死んでたまるかちゃん。8
なんでそこで真っ赤になるんだよ。畜生、畜生、この馬鹿女、大事な事黙ってたとは。なんだそれ、お前どっちかって言うと俺のこと嫌いだっただろ。一瞬でも憂いに浸っちまった己を殴りてぇ。真っ赤な顔かわいいかわいいかわいい。くっそ、くっそ、なんだ負けた気分。
「い、郁」
「なんだよ」
「ごめん、うれしいから、泣きそう」
「は!?」
「あのー…ちょっと、そこの君達?」
「誰だこの忙しい時に!!」
「ご、ごめんね!あの、ちょっと聞きたい事があってね、だ、大丈夫かな?」
見るからに立て込み中で周りの人間全員見て見ぬ振りしてるこの状況で話しかけてくるとか勇者かこの兄ちゃん。なんだ、警官か。警官に聞かれるようなやましいことはしてねぇぞ。
「ちっ…聞きたい事って?あの女がなんか泣きそうらしいから手短にお願いします」
「な、泣きそう!?あ、あの、君達のどちらか、もしかして、昨日落ちてたナイフに刺さってた人を救命センターに通報した人、かな?」
「ああ、刺さったのはあの女です」
「普通に歩いてるけど!?」
「まぁ、色々事情があって…通報したのは俺です」
「ほう。君かぁ」
「死にたがり!」
「うるせえぞ、黙って鼻水スタンバイさせとけ」
「させねぇよ!違う、そいつ警官じゃない!」
「じゃあ、あそこに落ちてた封筒、持って行ったのは君か」
目の前に穴の空いたなにか。寒気がして硬直した瞬間に女に腕を引っ張られた。バランスを崩して、頭があった場所を弾丸が通過した。耳がいてぇ。なんだこれ。なにが起きた。考えるより前に死んでたまるか女に引っ張られて走る。二発目の弾丸が腕をかすった。三発眼は太股を。やべえ、転んだ。あいつは?怪我してねぇか?
「郁!」
「ってぇ…!つか、お前は逃げろ!俺狙いだろあれ!!」
「バカ!あたしが引っ張らなきゃあんた撃たれてたんだよ!!早く携帯出して!短縮に救命入ってるでしょ!!呼んで!!早く!!」
「っくそ、訳分からねぇ!!」
とりあえず言われた通り携帯を引きずり出して通話に切り替える。走って結構な距離は取ったがかすった所から血が出てて、こいつに引きずり込まれた街路樹と背の低い植え込みの陰もきっとすぐばれる。周りは銃声でパニックだ。雑踏にまぎれてりゃいいけどそこまで人は多くない。さっさと電話して紛れられるうちに移動した方がよさそうだ。
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