死んでたまるかちゃん。7


 思いっきり耳引っ張られた。顔が近い、死んでたまるか女。年季の入った引きこもりなめんなよ、人の目を見て話すとか年単位の修業が必要だろ。


「郁の言う守りたいは、あたしをどっかに閉じ込めて不幸から遮断すること?」


 だから名前呼ぶのやめろや。はぁ?そんなことしたら俺が楽しくもなんともねぇだろ。アホかこいつ。そもそもその思考、ゲームでくらいしか見たことないですけど。


「郁の言う好きは、あたしが可哀想だから人道的に守らなきゃって好き?」


 目が、笑ってない。馬鹿女。お前に何があったかとか、お前がどう世間を受け入れて来たのか、俺は知らねぇんだよ。俺はそこまで深く考えてない。考えも及ばない。お前が、俺み見せたもんが、今の俺の全部だ。どうしたらうまく伝わるもんかな。全部俺のエゴだって。


「希」

「なに?」

「俺は、説明苦手だ」

「…逃げる?」

「逃げない。泣きそうな顔すんな。かわいいだろ」

「バカ!あたしはな、ほんとに…ッ」


 せっかく近くに顔あったし、うるせぇし、口塞いでやった。うむ、柔らかい。


「…お前こそ逃げたら?引きこもり明けに目の前で死にかけてた馬鹿女に振り回されて挙句そいつに好きとか言い出すアホは我ながらアブナイと思う」

「っっっっこんの、バカ!逃げる、必要、無いだろ…」

「は?」

「あ、あのな?」

「うん」

「あ、あたしな」

「うん」

「あ、あたし…グォッフ」

「あんまり行数割きたくないから言いたいことはさっさと言えや」

「額にチョップ入れながらなんて自分勝手な要求を代弁させやがった…」

「お前がどうしたんだよ。腹でも痛いのか」

「馬鹿野郎!痛かったとしてもこのタイミングで言うものか!あたしもあんたのこと好きな んだよ!大好きなんだよ!それくらい汲めや!鈍感死にたがり!」

「は?」

「…は?」

「お前、俺のこと好きなの?マジで?は?いつから?」

「な、この男…」

「え?マジで?いつから?」

「めっちゃ食いついてくる!最初からだよ!一目惚れだよ!!でなきゃ危険だって解ってる のに毎日通ったりしないし出掛けたりしないしあんたが勝手に死んじゃわないか不安で眠れ ないなんてあるわけないだろ!」

「そんなの俺知らねぇし!初耳だし!なんだそれ!なんで最初に言わねえの!」

「お前は天性のバカなのか!?どこにあの血だまりで『好きになっちゃった☆』とか言うバカが居るの!?どこに明らかに自分のことうっとおしがってる相手に『好きなの///』とか言える女が居るの!?揺れる乙女心!!ゲームで学んでないのかそこんとこ!!」

「だから俺はギャルゲー属性じゃねぇしそんなもん言わなきゃわからねぇだろ!」

「じゃあ、あたしがあんたの人生初の『俺の嫁(ドヤァ)』ってやつか!」

「いちいち表記がうぜぇけど、そうなるな!!」

「ッう…」


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