死んでたまるかちゃん。14


「ほーら、唯!見ろ!ここがあたしがマジで死にかけた歩道だ!」

「偉そうに自慢してんじゃねえよ、馬鹿女」

「自慢して何が悪い!あたしがあんたを助けたんだぞ!そのお陰で唯はここに居るんだ!」

「はいはい、俺が怪我して動転して自滅こいただけだけどな」

「あんたもっとあたしに優しくしろ!ねぇ、唯、パパはママに冷たいよぅ」

「赤ん坊連れてお前が死にかけた場所巡りとか何が悲しくて」

「唯、パパとママはこの先で愛の告白したんだよ!そのあと悪漢から全力で逃げたけど!」

「ほぼ喧嘩だったけどな、と言うか締まらねえ話を赤ん坊にするな、恥ずかしい」

「あたし達の愛の軌跡…いや、奇跡を!愛の結晶・唯に!見せた…グォッフ」


 はいはい。馬鹿女は五年経っても馬鹿女のままです。いや、馬鹿女のママです。いや、うまいこと言おうとしたし、言ったと思う。俺の腕の中で、唯がぱちくりしながら馬鹿女が背後からチャリで轢かれて吹き飛んだ先でやっぱり車道側から飛んできたロナウドが得点狙いで全力で蹴ったシュートくらい速いサッカーボールが横っ面にぶち当たる。一瞬沈黙するその体によぼよぼの婆さんが蹴躓いて手に持っていたビニール袋が宙を舞う。中から、大量のみかんがこぼれて、辺りに降り注ぐ。それを踏み潰した学生の集団が滑って転んで次々に痛烈な肘を馬鹿女の全身に入れていく。傍から見たら地獄絵図。それでも、俺にはなんか懐かしいぞ。足元に転がってくるみかん。血だまりは無いが、俺達が初めて会った時に似てる。


「だ、大丈夫ですか!?」

「痛いけど!めっちゃ痛いけど!!唯が腹から出て来た時に比べれば!痛くない!!」

「出産の痛みと比べたらそりゃあな…」


 くすくす笑う俺を見て、唯は不思議そうだったけど、そのうち一緒に笑い出した。俺は片手で携帯を取り出して、短縮のボタンを押す。


「もしもし?ハザードマップL地区で『俺の妻』が……」





   HAPPY END・・・?vV



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死んでたまるかちゃん。 戮藤イツル @siLVerSaCriFice

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