死んでたまるかちゃん。2


『速報です。本日、市内の動物園からツキノワグマが逃げ出し…』

「………(プルルルル…プルルルル…)」

『どうした死にたがり!あんたから電話とか槍が降るか!』

「お前今どこ」

『安全圏・家の中だぜ!』

「絶対外出んなよ」

『は?どし…(パリーン)なんだー!我が家にクマがー!ここ五階だぞ!グォッフ』

「殺られた」

『殺らいでか!死んでたまるか!グォッフ』

「生きてた(それはそれでやばい)」


 機動隊と救急車どっち先に呼ぶべきか悩んだぞ。…いや、心配とかではなく、一応注意しようと思ったんだが結局この有様か。いや、ほんとにあんな絶好の逃走劇起きたら真っ先に疑ってみるだろ。つーかマンション五階まで登るツキノワグマ、ガッツありすぎだろ。なに的確に襲撃に行ってんだよ。無差別じゃないテロかよ。差別してやれよそこは。


 携帯の発信履歴に今日、初めて救命センター以外の名前が載った。うわこれめっちゃ嫌なタイミングでの載り方だな。まぁ、でも、消すことも、ねえか。


 ※ ※ ※ ※ ※


「お。死にたがり、いつも首から提げてる麻縄が無いな!」

「提げてても結果的にお前に引っ張られて俺が散歩されてるみたいになると言う確信と統計 的事実しか無かった」

「普通やるよな!常識的に考えて!」

「常識と言う言葉も調べ直して来い歩く非常識。…運良くどこかに引っ掛けて意図せず首が 絞まって死ねるかと思ったんだが」

「発想が怖い!」

「一応持ってはいる」

「持ち歩くなよ…貸してみろ、こんなものな、いくらこの私が首から提げてたってそんな… (スポ)グォッフ」

「すみません、八十代らしき老婆が運転する軽トラが爆音でデスメタル聞きながら法定速度を軽くオーバーして国道を走ってて…なんか説明難しいんですけど、とりあえず例の女が首に嵌めた麻縄が引っ掛って引きずられてます。首絞まってます。はい、首です」


 ファンキーなババアのデコ軽トラに奇跡的に麻縄が引っ掛かった。首に提げた瞬間に。おいやめろ、前方車両に追い越しかけるな。キャデラックに軽トラで挑むな。カーチェイス始めるな。あー、もう見えねえ…。走って追いつけるかな、とりあえず行くか。…ぜ、全力疾走が一分と持たない。そうだ、引きこもってたから俺の体力ゴミだった…。た、体力、体力をくれさい…。でなきゃ、あの、馬鹿女に、付き合いきれん…今日から、毎晩、走るわ…。


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