いします」


 これは、物凄い罪悪感。なんでこんなところに折り畳み式のナイフが落ちてるんだ。しかも刃が出たまま。今までこいつを助けようとした人間、みんなこんな状態に陥っていたのか。助けたつもりが、次の不幸への連鎖になる。これは、俺がこいつを刺したようなもんだ。


 いい加減、こいつが怪我するところも、血まみれで笑うところも見飽きた。と言うか、その度に心がしんどい。どこにいても安全な場所なんて無い。解っていても、こうして隣に居るのに毎回助けられない。俺は救命戦士呼ぶだけの係。それでも。それでも、いつか、絶対無力とは言わせないやつになってやる。この湧き上がる感情はなんだ?俺は、俺を理解していたはずなのに。こんなもの、どこにあったんだろう。


 ん?ナイフの近くに何か落ちてる…なんだこれ、封筒?結構分厚い。…このままここに置いといたら検分の時に持って行かれるだろうな。血で汚れてるけど、一応預かっとくか。


※ ※ ※ ※ ※


「毎度すまんね、救命戦士N」


「そう思うのならどこか一か所から動かないでください」

「拠点か。そう思って一人暮らしを始めてわかったが、世の中は危険にあふれている」

「特に、女性ですしね」

「うん、今朝もベランダで日光浴をしていたら上の階の住人が誤って下してしまった非常用 梯子が脳天直撃したからな」

「(意味違うけどやばい)なんでその時点で我々を呼ばなかったんですか」

「そのあと」

「え?」

「死にたがりと出掛ける約束してたから」

「…そのまま出かけて災難の乗算攻撃に遭って、彼に会った瞬間バーサクモードで救急車呼ばれたと。怒っても体力ゴミでしたから抑えられましたけど、怒りの死にたがりくん無差別口撃で救命戦士Tが心を負傷しました。すさまじい二次被害ですね」

「やっちまったな!」

「一言で片付けていいんですかね」

「…あーあ、あの映画、今日で終わりだったんだよなぁ。あいつと二人で観たかったなぁ」

「はいはい、のろけとかいいです」

「そんなんじゃないよ」

「そうとしか聞こえません」

「違うよ」

「頑固ですね。あなたは嫌いな男性と毎日出掛けるんですか?」

「違うよ、違うのは、そーゆー風にはならないってことだよ。だって」


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