死んでたまるかちゃん。13

 


「死んでたまるかは、もう飽きた」

「飽きたとかそう言う問題か、馬鹿女」

「えへへ、卒業したの方が似合うかな」

「…死んでたまるか、からか?」

「うん。あんたの知ってる『死んでたまるか女』は…そうだね、死んだのさ」

「じゃあ、今俺の目の前でぴんぴんしてるのは?」

「『死にたくない女』、かな」

「アホ抜かせ。そんなもん言い方変えただけだろ」

「ぶー。じゃあなんだと言うんだ」

「…カノジョ」

「ふぇ?」

「俺の、相模 郁の彼女、日下部 希。間違ってるか?」

「……」

「なんだよ」

「…うれしくて、泣きそう」

「泣けよ。お前の泣いたとこ、見たことない」

「あたしも、郁が泣くとこ見たことないよ」

「俺は泣かない。泣いてる暇があったら、真っ直ぐ前を見る。だからお前は、泣いていい」

「はは、あはは、郁、かっこいい」


 笑いながら泣いてんじゃねーぞ馬鹿女…ではない。…ムカつくよな。こいつ、結局誰が見たってかわいい顔はしてんだよ。のろけてねぇ。事実だ。馬鹿女とは、もう呼べないな。俺の…なんだろ。まあ、希は希。俺の希望ってとこか。くっさ、俺くっさ、なにそれ。


 ああ、それから。結局この女、脳味噌は守り通したらしい。と言うか、街路樹あっただろ。あれを貫通したときに弾速が落ちて、こいつの側頭部に着弾した。それでもやばかったみたいだが、頭蓋骨の外で弾は止まっていたらしい。ほんとは悪運強いんじゃないのか、こいつ。


「…ねぇ、郁?ずっとあたしのこと、守ってくれるんだよね?」

「ああ。約束する。俺ももう、「死にたくない」から」


 その時見たあいつの笑顔は控えめに言って天使だった。

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