概要
その風に紛れて。羽音が聞こえた。
一人の女子大生が、飛び降りて死んだ。
所属する研究室の窓から踏み出して、落ちて死んだ。
大した理由でもない。
ありふれた、どこにでもある理由で、生きることをやめたのだ。
ただ、そんなことになってしまう少し前から、
その女子大生――風見巴子は、親しい友人に奇妙なことを口走ることがあった。
自分には妖精がついている、と。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!浸蝕されゆく――灰色の日常。
この物語の主人公――風見巴子の日々は、灰色の日常だった。
大学の研究室での人間関係は煩わしく、彼女の理解者であるはずの恋人ともいまは疎遠になりつつある。
まるで届かないモノに手を伸ばすように、研究室の窓から星空を見上げる彼女の前に姿を現したもの――それが〈妖精〉であった。
『夜の闇の中で、不自然なまでに輝く浅葱(あさぎ)と黒の美しい文様が目に焼き付いていた』
彼女の日常の灰色に比して、この〈妖精〉の羽根はなんと美しく鮮やかに描かれていることだろうか。
そしてこの〈妖精〉が彼女と入れ替わり、彼女の日常の辛い時間を肩代わりするようになってから彼女の灰色の日常は〈妖精〉によって大…続きを読む