死んでたまるかちゃん。12


「う…」

「え?」

「うらぁぁああ、希ィ!!くたばりかけてんじゃねぇぞ!!死んでたまるか女が男庇って死ぬなんてダセェ死に方する気かコラァア!!どうせ死ぬなら冥途の土産に俺の命(タマ)と童貞も取ってけアホ女ぁぁああ!!お前が死んでも俺は死なねえぞぉぉおお!!」


 だから、早く帰ってこい。たぶん、今まで生きてきた中で一番デカい声で叫んだ。お前の兄ちゃんの言う通りだ。ふざけんじゃねぇぞ。


「死にたがりくん、言いますね」

「さすがだね。さすがしか言葉が無いね」

「彼がしみったれて泣いていても、彼女が起きて喜ぶはずがありません」

「同感だな。でもこのままここで叫ばれるのは困るから、連れて行こう」

「そうしましょう、頼みました」

「は?え?あなた達何を…」

「失礼」

「グォッフ」

「ちょっと!?君!?」

「悲鳴が伝染しています」

「してるな」


 俺の首に救命戦士Tの手刀が綺麗に入った。あの女を黙らせるのに何度か見た華麗な手刀。まさか、俺が食らう日が来るとは。迷いが無さすぎる。意識が一発で飛んだ。


「結構な怪我人の意識断ちますか普通!?ぐったりしてますけど!?」

「うるさいと他の患者さんがびっくりしてしまうので」

「キレた死にたがりくん、我々では止められないんで」

「止めましたよね!?物理的に!!」

「仮にも病院なので、お兄さんもトーン抑えてください」

「お兄さんの意識も断たなきゃいけなくなるんで」

「怖っ!この市の救命怖っ!」

「私達だって最初からこんなじゃありませんし。妹さんに鍛えられましたから」

「妹さん麻酔とか中和しちゃうでしょ?だからできそうな時は迷わず一発で意識を断って痛みを軽減させてるんです。我々が苦心の末、身内でどつきあいまくって身につけました」

「断つのは彼が一番うまいですが」

「こいつは若干外すので、絞めて落とす派です」

「何この二人…身内の前で何平然と落とすとか言ってんの…」

「ま、でもお兄さんは俺達と比にならないくらいあの子と一緒の時間過ごしたんですよね」

「だったらここも冷静に判断してください」


「あの子は、死んでたまるかちゃんは、死にますか?」




 死んでたまるか女は、死んだ。


 結局、あれだけ「死んでたまるか」と叫んでいた女は死んだ。


 俺を嘲るようにひたすら、胸を張って、ことあるごとに、「死んでたまるか」と叫んでいた女は、呆気無く死んだ。


 その『朗報』を、俺は翌日聞いた。



 本人から。


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