死んでたまるかちゃん。5
「毎日お前と出掛けてるな」
「嫌とは言わせんぞ!死にたがり!」
「嫌とか言ってねーだろ。外出るリハビリにもなるし」
「プラス思考の死にたがり、気持ち悪いな!でも、こう毎日自分になんかあると、あんたが巻き込まれないか心配になるよね」
「なんだよ急に」
「へ?いや、前から思ってたけどさ」
「思ってたのに毎日連れ出しているわけか」
「フグゥ…すまん…」
「まぁ、いいけど。俺お前のこと好きだし」
「ははは、ありが…今なんつった?」
「傍迷惑押しかけ野郎で人の憩いのゲーム時間を根こそぎ消滅させた妖怪死んでたまるか」
「妖怪は初めて言われた!酷いな!え!?それじゃなかったよね!?」
「病院運ばれるとさあ」
「話を聞かない、だと…」
「動けないと治療の時に服って切られて処分されちまうんだよな。お前がなんでいつもブラウスにスカートなのかこないだ救命戦士Tさんから聞いたわ」
「お、おぉ、それはな、まぁ、世話になる嗜みと言うか…」
「なんでお前ばっかいつも酷い目に遭わなきゃなんねーのかな。なんか、許せんわ。腹立つ。やっぱりこの世界とやらは俺、うまくやれる自信ねぇわ」
そこで黙るか。こないだ拾った封筒を交番に届けに行きしなぶらぶら。なんとなしに話してたらなんか口から出た。これがいわゆる空気読まないか。いや、俺もそろそろイライラしてたんだよ。俺はこいつのことを何一つ知らん。こいつもたぶん俺のことなんざ一つも知らん。なのに、こいつが俺に及ぼした影響にイライラしている。俺が知っているのは自分のことだけだ。何年あの暗い部屋に閉じこもっていたか。その間、どんなゲームをクリアしたか。その間、ネットですら一人も友達作らなかったこと。まだガキでよくわかんねぇ頃の最初の友達がクズだったから、人間なんてつまらねぇもんだと思ったし、同居してる家族もなんやかんや理由をつけて俺と話すことなんてなかった。昼間は仕事に出てたから家の中はうろついてたし、引きこもってるって認識も自分的にはほぼ無かった。最初から独りの俺に、人間の感情なんて理解できなかった。できるはずがなかった。
そもそも俺には最初から搭載されてないんじゃないかと思っていた。RPGで感情移入できたことも無かったから、頭も心も使わないただレベリングして敵を倒すだけのゲームに傾倒した。そんで先日、十九歳から二十歳に移行する前日。歳をとるにあたって総まとめをしてみた。差し当たって、自分は最初から『俺』って人生ゲームに詰んでたんだと言う面白くもねぇ答えが出た。よく、「お前には死んでもわからん」って言うから試しに「死んでみよう」と思って外に出た。死んで、次の『ゲーム』がスタートしたらなんか、わかるかなって。
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